第82話:ルシファー爆笑の一枚
今日は、守護神だけじゃなく、土地神にも集まってもらった。
大きめの会議室で状況を確認するミーティングを開いている。
「オレ、またも覚えてないので、この黙示録が生まれる前から、映像を確認していきますね」
モニターには、ディーテさんとトールの力で、再度、魅了状態に陥って眠りについたオレの表情が、ドアップでが映されている。
なんとも幸せそうな寝顔だ...
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「兄さん、出番だよ」
「はいはいっと」
ルシファーの力によって、ネガティブな感情エネルギーが、さらに吸収されていく。
記憶を取り戻したことで蘇ったマイナス感情を緩和して、オレが落ち着きを取り戻せるようにしてくれたんだろう。
その効果は、すぐに出た。オレの表情が和らいでいくのがわかる。
「フフフ。トール、そろそろかしらね?」
「了解じゃん!」
トールがハンマーで、今度は優しくオレの頭を叩き、魅力状態の固定化を解除する。その後ディーテさんが、オレを魅了から解き放ってくれた。
しかしまさか膝枕だったとは…… 道理で幸せそうな表情である。
まったくもって覚えてない。残念すぎる...
「大丈夫かい?」
ポセイドンの声かけで目覚めたオレは、穏やかな笑顔を見せている。膝枕効果だろうな…
ボンヤリ立ち上がったオレに、不思議なことが起こった。
神体がフワリと空中に浮かんだのである。
「し…ん……、……ち発動」
ボソリと神権名を唱えて発動したことがわかる。
すると魔装状態が解除され、青白く輝くオーラが周囲に漂い始めた。
どうやら今回は、平穏な状態で神権の発動に至ったようだ。覚えてないけど…
しかし、身構えたのは、ミカエルとルシファーだ。また暴走状態に陥るのではないかと危惧してのことだろう。魔装状態が解けたこともあり、ネガティブな感情への耐性が低いことも心配してくれたんだろうな。
そして師匠は、いつの間にかイブ姉さんの前に移動している。時を戻す事態になるかもしれないと判断したんだろう。
オレは空中で、超高速で何かを呟きながら、両手で顔を覆う仕草をとった。
どこからか登場した茶色の書物が空中に浮かび上がり、オレの両手がそれを捉えた瞬間、世界はまばゆい光に包まれた。
ふわりと着地したオレに、ルシファーが歩み寄る。
「カイト。お前ヤベーぞ」
「ん?」
「マジで持ってやがったな」
「何を?」
「封印された力だよ…… クッソうける!! やるじゃねぇか」
あー腹痛いってゴロゴロ転がるルシファーを、不謹慎だと言ってミカエルが遠くに転がしていく…
大悪魔王転がし、 なんてシュールな光景なんだ… あ、川に落とされた。
「やっぱり生得的神権…… オレ、持ってました。予知です」
うつろな表情で答える自分を見て、驚く。
本当にこの間の記憶がない…
「予知は、この本の中に……」
茶色い書物をポセイドンに差し出した瞬間、オレは再び意識を失ったようだ。
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「はい。今回はここまででーす」
「えー、バトルんとこ、今日も見ようじゃん!」
「さすがトールっち! 同意見!」
「シヴァっちこそさすが!」
すかさずハイタッチしている、じゃんじゃんちっちペアはさておいて、さっさと会議を進めようとしたのに… アマテラやツクヨミさん、アポロンさんにオロチ君まで、ブーイングとは…
「じゃあ映しておくんで、見といてくださーい。残りのメンバーは、いったん休憩で」
サササっとお茶やお菓子が並べられたワゴンが登場する。さすがロココさん…! 臨機応変、つねに準備万端だ。
トールを除く守護神とオレは、目の前でロココさんが作ってくれるクレープを堪能しながら、予知の神権について話し合うことにした。
「気絶とはまた、やっかいな」
まぁ元気になってよかったなと、師匠からグリグリと頭を撫でられる。
「予知、おそらく禁断型の生得的神権を神器のサポートなしで発動したからかな?」
そう言った後クレープを口に含んだ瞬間、一瞬両眼を見開いたのは、ポセイドンさんだ。味や食感がヒットだったに違いない…
「発動という類じゃないのかもね。フフ」
「トールが怒ると勝手に雷が放出されるのと同じかしらね?」
「あるいは気絶するところまでがセットの神権かもね。フフフ」
「だとすると、自動起動でコントロール不可…… なんとも破天荒な神権ね」
ディーテさんとイブ姉さんの推測、あたってるような気がする。
「予知の神権を使ってみようとしたんですけど、発動しないんですよね」
そうなのだ。
予知は、自分の意思で発動できない神権らしい。ロココさんも初めてのことでよくわからないとのことだ。
「なんらかの条件があるのかもしれないわね」
「神威の状態か、役目を終えたため発動待機状態になってるか…」
「フフフ。繰り返し予知できないなら、頼りになるのは黙示録のみね」
イブ姉さん、ポセイドンさん、師匠にディーテさんの視線が、茶色い書物に向けられる。
「実はこの黙示録なんですけど。読めないんです…」
「封印でもされてるの?」
「いや、違います」
「じゃあ未知の言語とかかい?」
「違います」
「フフ。暗号化かしら?」
「いや、、、あの、字が汚くて……」
パラパラめくって見せた後、ポセイドンがまたも両眼を見開いた。
心が読めなくてもわかる。絶句ってことだろう…
「さあイブ、あっちの紅茶が美味しそうだよ」
「そうね。いただこうかしら」
何事もなかったかのように、二人は席を離れていった。
さすが、大人な対応である。
気がつけば師匠も席を離れていた。
さすが達人、ここで気配を感じさずに移動とは…… 聞かなかったことにしてくれるんだろうな。
「……ロココさん?」
「それはさすがに、カイト様でないと……」
「ですよね。そんな便利グッズないですよね」
「お手伝いします。一緒にがんばりましょう」
「ありがと!」
「フフフ。予知で見た映像は覚えてるの?」
「はい。断片的ではありますが」
「なら、それをヒントに読み解くしかないわね」
「はい。映像は断片的で不確かな情報なので、黙示録の解読と重ねて、精度の高い情報になるようにします」
「楽しみにしてるわね。フフ」
ディーテさんも、どうやら紅茶タイムらしい。
「いい?」
「はい、どうぞ」
タイミングを見計らっていたのか、誰もいなくなった席に、先輩女神が腰掛けた。相変わらずお美しい...
「これ、どうぞ。手作りのジャムよ」
「ありがとうございます!」
「あの星のフルーツで作ったの。解析系の神権を手に入れたときいてね」
「おぉぉぉ! 星の食べ物、初めてです」
瓶詰されたジャムを見ると、頭のなかに味の予想情報が… 梅干を見ると涎が出る的な感じに近い感覚だ。
「解析系の神権は、基本的にオート発動です」
すっと、プレーンのクレープを差し出してくれるロココさん。ジャムを添えて食べられるように、小さなスプーンまで添えてくれている。さすがです…!
「いただきます!」
ジャムをたっぷり縫って、ムシャリとかぶり付くと…… 濃厚な甘みのなかに酸味が加わったジャムは、その少し荒い実の部分を噛み砕くと、トドメと言わんばかりに薔薇のような香りを解放した…
「うまいです!!」
「そう。よかったわ」
これは、しばらくヘビロテにしたい。チラッとロココさんを見ると、ワゴンの上にみたことがないフルーツがどっさり。先輩が言うには、これらが材料とのこと。さすがです! あとは頼んだよロココさん…!
「あ、二人には伝えておかないと」
「記憶のことね?」
「はい!思い出しました…… って言ってもまだ、記憶の回路が繋がってないのか、思い出せないことも多いんですけどね。おいおい、全部思い出すんじゃないでしょうか」
「そう。良かったわね」
「はい! ありがとうございます」
ニシシっと笑うと、先輩はクスクスっと微笑んでくれた。
それから、本当に大丈夫なのと、心配そうに微笑んだ。
きっと、記憶を取り戻したことでショックを受けていないか、心配してくれているんだろうな。
「オレは、過去のことを思い出して苦しんだわけじゃなかった可能性大です。オレは、こっちに神として転生した瞬間、未来の景色を予知で疑似体験してパニックになったか、疑似体験で苦しんだ可能性が高いと思います」
転生した直後のこと、そして魔装状態で暴走した時のことは、よくは覚えてない。
でも、予知の神権を発動して手に入れた、断片的に覚えている未来の状況、そして疑似体験によって感じた不安や恐怖を思うと、こう考える方がしっくりくる。
実際どういった理由で前世を終えたのか、記憶が蘇りつつあるからか、なんとなく察しはついてきた。それは確かに恐怖を伴うものだったとは思うけれど…… 目の前の人たちを守りたいって気持ちと、多くの人からの愛を感じるって感覚の方が、強いのだ。
「カイトの予想が当たってたわけね」
「はい!」
今回、記憶を取り戻すことは手段だった。
生得的な神権を、オレが持っているかどうか。
もしあるなら、それが予知関係のものかどうか...
仮に予知関係なら、それが恐ろしい未来の到来を示す内容かどうか...
今回の目的は、この可能性を確認することにあったんだ。
そして結果的に、予想が的中していたわけだ。本当、確認して良かった。
「あとオレ、転生前の名前を思い出しました」
ロココさんも、興味深そうである。
ビクっと背中が揺れたのを、見逃すオレではない。
「海斗です。そして、あだ名がカイトでした。ゲームで使ってた名前も、カイトだったんです。すごい奇跡ですよね。お二人のネーミングセンスに脱帽!」
始めてロココさんから名づけられたとき、道理でしっくりきたわけだ。
「これからも、カイトって呼んで下さいね」
先輩女神は、嬉しそうにほほ笑んで頷いてくれた。
一方、ロココさんはと言うと…… 無言で、ゴロゴロと球体モードで去っていった。
きっとまた、どこかでひっそり涙をこぼすんだろうな。
「さて。そろそろ会議を再開しようかなっと」
「予知の中身?」
「はい。オレが見た未来の状況、覚えているところだけでも伝えておこうかと」
「そうね」
「予知で得た情報を生かして、最悪の未来を避けるためにどうするか。ちょっと時間をかけて考えていきます。皆さんに協力してもらいながら!」
きっと、このために使う神権なんだろうと思う。
イブ姉さんの考えに基づけば、未来の出来事は、意識的、あるいは無意識的に、そうなるように未来を創っていく者が存在しているから、生じるのである。
そうならないように未来を創っていく努力をすることで、最悪の未来を避けられると信じたい。
オレは、初心者とはいえ神様なのだから。できることはたくさんあるはずなんだ。
頼もしい家族や友も、支えてくれるし!
今日もありがとうございました!
元気を頂いております!




