父上に呼ばれました……王子様、俺の存在、無視ですか?
「アルベルトよ、1週間後、インパルドの第1王子が非公式で来訪する」
夏と呼ばれる季節は終わったが、太陽の元気の良さに朝から辟易していると、父上からの朝食の誘いがあった。
珍しいなと思いつつ、国王である父上の朝食の誘い……というと聞こえがいいが、呼び出しを断るのは言語道断。
学園に遅刻する旨の連絡をナクサスに指示し、父上の元へと急いだ。
挨拶後、席に着き、すぐに朝食が運ばれてくる。
とうもろこしの冷製スープを一口飲み、焼き立てのパンを手でちぎり、口に運ぶ。
父上もパンを口にした後、隣国王子の突然の来訪予定を話し始めた。
「インパルドのセドニー王子ですか……それはまた非公式とはいえ、急な事ですね」
俺は食事の手を止め、父上に返事をしたが、わざわざ朝食に呼ばれて話すような内容ではない気がして、父上の意図を考える。
国王が食事に呼ぶ……という事は私的な話があるという事に等しい。そして、それはできるだけ周囲に悟られたくない内容であることが多いのだ。あくまで、食事の際の談笑という体を取るための食事である。
「まぁ、あちらにも都合があるのじゃろう。我が国の学園生活を体験したいとのことで、王子は1週間ほどスピネル学園で学ぶことになった」
「えっ? 1週間?」
非公式で1週間も滞在するのか……行事やパーティーなど理由があるわけでもないのに一国の王子が1週間? なにかあるのか?
父上はワインを一口飲み、俺の目を見た。
「アルベルト、頼んだぞ」
「はい?」
えっ? 頼んだぞって……まさかの丸投げ!?
「インパルドは我が国と友好関係を結んでいる国、非公式とはいえ、我が国で何かあったらコトだからの。王宮騎士には密かに厳戒態勢をとらせておるが、学園内はアルベルトに任せたぞ」
「……はい」
学園内のことだけか……丸投げじゃなくて良かったが、外交の為とはいえ、めんどくせー。なんで、こんな時期に非公式で来るんだよ……ん? なんで非公式で来るんだ? 旅行? いや、だったら学園に通う必要もないだろうし。
「セドニー王子もお前と同じ17歳。結婚できる年齢になった。どういうことかわかるじゃろ?」
年齢を強調しながら話す父上の顔を見て、俺は察する。
隣国の王子が非公式で我が国にくる本当の目的……
妃探し。
十中八九、間違いないだろう。
現インパルド国王は病弱故、セドニー王子があと数年で王位を継承するとの噂だ。
王位を継承する前に我が国に妃を探しにくる。というところか……インパルドより我が国の方が魔道士が多いしな。ああ、だから同年代が集まる学園に通うのか……納得。
父上は食事をしながら、雑談のように軽い口調で続きを話し始めた。
「余はSSクラス魔道士であっても、他国の者と想い合っているのであれば、引き止める事はせぬ。国にとっては痛手かもしれぬが、その為に我慢させる事は余の主義に反するでの」
俺は手にしていたパンをポトリと落とし、父上を凝視した。この父上の言い方……この国にSSクラス魔道士の令嬢は1人しかいない……セドニー王子の妃候補はクラリスなのか!?
Aクラス以上の魔道士を妃に。
と考えるのは国として至極当然。
実際はAクラス以上の魔道士は少ない上に年齢や身分等などの条件もあり、難しいところなのだが……なのだが、魔道士ランクトップのSSクラスであるクラリスは王子と同じ歳……しかも公爵令嬢。妃候補に挙がる……か。
やっと父上が俺を朝食に呼んだ意図を理解した。
セドニー王子はSSクラス魔道士のクラリスを妃にと考えている。この1週間はクラリスを口説きにくると言っても過言ではない。恋仲になったら、いくら俺の婚約者といえども、国として止めることはできない……と。
なぜなら、各国の王族同士には暗黙の掟があるからだ。
「王族の妃探しに口を出すべからず」
くそぉー、セドニー王子、婚約者の俺の存在無視かよっ!
「アルベルト、気をつけよ。以上だ」
「……はい、承知致しました」
食事が終わり、俺は頭を下げ、父上の私室から退室したが、その場で壁に寄りかかる。
はぁ……厄介なことになってきた……
お読みいただきありがとうございます。
他国の王子に無視される、婚約者の肩書きっていったい……




