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絶対に恋したくない俺VS絶対に恋をしたい私【完結済】  作者: しゅしゅく
高校2年、夏休み
51/88

その50

予約投稿忘れまして、ギリギリ水曜日です。

こっちに引っ越して来る前に、イベントらしいイベントに出かけた記憶がない。


ほら、やっぱり、リア充の巣窟は非リア充には辛いものがあるわけだよ。

真面目に運動してたから、練習した後にイベント行くなんて元気は出なかったし。


しかし!


今の俺は無敵である。

リア充という概念はもう捨てた。

恋愛なんてしないと決めた。

周りに嫉妬することもない。


さらに、一緒に回る友達すらいる。

しかも、男女混合である。

グループの内側にカップルがいたとしても、仲良く一緒に楽しめる関係性なんだからいいじゃないか。


というわけで、俺は生まれてからほとんど初めての、友達と夏祭りというイベントに行くわけである。

外面は冷静を装っているが、夏休み始まってからのつまらなさも相まって、超ハイテンションである。


人間、刺激がないと動けないもんだ。


そんな今日、とりあえず俺はタッキーと待ち合わせをしていた。

女子たちと一人で合流しても、気まずくなったらどうしようかと思ったからである。


みんなの待ち合わせは駅前の広場だから、少し早めに、ちょっと離れたコンビニまで来てもらった。

こんなかっこ悪いわがままを言っても許してくれるのが、タッキーの素晴らしいところだ。


コンビニ前で何もせずに待っていてもアレだなと思った俺は、とりあえずスポーツドリンクを2本買ってきた。

片方はタッキーへのプレゼントである。

感謝の気持ちだ。

夕方になっても、今日は暑いからな。


そうして、飲み物を買って出てくると、丁度コンビニにタッキーがやってくるところだった。

隣には、同じくらいの背丈の女の子を連れて。


……いや、いやいや待て待て。

タッキーに彼女?


いや、居てもおかしくないんだけど。

こいつは最高にイケメンだからいいんだけど。

でも待て、タッキーはこういう場合、事前に連絡してくるタイプだ。

律儀で誠実なやつなのだ。

こんなサプライズが、あるはずない。

うん。


決して、何か悔しいとか、そういう気持ちはない。

うん。

そこに執着するのはやめたのだから。


どうせアレだな。

違うクラスの知り合いにばったり会って、ここまで話して来たって感じだろ。

俺のことを見つけたら、多分、別れてこっちに来るはず。


なんてことを思いながら、タッキーの方を見ていると、タッキーもこちらに気づいたようだ。

隣の女の子に何やら告げている。


やっぱりそこで別れてこっちに来るんだよな。


と、思ったら、その子を伴って笑顔でこっちに向かって来た。


「タカリョー、待たせた。ごめん」


「いや、別にいいけども」


若干引き攣った顔で返事をしてしまうのは、近くで見るその人が美人だったからにほかならない。

完全に顔面偏差値高めカップルにしか見えん。


これは俺、邪魔じゃないか?

と思ったところで、タッキーから紹介があった。


「タカリョー、この人は、サッカー部のマネージャーで、一個上の先輩なんだけど……」


ふむふむと聞いていたら、その声を遮るようにその女の子から声をかけられた。


「諒太、久しぶり! 覚えてる? 愛莉なんだけど」


思いの外、快活な声だった。

長い黒髪と、優しげな笑みにはお淑やかなイメージがあったけれど、さすがはサッカー部のマネージャーということなんだろうか。


そして、その声や面影に、何か引っかかるものがあったのは確かだ。

覚えてるか聞かれたってことは、知り合いか?

愛莉、なんていう知り合いは、こっちに来てからできてな……。


「あぁぁ!! あいちゃんか! 小学校の!」


「そう、正解!」


楽しそうに笑う彼女は、唯一こちらに元からいた俺の知り合いだ。


小学校の時まで近所で仲良くしてもらっていた年上のお姉ちゃん。

連絡先はもらっていたからちょくちょくやりとりはしていたけど、直接会ってはいなかったからわからなかった。


こちらに来ても、積極的に会おうという話にはならなかったから今まで会っていなかったけど。


「そうか、タッキーの知り合いだったのか」


「ね。私もびっくりだよ」


「1番びっくりしたのは俺ですよ。片倉先輩とタカリョーが知り合いだったなんて」


3人でそう言って笑い合う。


なんだか懐かしくなって、ちょっと話した。

だけど、正直、話題があまりなかったし、時間も迫っていたから、すぐに別れることになった。


「同じ学校でも、あんまり会わないと思うけど、これからもよろしくね」


「こちらこそ」


「滝沢くんも、諒太と仲良くしてやってね」


「もちろん」


「いや、保護者かよ」


なんてやりとりをして別れた俺たちは、いよいよ待ち合わせ場所に向かった。


「なんか、こんなことってあるんだなっていう偶然だったな」


会話の余韻で、テンションが高いまま、タッキーに話しかける。

しかし、タッキーの様子は少しいつもと違うような感じがした。


「どうした?」


返事がないから重ねて聞いてみると、タッキーが小さい声で呟いた。


「偶然じゃ、ないんだよ」


「ん?」


「俺は実は知ってたんだよね。タカリョーと知り合いだっていうこと」


「……マジで?」


いや、ちょっと驚いたけど、なんでそんなことを伝えるのかとか諸々分からん。


「マジだよ。タカリョーが戸惑っているみたいだから教えておくと、俺は、タカリョーが来た初めの日から知ってたんだよ」


「なる、ほど?」


どういうことだ?


その答えを、俺はもうわかっていたのかもしれない。

認識したくなかったのかもしれない。


「つまりね、片倉先輩に近づくために、初日からタカリョーに話しかけたんだよ。俺は」


「なるほどー」


なるほどとしか言えない。


なるほどとしか言えないなあ。

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