魔道士長に会いに行きました……呼ばれてませんけど
結局、俺達3人は疲労困憊の元凶であるザラに自ら会いにいく事に。
俺達は呼ばれてないけどな。
クラリス1人で行かせられないだろっ!
4人で王家の馬車に乗り込み、王宮にむかう。
ひと息ついた後、目で誰が口火を切るか合図を送りあい、最終的にジェスターが眼鏡を指で押し上げながら、クラリスに話しかけた。
「あのさ、クラリス……もしかしてだけど、エドワード様とザラ先生が講師になったの……クラリスがいるから……なんてことはないよね?」
「まさか! ご多忙なエドワード様とザラ様がいち貴族の私などの為になんて……」
クラリスは俺らから一瞬視線を外したが、すぐにいつもの笑顔に戻り、にこやかに話す。
最後の方は少し言葉を濁していたものの、ニコニコ笑い続け、そのまま窓から見える外の景色を眺めはじめた。
それ以上聞くことができず、話題は学園の話になったが、窓に映ったクラリスの顔が拗ねた子供のように見えて、なんだか気になった俺達は話も適当にチラチラとクラリスに目をむける。
クラリスは、ふぅと軽く息を吐き、小声でつぶやいた。
「もうお兄ちゃん……過保護なんだから……」
オニイチャン? カホゴ?
なんのことだか、さっぱりわからん。
俺がクラリスに声を掛けようか迷っていると、馬車が止まり、王宮に着きましたとの従者の声が聞こえた。
王宮魔道士長執務室。
仕事の資料を魔法で作成していたザラは、クラリスに一緒についてきた俺達3人の姿を横目で見ると、一瞬、眉をひそめたように見えた。
「ザラ先生、学園の特別講師をなさることを入学式で知り、びっくり致しました。学園でもお世話になりますので、こうしてご挨拶に伺いました」
ジェスターが1歩前に出て、ニッコリ笑いかける。
ザラは普段と変わらず無表情のままだが、招かれざる客である俺達を見る目は呆れているように感じた。
あの完全無欠のザラを呆れさせる俺達ってある意味すごくない?
「まぁ、いいでしょう。座りなさい」
右手の人差し指を上から下に振ったザラの前に、椅子が4脚現れ、俺達は言われるがまま座り、ザラが一段落つくのを黙って待っていた。
ザラはさっき作成していた資料に羽根ペンをサラサラ走らせた後、左手でパチンと指を鳴らし、机の上に何個もある書類の山を消した。そして机の上で手を組み、俺達に話しかける。
「みなさん、学園への入学おめでとうございます。私も週に1日講師として、学園に行きますので、しっかりやるように。いいですか? 学園では魔法は関係がないとはいえ、私の教え子と名乗る以上は変な成績を取ったら、即除名します」
「……はい」
ザラの強い圧に押され、縮こまる俺達。
く、くそー。ま、負けないからなっ! って、即除名!? それ、困ります……
ザラは俺達3人の顔を順番に確認した後、微かにフッと笑い、机の中から丸いブルーの石がついた小さなペンダントを取り出した。
「クラリス、これは入学のお祝いです」
「うわぁ! かわいい……ありがとうございます。ザラ様!」
クラリスは目をまん丸くして驚いたが、とても嬉しそうな笑顔をむけ、ザラにお礼を言う。
ザラもぜぇーーーーーったい俺達にはむけないであろう優しい目でクラリスを見る。
えええ……入学のお祝いってなんだよぉ。しかも、ペンダントってさぁ……
再びどんよりした目で俺達はクラリスとザラを眺める……俺、今、なに見せられているの?
「貴女の瞳の色に合わせました。ペンダント、早速つけてあげましょう」
「ええっ!?」
「ザラ先生、さすがに令嬢にペンダントをつけてあげるのは……」
ザラがクラリスの後ろにまわり、ペンダントをつけようとしたので、俺達3人同時に驚きの声を上げ、たまり兼ねた俺がザラに文句を言うが、凍てつくような視線を感じ、俺の体はブルッと震え、口が凍ったのかと思うほど、次の言葉が出なくなる。
うぉー、これが魔道士のトップに立つ者の本気の眼力かぁぁ!
極寒の地に飛ばされた感覚になったぞ!?
いやいや、それよりも、なんでクラリスの件で本気の睨みを利かせるんだよ!
「クラリスは構いませんよね?」
「ええ、もちろん」
「もちろんなの!? 義姉さま!」
驚きと嫉妬の混じった顔をしたミカエルが立ち上がって叫んだ。
クラリスはきょとんとしている……このぉーー鈍感っっ!
「このペンダントは、虫よけになりますからね」
「虫よけ?」
「虫が学園にたくさんいます。特に3匹、たちの悪い虫がいますので、虫よけです。外してはいけませんよ」
ザラは俺達3人をチラリと見る。俺達はすぐさま視線を外す。
俺らは虫扱いかよっっ!!
これは……暗に脅されてるんだろうな……手を出すな、と。もちろん、こんな脅しで俺は屈しない。屈するもんかぁぁ!
ジェスターとミカエルを見ると、同じ事を考えているのか目に力を込め、ザラを見据えている。
クラリスはペンダントをつけてもらい(チクショー)、嬉しそうに眺めては満面の笑みを浮かべ、ザラに何度もお礼を伝えていた。
「本当にかわいいです、ザラ様。……でも、虫よけって……そんなに虫っていたかしら? ねぇ、みんなは学園で虫を見ましたか?」
俺達に屈託ない笑顔で聞くが、答えられるわけがないじゃないか!
「何のことだろうね……」
3人が3人、同じ言葉を発するしかなかった。
その後、ザラは再び仕事を始め、退室しようと立ち上がった俺達に、書類に目を通しながら声をかける。
「あなたたち3人にもお祝いをあげましょう。特定の人物に触ると電気が流れるブレスレットとか、特定の人物に2m近づくと爆発する指輪とか、特定の人物のことを考えると首を絞めるネックレスとか好きなもの作ってあげますから、どれがいいですか?」
……
……
……
「…………イリマセン」
俺達3人は空虚感を覚え、遠くを見つめた。室内だけど遠くを見つめた……
なに? それ? 物騒すぎなんですけど……特に、最後の! 考えただけで首を締めるって、意味分かんない!!
お読みいただきありがとうございます。
雪兄は天才です。
虫扱いされてますが、がんばれっ!←作者、他人事。




