その47 side大野真里
ガールズトークは自分がうまくいってるとか関係なしにやっぱり楽しくて。
あの後、服を買いながら色々な話をした。
お互いのこと、友達のこと、夏休みのこと、週末の夏祭りのこと。
特に、夏祭りについては、浴衣を着るのかどうかから、当日の過ごし方まで結構詳しく話したと思う。
浴衣はこの機会くらいしか着ないし、折角なら着たいけど、全員が持っているのかわからないという話になった。
「私は、去年着たやつがあるし、サイズも大丈夫だと思う」
「私も、明梨ちゃんと去年行った時の持ってる。けど、男子はどうなんだろう?」
「そうね……誠は去年買わせたから確実にあるけど、タカリョーとか持って無さそうね」
「たしかに。木山くんも微妙かな?」
「ま、サイアク女の子だけ着てればいいんじゃない? 華があるのは私たちの浴衣だろうし」
「あはは……でも、みんな揃って集合写真とか撮れた方がいいよね」
「たしかに! せっかく仲良くなれたし、映えそうだし、いいね。多分持ってると思うけど、一応確認しとこっか」
そう言って、明梨ちゃんは慣れた様子でメッセージアプリを起動した。
私は、それをみて思い出す。
最近の優香ちゃん、ちょっと変だったよなあと。
優香ちゃんは真面目だし、優しいから、私がメッセージを入れると割と早めに返ってくる。
それがグループでも、個人でも。
「よし、グループに浴衣をもってるかどうかのアンケートを投稿しましたっと! みんな浴衣で記念撮影できたらいいね!」
笑いかけてくる明梨ちゃんに、うん、そうだねと返事をした。
でも、その会話の後も私の心のどこかに、優香ちゃんのことが引っかかっていた。
だから、明梨ちゃんと別れた後の帰り道で、優香ちゃんにメッセージを打つ。
『やっほー! 生きてる!? 優香ちゃんには珍しく、返信が遅いから、心配になって連絡しちゃった笑』
『迷惑だったら、ゴメンね……(>_<) 夏休みに入ってから、話せてないから寂しかったんだよお』
一つ前の私のメッセージはまだ未読状態だった。
だから、ちょっと気持ち悪いかもと思いつつ、こんな文面を送ったけど、優香ちゃんはこれを見たら確実に返事をくれるだろうと思ってた。
案の定、夜には返信が来た。
たまたまスマホをいじっていたタイミングだったので、すぐに既読をつける。
『ごめんね。忙しくて、返信忘れてた』
『寂しかったって、まだ1週間も経ってないよ?笑』
いつもの優香ちゃんっぽい返信。
だけど、いつもの優香ちゃんは、忙しくても返信を忘れることはないと思う。
やっぱり、気になる。
いつの間に、私はこんなに積極的にコミュニケーションが取れるようになったんだろう。
相手が優香ちゃんだからかな。
気づけば、こんなメッセージを送っていた。
『ねぇ、今電話してもいい?』
即座に既読がついた。
私がすぐにつけたから、待っててくれたのかもしれない。
そして、優香ちゃんはどこまでも優香ちゃんらしく、いいよと答えてくれた。
「もしもし? 優香ちゃん?」
「私よ。私以外が出たら困るでしょ?」
「それもそうだね。電話って、あんまり慣れないから緊張しちゃって」
電話の向こうで、苦笑しているのがわかる。
「緊張って、私と話すだけでしょう? 夏休み前は毎日話してたのに、今更緊張することなんてある?」
「いや、まぁ、そうなんだけどね」
本当にいつもの調子の優香ちゃん。
私が余計なこと考えているだけなのかもしれない。
でもね、何もしないで友達を放っておくことは、私がしたくない。
「寂しかったって言ってたけど、何かあったの?」
優香ちゃんの問いかけに、私は思い切って答える。
「あのね、あの、優香ちゃんさ……なんか、あったの?」
「え? どうして?」
心なしかうわずったような声だった。
私は、少し弱気になる心を奮い立たせて、続きを聞いてみた。
「夏休みに入ってから、というか、入る前から、かな。なんか、ちょこっと様子がおかしくなってるなって思っててさ」
「そうだったかしら?」
「うん。だって、優香ちゃんは、メッセージの返信とかマメだし、勉強だって元からコツコツしてるじゃない?」
「そうかしら。普通だと思うけど」
「優香ちゃんにとっては、そうだよね」
今度は私が苦笑してしまう。
「私にとっては、全然そうじゃないから、素直にすごいなって思ってて」
「あ、ありがとう?」
「あ、そう、それで、そんな優香ちゃんが焦って勉強はじめたり、返信しなくなったりしたってことは、何かがあったのかなって」
ちょっと締まらない言い方になってしまったけど、私が聞きたかったことは聞けた。
あとは、優香ちゃんがどうやって反応してくれるかなんだけど……。
やっぱり、この時間が怖い。
緊張する。
どれだけ時間を重ねても、一言で変わってしまう関係だってある。
だから、取り消しできない会話のやり取りは怖い。
待つ時間はそういう怖さを覚悟してても、長く感じたけど、優香ちゃんの返答はそれなりに早かった。
「そう、ね。あったといえば、あったけど……なかったといえばなかったよ」
「え、それはどういうこと?」
困惑する私に、曖昧に笑った優香ちゃんは答えた。
「ちょっと、話しづらいことがあったってことかな。大丈夫、もう終わったことだから」
「う、うん」
やけにきっぱり言われたような気がした。
でも、話しづらいことと言われると、それ以上突っ込めない。
でも、やっぱり絶対おかしい。
だから、私は約束することにした。
「そ、それならいいんだけど……そう、私だったら人に話したくなっちゃうこともあるから、明日も電話していい? 勉強の息抜きみたいな感じで。私も、寂しいし」
咄嗟に出た割には、まともな言葉だったんじゃないかな。
寂しいのは、本音だし。
優香ちゃんが、電話口で困ったように笑う気配がした。
そして、またあの優しい声で言った。
「うん、わかったわ。それじゃあ、おやすみ。また明日ね」




