隣国王子が来訪しました……思っていたよりもいい男です…………チッ
――次の日――
インパルド王国第1王子セドニー・カル・インパルドが我が国を訪れる。
非公式なので式典もパーティーもなく、王族と我が国の要人のみで出迎えた。
父上、兄上に挨拶後、セドニー王子は俺の前に立ち、アルカイックスマイルを浮かべ、手を差し出す。
「アルベルト王子ですね? この度は色々と私の為に手配をしてくださったようで、ありがとうございます。同じ学園に通うのが楽しみです。仲良くしてください」
「お待ちしておりました。こちらこそ楽しみにしておりました」
俺はセドニー王子の手を取り、握手を交わす。
セドニー王子は金髪碧眼の美男子である。
穏やかな笑顔と親しみやすい雰囲気で国民の人気も絶大との噂だったが、本当みたいだな。
王子は笑みを浮かべながら、俺にしか聞こえない声量でボソリと言葉を発する。
「負けませんよ」
「なんの事ですか?」
俺は握手している手に力を込め、王子スマイルをし続けると、王子の碧い目はキラリと光り、フッと笑う。
挑発には乗らない。挑発に乗るということは、クラリスが口説かれるのを俺が認めたと同義だから。
「早速、今日から学園に行きたいのですが」
「手配はできております。今日の午後に一緒に行きましょう」
「よろしくお願いします」
儀礼的な挨拶をし、俺とセドニー王子の初対面は終わった。誰に対しても愛想良く挨拶を交わしている新たな恋敵を俺は目で追いかける。金の髪が美しくて、俺でも惚れ惚れしてしまいそうだ。
美しい髪色、整った顔立ち、洗練された立ち居振る舞い……いい男だな、おいっ。
あーあ、クラリスに会わせたくないなぁ。
学園に着き、セドニー王子の事は先生に任せ、俺は自分のクラスの扉を開けた。
授業中だったので静まりかえった教室に扉の音が響き、一斉にクラスメートが俺を見たが、公務で早退、遅刻はいつものことなので、俺がペコリと頭を下げると、何事もなかったかのように授業が再開される。
自席に座り、テキストを机に広げていると、前の席の令嬢からスッとメモを渡される。ミカエルからのメモだった……
「なんでセドニー王子が義姉さまと同じクラスなの!? アルベルト、なにやってたんだよ!」
顔を上げるとミカエルは恨みがましい目で俺を睨んでいる。その目だけで呪われそうだ……いい男が台無しだぞ。
ミカエルの視線を無視し、俺は1週間ぶりの授業に集中…………できるかぁぁ!
クラリスの事が心配で先生の声がまったく頭に入ってこない。とにかく早く授業が終われ……と祈り続けた。
待ちに待った休憩になり、俺のところにすぐさまミカエルがやってきて、不服そうな顔をする。
「アルベルト、久しぶり。どういう事?」
「いろいろあったんだよ! ほら、セドニー王子の様子を見に行くぞ」
今はミカエルと揉めている場合じゃない。俺は足早に教室を出て、クラリスの元へ急ぐ。
クラリスの教室に入ると人だかりができていて、その中心にいるセドニー王子は、クラスメートから挨拶や質問などを受けて、にこやかに会話をしていた。
教室のすみの方でクラリスとジェスター、あと、クラリスと仲の良いローザ嬢がコソコソと話しているのが目に入り、セドニー王子がクラリスに接触していない事に俺は胸をなでおろす。
「セドニー王子の様子を見にきたが……えらい囲まれてるな……」
クラリス達に話しかけると、俺に気がついた3人は顔を見合わせた。
微妙な空気の中、ジェスターがブスッとした顔で尖った口調で俺を咎める。
「セドニー王子は我がクラスで人気者だ。それより、アルベルト。大事な国のお客様だろ? 学園のテキストぐらい、ちゃんと用意しろよ。国の恥だぞ」
はっ? テキストがない? そんなバカな……
昨日しっかり確認したし、ナクサスがそんなミスをするはずが……
「準備万端だと係の者に聞いていたぞ……確認しとくが……」
「そっちで完璧に準備できてないと、こちらも困るんだが」
苛々した様子で俺に文句を言ったジェスターが悔しそうに顔を歪める。
たしかにテキストがなかったのはこちらのミスだが……ジェスターの様子がおかしい。どうしたんだ?
「わかった。すぐに準備するよう使いを出す……が、なんか他にあったか? お前、様子がおかしいぞ?」
「アルベルト王子!!」
囲まれていた人だかりから、ひょこり顔を出すセドニー王子に名を呼ばれ、軽く会釈する。
クラリスに近づいてほしくないので、人気者のセドニー王子はそのまま囲まれてて下さい。
俺の願いに反し、王子は集まっていたクラスメート達に謝りながら、こちらにやってくる。
「セドニー王子、大丈夫ですか? テキストの件、聞きました。とんだ失礼をしてしまい、申し訳ございません。すぐに手配いたします」
俺は王子に謝罪し、すぐ使いの者を呼ぼうとすると王子が満面の笑みを浮かべる。
「いえ、大丈夫ですよ。テキストは隣の席のクラリスに見せてもらいました」
「そうでしたか、それは良かっ……えっ!? 隣の席の……」
「クラリスです」
思わずニコニコと聞き流しそうになったが、内容を理解し、言葉を失った俺にセドニー王子は、ご丁寧にもクラリスの名をもう一度告げる。
隣の席のクラリス? え? なんで!?
お読みいただきありがとうございます。
王子たるもの舌打ちはいけません。




