ザラの回想 ~ザラ視点~ 3
王宮魔道士長になり、目まぐるしい日常を過ごしている中でも、僕は美咲の生まれ変わりを探すのを諦めなかった。
兄さんと僕がこの世界でも兄弟だったように、僕らの妹としてブライトン家に生まれるんじゃないかと期待をしていたが、その気配もなく、別の家庭に生まれているのか? それともうんと早くに生まれ変わってしまったのか? そもそも、この世界には生まれてないのか? 雲を掴むような話だったが、僕は絶対に諦めない。
あまりに多忙な日々を何年か過ごし、心がすさんできた僕は、急に美咲が子供の頃に歌っていた童謡が頭に浮かんだ。
真っ白い天使が降りてきて……
この「天使」という歌詞を無理やり「雪」と教え込んだのを思い出し、ふっと笑う。
兄さんは、天使だと何度も訂正をしていたようだったが、美咲は頑なに「雪」と歌い続けた。
楽しそうに「真っ白い雪が降りてきて〜♪」と幼声で歌う美咲がかわいくて、こっそりにやけていたもんだ。
あの童謡を再現できないだろうか? 単体で音楽を奏でるもの……オルゴール……作ってみるか。オルゴールができたら、美咲に会えるかもな。
願掛けやおまじないなんか信じない僕だったが、忙しすぎて、頭がぼやけていたのかもしれない。
いつもなら考えないであろう思考に陥り、魔法を使わず、時間を見つけてはコツコツとオルゴールを作っていた。
5分でも10分でも時間が空くと、カチャカチャと手を動かしていた僕を兄さんは覗き込み、問いかける。
「なに作ってるんだ?」
「オルゴール」
集中していたため、顔も見ずに答えたが、兄さんは全てを察してくれた。
「ふーん、美咲の好きだったあの曲か?」
「そう」
「……美咲と会えるといいな」
「だね」
兄さん、僕は知っている。
兄さんも仕事の合間に美咲を必死で探していることを。
もうすぐオルゴールが完成する……という頃、クラリス・アルフォント嬢の魔力制御装置の製作申請が目に入った。
急ぎの要件を優先していたから、だいぶ後回しにしてしまった申請だったが、そろそろ作るか。
クラリス・アルフォント SSクラス魔道士
会ったことはないが、この令嬢の噂は聞いている。
アルベルト王子の婚約者であり、ジェスター・シトリンの想い人。
SSクラス魔道士であるクラリス嬢を守るため、強くなりたいと、教え子2人から競うように鍛錬の申請が入ってくる。
ふぅん、すごい魔力量だな……僕の後継者として育て……9歳くらいの年の差じゃ後継者にならないな。しかも、将来の王子妃だ……無理だな。
ああ、僕はもう隠居生活したいんだけど。
オルゴールに最後のねじを差し込み、ジィコジィコと回す。
澄んだきれいな音が執務室の中を包み込んだ。
懐かしいな……
オルゴールが最後の音色をポロンとたて、執務室は音のない静かな空間に戻った。
願掛けなんて信じてないはずなのに、オルゴールが完成し、曲が鳴り終わっても、美咲が姿を現さないことに心のどこかで落胆している僕がいる。
そんな気持ちを払うかのように、首を振り、クラリス嬢の制御装置製作に取り掛かかった。
制御装置が出来上がったのは、この日から3日後の事である。
お読みいただきありがとうございます。
今回でザラの回想は終わりです。
クラリス(美咲)と再会する直前までのブライトン兄弟の裏話でした。
お付き合いいただき、ありがとうございました。
こんなに探していた妹ですから、近寄る男を兄ちゃん達は許しません。
アルベルト、がんばれー ←無責任な作者
次回から、主役であるアルベルト視点に戻ります。
時は流れ、アルベルト達は学園に入学、また、ドタバタ日常の始まりです。




