クラリスの事情 ~クラリス視点~ 5
まぁ、前世の事を今更……本当に今更、怒っても仕方がないし、雪兄の実験(?)のおかげで出会えたわけだし、結果オーライって事にしよう。
私達は話すことは山ほどあるのだから。
私の死んだ後のこと、お兄ちゃん達の歩んだ人生、幼い頃の思い出話……
ふふっ、お兄ちゃん達と、こうしてまた喋れるなんて! 嬉しい!
私は神様に感謝しながら楽しい時間をすごしていたが、一通り話し終わると、雪兄が眉間に皺を寄せ、不愉快そうな声を出し、場は一気に緊張感に包まれた。
「そう言えば、アルベルト王子と婚約してたな……」
私は動きを止め、口に含んだ紅茶を慌ててコクリと飲む……お、怒ってる……あれは確実に怒っている声だ……
「なに!? 王子がどこぞの令嬢と婚約したのは知っていたが……あれお前なのか!?」
「私の教え子のジェスター・シトリンとも親交があるな」
「あの小僧らめっ」
「僕のかわいい妹に手を出すとは……許せん」
「とりあえず、アルベルト王子とジェスターは潰すか……」
「だな」
物騒な話しないでぇぇぇぇ。
「ストッーープ。もう、勝手に話を進めないで! アルベルト様は『仕方なく』私と婚約してるの。時期をみて婚約破棄する事になってるし。ジェスター様は良い友人! そんな関係じゃありません!」
「結婚……いや、彼氏、いやいや、少しでもお前に言い寄る男でもだ。そんな男がいたら、兄ちゃんに言うんだぞ」
「そうだぞ、美咲に相応しいか見極めてあげるから」
「お前は騙されやすいしな」
「最低でも、火あぶりと氷漬けに耐えうるぐらいの男じゃないと許さん」
「俺がギッタギタのメッタメタにしても、大丈夫な奴じゃないと大事な大事な妹はやらん」
ヤ・メ・テ・ア・ゲ・テー
私は確信を更に強めた。
このシスコンっぷり……疑いようがなくお兄ちゃんだ。
いもしない私の恋人に文句を言っているお兄ちゃん達を横目で見ながら(この世界では)弱冠13歳にして、私の結婚が、とてつもなく遥か彼方に遠のいたことを……悟った。
「ああ、私の結婚がぁ……」と口の中でつぶやき、頭を抱え、落ち込んでると、天兄と雪兄が頭をヨシヨシしてくれる。
もう! 誰のせいで落ち込んでると思ってるの!
ホント……仕方ないなぁぁ。
私がクスリと笑った瞬間……バンッと勢いよく扉が開く音がした。
びっくりして扉を見ると、なぜか、怒った顔のアルベルト様が立っていて、ツカツカと私にむかって歩いてきた。
「クラリスは私の婚約者です。気軽に触れないでいただきたい」
私の頭にのってた2人の手をパシッと払うアルベルト様。
突然の状況についていけず、きょとんとしていると、エドワード様がニッと笑う。
「これはこれは、アルベルト王子様。失礼いたしました。でも、いずれクラリス嬢との婚約は破棄するそうですね。力になりますよ?」
アルベルト様は顔をカッと赤くして、なにか言おうとしたが、ザラ様の無感情な声に遮られる。
「王子、魔法の鍛錬はしてますか? 今度、見て差し上げましょう。あと、人の部屋に入るときはノックをしないと失礼ですよ」
ザラ様、エドワード様をジッと見据えるアルベルト様。そして、いきなり私の腕をガシッと掴んだ。
「クラリス、もう用事は終わったんだろ。行くぞ!」
「えっ? アルベルト様? どうしたんですか?」
何も言わず、腕を掴んだまま、ズンズン扉の方へむかう。
扉の傍にいたエドワード様が、おっと……と言いながら、扉に手を掛ける。そして、アルベルト様に顔を寄せ、耳打ちし、にっこり笑った。
なに、話したのかな? 仕事の話かな? 王宮騎士だしね。
アルベルト様は黙ったまま、扉に掛けられたエドワード様の手を外し、廊下に出る。
「クラリス、またいらっしゃい。連絡しますよ」
「はい! ザラ様、エドワード様、今日はありがとうございました」
言い終わらないうちに、私はアルベルト様に連れて行かれた。
本日で投稿1ヶ月になりました。
皆様、お読みいただき、本当にありがとうございました。
更新が不定期になる事もあるかもしれませんが、最終回までは執筆済みですので、今後とも、お読みいただけましたら、幸いです。
今回で、クラリスの事情は終わりました。
お付き合いいただき、ありがとうございました。
後半は「強大な敵が現れました〜」のクラリス視点です。
次回から数話、クラリスと再会する前のザラ(雪兄)の話になります。
アルベルト、主役なのにごめん。




