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ワールドRe:トライ・セブンオーブ  作者: 下級魔術師17号
19/25

第18話 退治

久々更新です。

申し訳ない(´・ω・`)

 ユーグを仲間に加え、一夜が過ぎた。

 うっすらと明るくなった早朝、俺が目を覚ますと、ルディオスとユーグが何やら難しい顔で話していた。

 

 「シオン、おはよう」

 「おはよ、カリナ。どうしたの?」


 俺が訊くと、カリナが説明してくれる。

 なんでも、ユーグは[西域(ウエスタ)]では商人で、この[内海域(イルーシャン)]への旅が危険だということで、魔法具を幾つか持ってきているらしい。その中の1つに、魔物の発する陰の魔力を測る道具があり、ユーグはそれを使いながら、旅をしていたそうだ。

 昨日、この野営地に着く前、ルートから外れ道に迷っていた時も、それで魔物を避けていたという。

 野獣などのモンスターならなんとかなるが、“魔物”は、モンスターよりも厄介なものが多い。

 だいたいはテレトリーがあるので、そこに入らなければ、襲ってこない。


 「ここはすでに魔物のテレトリー内なのよね」

 「でも、結界があるよね?」

 「うん。だから、この中は安全。でも、どうやら厄介な魔物みたいで、出るときが危険かな?」


 ユーグが言うには、[カラチ平原]に入ってから今まで魔法具が反応した中で一番強い反応らしい。


 「昨日、着いた時は物凄く強い反応を示したネ!デモ、夜になったら反応は凄く弱くなったヨ。デ、朝見たラ、また、反応強くなってるヨ」

 「…………厄介だな」

 「え?えーと………?」

 『“魔物”が休息状態だと、発する魔力は弱まる。強い魔物の中には、昼間に活動するものも稀に存在するぞ?』


 ルディオスが呟く傍ら、俺は、意味が分からずに首を傾げた。すると、猫の姿のまま、俺の腕に抱かれていたクロガネが説明してくれる。

 なるほど、魔物は普通は夜行性だが、稀に強い魔物は、昼夜逆転するものもいるのか。


 「強くなくても、昼間に活動する種類の魔物はいるかな。でも、そんなに強い魔物じゃない。強い魔物ほど、夜行性になる」

 「あ、あれ?」


 クロガネの言うこととカリナの言うことが違う。

 俺は、少し混乱した。


 「昼間に活動する魔物は、弱いのか?」

 「一概には言えない。一般的に魔物は夜行性だが、弱い魔物で昼間活動する魔物もいる。強くなればなるほど夜行性になる。だが、本当に強い魔物の中には、夜昼関係なく活動できるものがいるらしい。クロガネがいうのは、その類だ。だが、大昔ならともかく、今の時代にそれほど強い魔物がいたら、国レベルの大問題だ」

 

 ルディオスが、俺の疑問を説明してくれた。

 つまり、どちらも合ってはいるが、クロガネの話は大昔のことというわけだ。


 『むぅ。仕方ないだろう。我は、ずっと封印されていたのだ。昔のことしか知らぬ』


 クロガネがむくれた。

 ちなみに、クロガネの思意(こえ)が聞こえないユーグは、少し不思議そうに俺たちを見た。

 一応、カリナが説明しているので、話として成り立っているように見えるが、俺がなにやら戸惑ったのが不思議だったらしい。


 「ここにいる魔物は、どうやら昼行性のようだ。だが、だからと言って、夜に野営地を出るのは自殺行為だ」

 「でも、これから出ようにも、確実に狙われるかな?」

 「うーん、“魔物”に弱点があればネ!」


 ルディオス、カリナ、ユーグの3人がそれぞれ、考え込む。

 その様子に、俺は首を傾げた。

 “魔物”の弱点なんて、簡単なんだが……。いや、簡単ではないかもしれないが、“光属性”か“聖なる力”もしくは、魔物の“(ル・シン)”を物理的に破壊することだ。

 種類によっては、身体中に移動させたり、物理攻撃を無効化する膜に覆われていたり、魔物も核を守る為に様々な策を講じているが、逆を言えば、最大の弱点なのだ。

 

 『ふむ。今の時代、魔物の弱点や知識すら忘れられておるようだ』

 「ってことは、俺が知ってるのは“謎知識”か!」


 あまりに自然に出てきたから、気づかなかった!

 いや、待てよ?ゲームとかに出てくる魔物やモンスターだって、魔石を持つとかあったな。

 あれと同じってことか。

 だから、出てきても違和感なかったんだな。


 だいだい、“(ル・シン)”って、なんだよ?意味が分かる自分が、正直怖いよ!

 というか、月の名前じゃん?!!


 最近、無かったからなー…………。

 うっかりしてたよ、チクショー!!


 「そういえば、一昨日会ったパーティは昼間に出て無事立ったんだよね?」

 「おそらく、“ここ”とは違う別の野営地だったんだろう。情報(うわさ)では、“この辺り”という漠然とした話で、場所の特定はされていないからな」

「あー………、そっか……」


 俺は、がっくりと肩を落とした。

 だいぶ陽が上がってきているので、対策に悩んでいる3人から離れて、とりあえず、朝食の準備をすることにする。


 『良いのか?』

 「なにが?」


 とことこと、俺に着いてきたクロガネの言葉に、俺は首を傾げた。


 『魔物の弱点だ。“光属性“や“聖なる力”が無くても、炎や聖水を使えば効果はあるし、核を狙えば確実に倒せるだろう。ルディオスたちに教えなくて、良いのか?』

 「…………うーん、とりあえずご飯だな。腹が減ってはなんとかっていうし、だいたい、炎はともかく聖水って普通、持ってるかな?」

 『そなた、我が“聖獣”だと忘れておるな?我の主税は風と雷だが、聖属性ゆえに魔物には有効だぞ?』

 「そうなのか?」

 『それに、そなたは自覚無くとも高位の“聖なる存在”だ。魔物に狙われやすい反面、奴らにとって弱点でもある“聖なる力”を持つ。まぁ、そなたは少々特殊だが、水にそなたの血を一滴垂らすだけで、強力な聖水になるぞ?』

 「なに、その人外宣言………!」


 朝食を作りながら、俺は、思わず叫んだ。

 いや、確か前に“聖なる存在”の血肉は、魔物の“力”になるとか言ってた気がする。確か強い魔物限定立ったか?弱い魔物には毒だって言っていた気がするから、つまり、強い魔物は更なる進化の為に“聖なる存在(どく)”を食べるわけか。チャレンジャーだな!

 いや、確か“聖なる存在”を食べる奴には、その血肉が甘露だとか言ってたから、毒っていうわけでもない?

 ん~、駄目だ。分からん。


 「ここの魔物にとって、俺は“毒”なのか?」

 『ふむ。大抵の魔物には、そなたの血肉は“毒”だぞ。なにせ、そのものが聖属性だ』

 「だけど、前に“聖なる存在”を食べるやつがいるって…………」

 『あれは、ただの“脅し”だ。確かに、我の知る昔には、“聖なる存在”を喰らい力を増す、まさに化け物レベルの魔物がいたが、今の時代にそんな魔物が存在したら、それこそ国の1つや2つ、簡単に滅びる大事になろう。

 だが、弱い魔物でも、聖属性に耐性を持つ魔物がいなかったわけではない。

 そなたは、自覚がない上に少々無防備すぎるのだ。もう少し、警戒心を持つべきだ』


 だいたい………と、何故か説教を始めるクロガネ。

 黒猫の姿で、ちょこんと座って説教されても全然怖くはない。むしろ、可愛い。

 俺は、クロガネをスルーして、パンを温めて、スープを作り、簡単な炒めものを作り、最後にユユの実をデザートに添える。


 「朝食、出来たよー!!」

 『………って、我の話を聞かんかーーっっ!!?』


 ルディオスたちに声を掛けると、それまで長々と独り言ーーという名の説教をしていたクロガネが、キシャァァァーーッッ!!!と、背を逆立てた。

 どうやら怒ったらしい。


 「はいはい、分かったから、クロガネには“ルクムの実”をあげるよ」

 『む?………いいのか?っじゃ、なくてだな!』

 「“ルクムの実”はもう残り少ないから、大切に食べてくれよ」

 『分かっておる!猫の姿だと、十二分に堪能できる。もぐもぐ…………』


 長い尾をふりふり、上機嫌でルクムの実にかぶりつくクロガネ。

 朝食を運ぶ手伝いに来たカリナが、その様子を見て、「ふっ………、単純すぎ」と、鼻で笑った。

 

 うん。俺もそう思うよ………。


 俺は、思わず、苦笑を零した。


 

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