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見られてました……治療という名の嫌がらせですよね?


「ザラ様! アルベルト様が起きました」


 クラリスが声の主であるザラに話しかけ、俺はザラの顔を見ることができず、反対側の壁を見つめ続ける。


 やっぱり、この声はザラ……デスヨネー。

 うおぉー、やっべぇ、俺、絶対氷柱(つらら)で刺される……


「だから来たんです。それより、クラリス、そのアホ王子から離れなさい」


 いや、毎回思うけどアホ王子って……仮にも、お前の教え子だぞ、俺。


 ザラにジロリと睨まれている気がし、背筋にゾクリと冷たいものが走る。

 いつまでもそっぽをむいているわけにもいかないので、勇気を振り絞り、ザラの方へ顔をむけた。


「えっと……ザラ先生は、なぜこちらに……?」

「治療です。私の治療魔法は滅多なことでは使いませんが、クラリスから頼まれましたから」

「あ、ありがとうございます……」


 うん、相変わらずの無表情だけど……目が怒ってますよね……ザラ先生……


「疲労困憊の状態で外を出歩いて熱中症になった……というところでしょう。このアホ王子は……」

「ネッチュウショウ?」


 アホ王子のツッコミも忘れ、ザラの口から発せられた聞き慣れない言葉を繰り返す。


 ネッチュウショウ? なに? それ?


「熱中症ですか? じゃあ、冷やしてゆっくり休んだ方がいいですね」


 クラリスも心得顔でザラと会話を続ける。


 クラリスは「ネッチュウショウ」って知ってるのか?


「回復魔法をかけましたから体力は回復するでしょう。あとは水分、塩分を取って、首元、冷やして寝てなさい」


 ザラは右手の指をパチンと鳴らすと、サイドテーブルに置いてあった空のコップの中に半透明な液体がなみなみ注がれ、そのコップが俺の口元に飛んできて、魔法により口が勝手に開き、勢いよく流し込まれる。


「ごほっ」


 薄っすらとした不思議な味の液体を吹き出さないよう、必死で飲み込み……扱い雑じゃないですかぁぁ!


 もう1度、ザラはパチンと指を鳴らし、俺の首元に氷を落とす……ひぃーー冷てえぇぇ! もうちょい丁寧に扱えーーーー!


 文句を言おうと口を開けると、目の前で人差し指を振られ、俺は魔法の力により否応なくベッドにバタンと寝かされ、睡眠魔法をかけられた。


 えっ、まてまて、俺の意思ーーー!


 せっかくクラリスがいるのだから、もう少し起きていた……いんだ……け………ど。


 まぶたの重みに耐えられなくなり、睡魔に負けてしまう。ザラとクラリスの会話が遠くに遠くに聞こえ……る。


「アホ王子は大丈夫だから、美咲は屋敷に戻りなさい」

「本当に大丈夫……? だいぶ荒療治のような気が……」

「それは気にするな。スポーツドリンクも飲ませたし、首の両脇も冷やしている。回復魔法もかけた……そんな心配そうな顔をするなよ。仕方ないな……異変があったら僕が特別に対処するから安心しなさい。こんなアホ王子からは美咲は早急に離れること」

「雪兄、お願いね……氷柱……投げちゃだめだよ?」

「病人相手にはしないよ」

「えぇ……病人じゃなかったらするのぉ?」

「当たり前だ。僕のかわいい大事な妹に手を出したんだから」

「出されてないってばぁ……」


 ……スポーツドリンク? ミサキ? ユキニイ? 聞いたことがない単語が聞こえてくる。なんの事だろう? それに……妹? 聞き間違いか……な……


 俺は思考も止まってしまい、そのまま眠ってしまった。




お読みいただきありがとうございます。


主人公、アホ、アホ、連呼されています。

雪兄の逆鱗に触れたので、仕方ないと諦めてもらいましょう。

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