『夏休みが終わっても夏アニメは終わらない』
次の日の早朝。朝一番の新幹線を待ちながら、未だまばらなホームで夏の朝の空気を感じていた。
隣には、昨日の動きやすい服装とは一転、清楚な白ワンピースに身を包んだせつなの姿。
その姿を見て、なんとなく胸がキュッと締まる。
「……終わっちゃったな、夏」
盆も終わり、僅か二週間となった夏休みを想い、高校生にもなって小学生みたいな郷愁に襲われる。
夏休みが終わってほしくないなんて、そんなことを思ったのは本当に久し振りだった。
まだまだ、せつなとの夏休みを楽しみたかった。
俺のそんな頼りない呟きを聞いて、僅かにぽかんと口を開いたかと思うと。
「なに言ってるんですか、先輩!」
その穢し難き姿とは裏腹に、いつも通りの快活な声を上げる。
「夏アニメはまだ半分しか終わってないんですよ! 夏コミも、帰ってからの三日目四日目から本番じゃないですか! 買えなかった新刊を同人ショップで買いに行くのも醍醐味です!」
昨日の疲れなんてなかったかのように、いつでも元気な俺の後輩に、慣れたつもりだった俺は久々に面食らう。
「……はは。お前は、いつも元気だな」
「それこそ何言ってるんですか。先輩だって、わたしと一緒で元気でしょ?」
「ん?」
「だって、帰ったら観れてなかったアニメの視聴、一緒に付き合ってもらうんですから♡」
せつなの人差し指が、俺の指に絡んでくる。
俺はそれを第一関節だけ動かして受け止める。
ああ、そうだ。
俺とせつなの夏はまだ終わらない。
終わっても、また次のアニメが始まるみたいに。
「アニメが終わっても、何度も何度も振り返り視聴もしたいんですから! もちろん、付き合ってもらえますよね♡」
「お、お手柔らかに……」
これからもたった二人のオタク部の活動は、どうやら無事続いていきそうだ。
ここまでお付き合いありがとうございます。
少し前に書いた恋愛もののような何かで、個人的に気に入っているのでここに上げさせてもらいました。
もしかしたら続きを書くかもしれないので、そのときはよろしくお願いします




