男心をまったくわかってもらえませんでした……あの2人は本気でヤバい人物です
「アルベルト様?」
さっきの出来事を思い出し、仏頂面になっていたであろう俺を男心をまったく……本当にまっーーたくわかってないクラリスは更に覗き込む。
男に気をつけろ……って言ったそばからこれだ。
クラリス! 気をつけるのはそういうトコだよ!!
言ってやりたいが、首を傾げているクラリスがかわいくて……言えない。
「熱、あります? 顔が赤いですよ?」
クラリスが俺の額に手のひらを当て「熱あるのかしら」と小声で言っている。
だから! 気をつけるのはそういうトコだよ!!
言ってやりたいが、クラリスの柔らかい手に緊張して……言えない。
なんか、俺……情けねー
少し冷静になると、襲ってくる羞恥心の嵐。
あんな感情的になるなんて……
俺、こんなにも嫉妬深かったんだな。
でも……
「ん~、熱はないかな?」と首を傾げているクラリスを見て、思う。
あの2人はやばい……本当にやばい。
2人とも本気の目をしていた。
鉄壁のブライトン兄弟と異名を持つ……剣のエドワード、魔法のザラ。
我が国の攻防を担うツートップだ。
エドワード・ブライトン。次期王宮騎士団長との呼び声が高い、最強の騎士。
ザラ・ブライトン。我が国、全魔道士の頂点に立つ、俺の師でもある王宮魔道士長。別名、悪魔。
よりによって、なんであの2人なんだ。
頭を撫でるとか……ちくしょー。
ホント、なんなんだよ、あいつら。
「ん、熱はないようですね。アルベルト様。きっと、お疲れなんですね」
ああ、疲れてるよ、誰かさんのせいでな。
俺の苦悩も知らずに、かわいい笑顔を見せるクラリスに、つい心の中でぼやいてしまう。
「ねぇ? アルベルト様、最近、眠れないっておっしゃってたし、この中庭で少し休みません?」
クラリスに提案され、やっと周囲を見渡した。
怒りに任せてクラリスを連れ出し、中庭まできたのか、俺は。
「覚えてますか? アルベルト様とお会いしたのはここでしたわね」
クラリスは当時を思い出したのか、ふふっと笑う。
俺の胸がキュッとする。
覚えてるさ。忘れるもんか……ここから始まった。
愛しさも、苦しさも、喜びも、辛さも……全てここから始まった。
俺が恋に落ちた場所。忘れるものか。
クラリスと出会ったあの日の事を……
あの日。
暖かい日差しを存分に浴び、賑やかに植物達が芽吹き始める季節に、王宮で大きなお茶会が開催された。
主催は第1王子でもある兄上だったが、俺も招待側として笑顔を絶やさず、王子としての役目をこなし、ひっきりなしに挨拶にくる令嬢に慣れない笑顔を振りまいていた。
「気になる令嬢は?」
「一緒にお茶でも」
「ぜひ我が家へ」
ああああ!
もう、本当にうんざりだ。
恋とか結婚とか、俺にはまだわからないし、めんどくさい。ほっといてくれぇぇぇぇ。
心の叫びはおくびにも出さず、にこやかな王子スマイルで当たり障りない返事をする…………王子だからな。
俺に話しかけにくる令嬢達も途切れ、一瞬、俺の周りから人がいなくなった。
今まで気持ちを張り詰めていた俺は、ふぅと息を吐き、近くにあった窓から外を見る。
明るい陽の光に青空の広がり……気持ち良さそうだなぁ。
澄んだ空をぼんやり眺めていると、急に愛想笑いをしている自分に嫌気が差し、青空に誘われたかのように、ふらっとお茶会を抜け出してしまった。
王子としての責任は果たしたし。やるべきことはやったし。兄上がいるし。
大丈夫だろう……たぶん。
お茶会を抜け出した俺はお気に入りの場所である中庭にむかう。
嫌なことがあった時や気分が乗らない時に中庭でぼーっとするのだ。
嫌なこと……俺はちょっと気分が沈んだ。
次期国王は第1王子の兄上だ。
兄上は優秀だし、俺は兄上を尊敬している。
だが、俺も次期国王としての教育が施される。なぜなら、王位継承権第二位である俺は「もしも」の時に備えなくてはならないから。
兄上は身体が弱いわけではないし、魔道士ランクもSランク。剣だって強い。
「もしも」ってなんだ?
頭ではわかっている。
「もしも」兄上に不幸があった時でも、王家は揺らぐわけにはいかない。
それが国民を守る王族の義務だ。その為には、最悪の事態も想定しなくてはならない。
わかっている。わかっているけど……
俺は「もしも」の時のスペアなのか!?
そんな思考に襲われる時がある。
そういう時は中庭に行き、芝生に寝転んで空を見上げる。
スペアだっていいじゃないか。それで国が安泰なら……と自分に言い聞かせながら。
中庭には人がまったくいなかった。
みんな、お茶会で忙しいのだろう。
春、真っ盛り。
中庭はきれいに手入れをされ、色とりどりの花が咲きほこっていた。青い空、緑の芝生によく映え、目を楽しませてくれる。
周りからは見えないであろう木の陰でゴロンと寝転んだ。
今日は王子スマイルを振りまいて、疲れたな……
ああ……澄んだ空が……気持ちい……
「うおっっっっ!!」
ウトウトしかけていた時、上から「キャッ」という声と同時に、ドサッと俺の腹の上に何かが落ちてきたような衝撃を受けた。
思わず、うめき声が出てしまい、目を開けると、俺の体に令嬢らしき少女がうつ伏せで倒れてる。
……え?
……え?
……令嬢が降ってきた?
……ええっ!?
お読みいただきありがとうございます。
今回から少し過去編となります。
お付き合いいただけたら、幸いです。
「親方ーそ、空から女の子が」と書きたくなりました。
状況は全く違いますが。




