マリア退場
眠ったマリアが連行され、何とも言えない空気が漂っていたところへ来客があった。
「やあ!おめでとう!今日は無礼講って聞いたし軽口でいいんだよね?」
自らプレゼントの箱を抱えたバルム様が明るく入ってくる。どうやら招待されてたらしい。
辺りの妙な空気に戸惑い「どうしたの?」と気まずそうに尋ねる様に吹き出したのはお兄様だった。
「ふはっ…!バルム様でもそんな風に戸惑ったりするんですね」
それを聞いたシグルス様も笑い出す。
「確かに珍しいものを見た。いつも冷静だものな。説明するよ」
若干憮然としたバルム様だったが周りの空気が和やかになったことを読み取ると、いつもの優しい微笑みに戻ったのだった。
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「それは…あんな空気になるのも納得ですねぇ。前から変な人とは思ってたけど…思い込みもそこまでになれば病気だね、ははっ」
説明を聞いたバルム様の感想は以上だった。
全く攻略されてなかったんだなぁとしみじみ思う。
「それよりさ、二人の婚約のお祝いを見てくれよ。特別に作らせたんだから!」
そう言って開けた箱の中には対の腕輪が入っていた。
細身でブレスレットに見える繊細な作りの物とバングルらしい作りの物だがシンプルなデザインながらも対と分かる素晴らしいものだった。
「『魔除けの護符』の効果がある物なんだ。まぁ…彼女みたいな『マモノ』も弾いてくれるかは分からないけどね」
後半おどけた調子でからかうが実際『魔除けの護符』はもの凄く貴重なアイテムだ。
人間よりは多いが珍しい存在に変わりない聖魔法属性のエルフや妖精が特別な鉱石に魔法を付与することで魔除けの力を発揮するのだが、そもそもどちらも人嫌いが多い種族なので付与してくれるエルフや妖精が少ないのだ。
隣の国に気分によって付与してくれるハーフエルフが一人いるとは聞いたことがある。
そして、バルム様の家であるメイザー侯爵領は希少な特別な鉱石が発掘されるとも。
「こんな貴重な物を…ありがとうございます」
シル様が強張って威圧放っちゃってる。
人形姫全開だ!
それに気付いたシグルス様がそっとシル様の肩を抱き、反対の手で顔を自分の方へ向け視線を合わすと優しく囁いた。
「シル、バルムとセルディは側近である以上に私の幼馴染みであり数少ない気のおけない友人だ。そんな畏まらなくて大丈夫だよ」
一瞬、人形姫リュシルファの威圧に居心地悪そうになっていたバルム様が「おや?」という表情に変わる。
シル様の表情が和らいだ上に頬が赤く染まっているのが見て取れたからだ。
「貴重なアイテムを目の前に緊張してしまって…すみませんでした」
ちょっぴりシオっと凹むシル様可愛い!じゃなくて、こういう方向にも少し表情が動くようになった。
お兄様も横で微笑ましげにシル様を見ている。
そして
「冗談でも彼女みたいなマモノが他にいると言わないでくれ」
というシグルス様の懲り懲りと言わんばかりの台詞に皆が笑い、使用人たちも笑顔となり無礼講の小さなパーティが始まった。




