王子に興味がありませんでした……なんだかショックな気がします
王子2人が魔道士なのは、この国の者ならば誰もが知っている事実……
「えっと……クラリス嬢も魔法が発現したら使えますよ……」
「そうですね。でも、私、発現する気配、全くありませんのよ」
俺の身分を知っているかどうかの言及は避け、クラリスの魔力の話をすると、クスクスおかしそうに笑いながら「そういえば……」と俺の顔を覗き込む。
「あの……お名前、伺ってもよろしいですか?」
やっぱり、俺が王子って気がついてないのかぁぁ!!
今日のお茶会で俺を見てないのか? そんなはずは……主催者側の王子だぞ?
うそ、だろ……
「ああ、失礼、アル……です」
なんだか王子と名乗るのも照れるというか……クラリスには身分関係なく接して欲しいというか……そんな不思議な気持ちになり、兄上が俺を呼ぶ時の名を答える。
嘘は言ってない。嘘は。
「アル様ですね、アル様もこちらのお茶会に招待されて?」
「まぁ、そんなとこ……かな」
本当に気づいてないのか……? どこかの貴族子息と思われているのだろうか。
「お茶会で王子と会いましたか?」
「ウィリアム様にはご挨拶をさせていただきましたわ。優しそうで素敵な王子様でした」
うん、まぁ、兄上が主催者だからな。ま、そうだよな。うん、そうか……兄上には挨拶にいったのか……うん、まぁ、そう……だよなぁ……兄上のところには行くよな……
クラリスは「ウィリアム様は私にもお声掛けしてくださって……」と楽しそうに兄上の事を語り続けた。俺は複雑な気分になる……なんだろう、この感情。
「王子は2人いたはずですが……」
兄上の事を楽しそうに話しているのが、なんとなく面白くなくて、思わず言ってしまった。
「アルベルト様は遠くから拝見いたしましたわ。きれいなご令嬢達に囲まれて……とてもおモテになってました。本当にすごいです」
「君はその……王子のところへは行かなかった?」
「ええ。私、興味ありませんもの」
……
……
なんだろう……この気持ち。
いや、別にいいよ? 令嬢に囲まれるのもうっとおしいと思っていたし、みんなが俺に興味があるとも、もちろん思っちゃいない。
でも……
「アル様?」
初めての感情に戸惑い、口を開かない俺を心配したのか、再び顔を覗き込まれ……
……近いぞ、顔。
「まあ、第1王子は第2王子より優秀だからな」
顔の近さに困惑しているのがばれないよう、なにか話題をと、深く考えずに口走ってしまった。
兄上は本当に優秀なので、俺は何も気にしちゃいないが。
「アル様、そのようにおっしゃってはいけません。私が興味がないのは王家との結婚です。話によるとアルベルト様もとても優秀なお方ですよ」
クラリスはキッパリと諭すように言いながら、俺の目を真っ直ぐ見た。
思いがけず、自分を褒められた気恥ずかしさから、つい自分を貶めてしまう。
「優秀……といっても、次期国王は第1王子だし。第2王子はもしもの時のスペアだし……」
心の声が出てしまったらしい。
誰にも話したことない本音を口にしてしまい、胸にチクリと痛みを感じる。
「アル様、そんな、おっしゃりようひどいですわ!」
クラリスは顔を真っ赤にして怒った。
それはもう、まるで自分のことのように……
怒られてる……のに俺は心にぼんやり暖かい火が灯ったような感覚になり、嬉しいという感情が込み上げる。
「口がすぎたな。すまない。でも、君はアルベルト王子と話した事もないのだろう?」
「そうですが……でも、アルベルト様の人生の主役はアルベルト様だけです。誰かのスペアなんて事はありえません」
なんだ、やばい泣きそうだぞ……
スペアだっていいじゃないか……と自分に言い聞かせていたけど。
俺はスペアじゃない。
本当は、誰かに断言して欲しかったのかもしれない。
「……そう……だな」
俺が小さくつぶやくと、クラリスは「もちろんですわ!」とお日様のように明るく笑った。
その笑顔に、今、俺がどれだけ救われているか、君は、一生、気がつかないだろう。
「……アル様? 大丈夫ですか!? 大変です! ひゃーどうしたんですか?」
クラリスは慌てて俺にハンカチを差し出した。
ハンカチ? なぜ?
……気がつくと俺は泣いていた。
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