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クラリスの事情 ~クラリス視点~ 1


 ――アルベルト乱入、3時間前――


 白に統一された室内の両側には大きな本棚がそびえ立ち、びっちりと難しそうな本が並べられている。部屋は小綺麗で広くはあるものの白でなければ、圧迫感を感じてしまいそうな本の量。


 目の前にいるのは、山のような書類に囲まれながら、ペンを走らせている銀髪の魔道士。


 王宮魔道士長 ザラ・ブライトン様


 私、クラリス・アルフォントは、初めて訪れた王宮魔道士長執務室に圧倒されながら、ザラ様への挨拶のタイミングを見計らっていた。あまりにも忙しそうな様子に声をかけるのもはばかられたが、挨拶をしないわけにはいかない。


「お初にお目にかかります。クラリス・アルフォントです。この度は魔力制御装置を作っていただき、ありがとうございます」


 一瞬、手を止めたのを見逃さず、瞬時に令嬢らしく、丁寧にお辞儀をし、挨拶とお礼を述べる。


「あぁ、貴女がSS魔道士、噂のクラリス嬢ですか」


 顔を上げたザラ様はサラサラの長い銀髪を払い、私を見た。女性かと見紛うほどとても美しいお顔はニコリともせず……アルベルト様とジェスター様が悪魔と言っていたのを思い出し、自分を奮い立たせる。


 だ、大丈夫だよね? 私、まだ粗相してないよね? 氷漬けにされないよね?

 うん、大丈夫、大丈夫。私はまだなにもしてないもん。

  

 あの美しいお顔で無表情のまま、谷や川に落とすのかぁ……それは、たしかに……悪魔だわ……


「これが魔力制御装置です」

 

 ザラ様は仕事の手を止め、私に座るように促すと、小さなガラス玉がついたピアスらしきものを私の目の前のテーブルに置いた。


「えっ? こんなに小さいのですか?」

「女性という事でしたので小さく改良しました」

 

 へぇ……すごい……さすが、稀有(けう)の天才と呼ばれている魔道士。


「お気遣いいただき、ありがとうございます」

「いえ」


 お礼を述べると、ザラ様は言葉少なに返事をし、早速、魔法でピアスをつけてくれた。

 

 ピアス、キラキラしてきれい。

 女性だからアクセサリーっぽく、綺麗に仕上げてくれたのかしら。

 

 制御装置装着後、1時間程この部屋で待機しなくてはならない。副作用が出たとき、すぐにザラ様に見ていただくために。

 魔法も完全に使えなくなるわけではなく、いざという時は人助けもできるし、治療魔法も使える。


「ザラ様、このピアスは取れませんか?」

「はい。私にしか取ることができません。私は仕事をしてますから、なにか少しでも異変があったら声をかけてください」


 そう言うと、ザラ様は自席に戻り、山になっている書類に再び目を通し始めた。


 ふぅ……身構えていた分、めちゃくちゃホッとする。少し不安だったけど、何事もなく終わりそうだ。



 ……

 ……

 ヒマだ。

 何もすることがなく、ただ座っているだけって(しかも近くにお偉方がいて!)結構な拷問だ……

 

 ああ、こういう時、前世だったらスマホ、ゲーム……せめて漫画で時間が潰せるのになぁ……いや、いくら前世でも、お偉方の前でゲームや漫画……はさすがに無理か。


 私は前世で好きだったものに思いを馳せる。


 ああ、漫画読みたい、ゲームしたい、カップ麺食べたいぃぃ!!


 この世界も悪くないけど、スマホやゲームの記憶がある私にはちょっと退屈。


 そう……


 

 何を隠そう私は前世の記憶を持っている。





お読みいただきありがとうございます。


カップ麺、たまに食べたくなります。












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