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115. 噴火と特需

__________________

一面特報

ルミナス山:専門家調査で「大規模噴火の可能性は低い」──ただしアクラ周辺で小規模活動の兆候

――多人種連盟、本部より支援部隊を派遣へ

【ルミナス発】

噴火の予言に揺れるルミナス地方について、多人種連盟地学調査局および魔導研究班による現地合同調査が完了し、昨日発表された暫定報告によって「ルミナス山本体における大規模噴火の兆候は現在のところ確認されていない」ことが明らかになった。


一方で、ルミナス山東側斜面に位置するアクラ火口帯では、小規模な火山活動の活性化が観測されており、周辺の温泉源や地熱亀裂に変動が見られている。調査局は「およそ300年前の記録に残る局地的噴火と同程度の規模が起きうる」として注意を呼びかけた。

300年前に起きたアクラ火口帯小規模噴火は、死亡者0名、負傷者は約70名、火山物の飛来により、家屋倒壊、作物被害が出たとの記録がある。


この報告を受け、多人種連盟本部は同日中に緊急対策会議を開催。以下の三項目を柱とした支援策を発表した

①地質・魔導双方の専門家を含む調査部隊の継続派遣

②高地部および周辺居住者への自主避難支援金の交付

③各宿泊施設・村落に対する「対噴火物用結界」の設置補助

「予言だけでなく、事実に基づく対応が必要だ」と語るのは、魔導災害対策室長のリュディル・スヴェルツ氏。

「過度に不安を煽らず、正確な情報と備えをもって地域を守る」と強調した。

また、現地宿泊業者の間でも結界強化の動きは加速しており、地域の結界強化担当には

ソフィア魔法学校魔法陣学教授カミーユ・マリーン氏が当たっている。

「100回に渡る噴火物シュミレーションテストを行い、耐久性は証明されました。地域の皆様には安心をしていただきたいです。」

と同氏は、地域に貼られた結界の安全性を主張した。

また、地域では、ルミナス山を竜、アステア岳を白虎とし、竜を白虎が牽制しているという神話が伝わっている。

予言の文言とも一致することから、歴史学者の間でも話題を呼んでいる。

「ルミナス山の噴火物をイーシュトライン中心部を堰き止め守ようにアステア岳が存在している。この様な事実から生まれた神話である可能性が高いです。」

地域歴史学者エリク・コールマン氏は語る。


伝承、科学、行政の三位一体で取り組むルミナス地方の危機対応に、今、各方面からの視線が注がれている。


(記者:ティエラ・ネレイド)


__________________


小規模噴火の可能性。


ユーリはこの報道がある数日前にこの事実を知った。

イーシュトライン観光組合(ギルド)が再び招集されたのである。


そこにはお馴染みのメンバーに加え


レジナルド・スロックモートン=ペンハリゴン

イーシュトライン侯爵の側近がいる。

もう、ユーリは彼の名前を覚えることを放棄している。

久しぶりにお目にかかるが相変わらず真面目そうなお方である。


そして、新聞にも登場した

多人種連盟魔導災害対策室長のリュディル・スヴェルツ

かっちりとしたヘアスタイルに

上に沿ったヒゲが印象的な、中年男性であった。


そして、ソフィア魔法学校魔法陣学教授カミーユ・マリーン

言わずもがな、ユーリの恩師である。

マリーン先生は行政からの依頼で

泊まり込みで作業に当たってくれることになった。


彼らは、地質学調査結果と、今後小規模噴火が起こりうること

対策を細やかに説明してくれた。

また、正確な花流星群の日時間も教えてくれた。


こうなると、お客様のキャンセルは積極的に受け入れる必要があった。

ユーリとしては一瞬期待したが

それに対する補助は、無かった。


となればお客様を呼ぶしか無い。

代わりに、結界を強固にして安全性をアピールする。

あとは、このマリーン先生の様に専門家の方にお泊りいただけるように

行政で宿泊室を借り上げてもらう

それに期待することにした。


しかし、あの新聞報道は的確で

今、歴史学者、地学者達はこぞって

ルミナス地域に足を運んだ。


一般の観光客の方からはキャンセルが相次いでも

新たに、そういった研究者がこの地にたくさんいらっしゃったのだ。


しかも小羽屋においてある古本達は、人気を博した。

特にリトルウィング誌は、ユーリもしばらく見ていない。

閲覧規制をかけた上に別料金を頂きたいくらいだった。



そして意外にも、花流星群当日付近の予約も新たに入った。


マリーン先生も

「流星群の日は私もここに泊まって天体観測をしようかな!

そうでもしないと説得力がないだろう!」

などと言っていた。


・・・・


「その日、小羽屋で演舞会でもしようか。」

サムエルはその日、ユーリといつもの様に自作のパスタとワインを飲みながら提案した。


本日のパスタは、リーブラックポートで取れたアサリのパスタである。

ユーリは、庭で収穫したばかりのアスパラガスの冷製スープを作っていたので

一緒に食べている。


「ついでに、そのティエラとか言う記者に取材してもらおうよ。

いつものメンバーに声かけてみるから。」


おそらくいつものメンバーは、クラウド、アルト、クロエであろう。

集客にもとても良いとユーリは考えた。


「いいですね、演奏楽しみにしています。

広告、イーシュトライン観光組合(ギルド)

掲載してもらいましょう。」

ユーリは笑顔を向け、スープを啜った。


「何他人事みたいなこと言ってんだよ。」


サムエルが、フォークをユーリに向ける。

・・・お行儀が悪い。


「君も演奏するんだよ!食べ終わったら楽譜用意して

久々に練習するからね!」


サムエルが目の前の皿をガツガツと平げ始めた。


ユーリはその言葉を聞いて食欲が一気に引いて行くのを感じた。

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