『【RRR:緑翠の覇王妖精ノーナ】買います』
◇『【RRR:緑翠の覇王妖精ノーナ】買います』
前回のあらすじ。
VFの環境カード【RRR:FAインフィニット・スラストドラゴン】を無事に売却して3000円の軍資金をGETした虎門さん。
その軍資金を元にして本命のカード【RRR:緑翠の覇王妖精ノーナ】を探し求めるのだった。
が、運悪く、近所の行きつけのショップでは目的のカードは売り切れていた。
しかも喫茶店「ミトラ」の新メニュー、ハヤシライスパンも大苦戦で廃止の危機。
新品のブースターパックも品薄、ここに虎門さんのカード購入奮闘記がはじまる。
「……と、いう感じなんよ! カード探し手伝って!」
「経営危機の方が大事じゃないかな!?」
「ハヤシライスパンなんて流行らん言ったとに強行したお父さんの自己責任たい」
「ドライだ」
「ドライカレーじゃなかよ?」
「態度のはなし!」
「タイ度は低かねー、スリランカ度のが高かよー」
「カレーじゃねえ!」
ぜぇはぁとツッコミに疲れてお冷をいっぱい煽ると、俺は深呼吸して落ち着くことにした。
そしてスマホで検索、【RRR:緑翠の覇王妖精ノーナ】について調べてみる。
現在の最新エルフパーティの切り札となる、緑風と戯れる美麗な幼い大いなる妖精の少女。おしとやかそうな見かけのわりに、性能は準環境クラスで申し分ない。
イラストと性能の良さを兼ね揃えているので、価格は一枚1500円とそれなりに高い。
「……いや、売り切れてるな、これ」
「ねー! 売ってなかとよ!」
「スラゴンの禁止制限改定発表で、繰り上がりで覇王妖精ノーナの需要が上がったってとこか。どうも次の新弾の【RRR:銀青の最強妖精フリージア】との連携で強化される噂があるし、買えるうちに買っておかないと高騰するやつか……」
「毎度ながら頼りにしとるよ、公知くん!」
「うーん、そうだなぁ……」
カード調達の手段は主に三種類ある。
①新品パック等の購入。
②中古カードの購入。
③ユーザー同士の交換や譲渡。
トラブルの原因になるので③を店内禁止にするカードショップが多く、個人的な付き合いなくして交換や譲渡は成立しづらいので、やはり基本は金銭での解決ということになる。
予算度外視ならともかく、虎門さんにも金銭事情がある。
それこそ「じゃあ俺が買ってあげよう」でもいいのだが、それを繰り返してしまうとカード収集の楽しみを奪いかねない。
トレーディングカードゲームは“集める”過程を工夫することも楽しみ方のひとつなわけだ。
しかしネット通販やフリマアプリを見ても、相場2000円と値上がりが著しい。
「……解決方法がひとつ」
「それは」
「値下がるのを待つ。今はスルーだ」
「ええ……!! せ、殺生なぁ~!」
「発想の転換だよ虎門さん、いつも言ってるように大会に興味ないんだから、そっちの需要が落ち着くのを待って安くなったら買えばいい。それより……」
ささっと虎門さんが興味を持ちそうな別種のカードを紹介する。
「【R:手裏犬いぬぬわん】……! 安っ! 20円!」
「ニンジャパーティのトップレア【RRR:風魔手裏犬いぬぬわーうるふ】が一枚だけ当たってたしこっちは一枚200円ずつで安上がりだ。もちろん出費覚悟で覇王妖精でもいい、どうする?」
「う、う~~、うぐぐぐぐ」
虎門さんはうめき声をあげ、忍犬と妖精を天秤にかけて心の内で吟味する。
「厳正なる虎門裁判の結果、当法廷は……ニンジャば買います!」
「よし、解決だな」
こうして高嶺の花の【RRR:緑翠の覇王妖精ノーナ】をあきらめた虎門さん。
環境クラスのつよつよデッキは完成しなかったものの、忍犬たちと戯れて満足している。
本日の教訓、時には妥協せよ。
「……ところでハヤシライスパンはどうなったんだ?」
「ライス抜いてハヤシパンにしたらまぁまぁ売れとったよ~、時にゃー妥協しなっせ! たいねー」
「……入ってたんだ、お米」
幻の名物料理が気になるも後の祭りとはこの事だった。




