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マッチとポンプで異世界神様業  作者: ゆうと
第Ⅳ部:天地創造編
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第76話:大天使と大悪魔王の一枚

 



「ウリウル!」


 トテトテと全力ダッシュでターニャが向かう先に、大天使ウリエルの笑顔。 

 これはもう、新たなこの世界の法則なんじゃないかと思うくらいに、再現性の高いイベントになっている。




「ターニャ。元気だったかい?」

「あい!!」


 お決まりの大天使による抱擁を経て、やっぱり肩車に滑らかに移行した。



「今日もケルベロスと遊んだのかい?」

「ケルケロシュ!」

「そっか。よかったね」

「あい!」


 微笑ましい二人の上空から、愛称ラファこと、同じく大天使の美少年ラファエルが舞い降りてきた。フワフワ浮かんでターニャの周囲を旋回したあと、楽しそうにハイタッチを交わしている。


 そして美しい青の髪が神秘的に揺れる大天使ガブリエルも、姿を現した。同じくターニャとあいさつを交わし、健やかな成長を褒め称えながら、けも耳頭をナデナデしてくれている。


 最後に、大天使ミカエル登場である。

 正義側のラスボスと言ったら怒られるだろうか。でも、そんな感じの存在感である。


 真っ赤な髪、そして大きな赤い瞳、そして、こめかみ辺りに浮かぶ力の象徴であり制約の証である剣をモチーフとした小さな青いタトゥー。幼体モードとはいえ、正義の体現者の風格は隠しきれないものがある。



「カイト、そしてターニャ。元気だったかい?」

「あい!」

「うん!ミカエルも元気そうだね」

「おかげ様でね」


 神々しい気配からも、彼の神威が高まっていることがわかる。それでも、まだまだ全快ではないのかもしれないけど…




「兄さんも元気そうだ」


 チラリとルシファーを見たミカエルは、少しだけ嬉しそうに笑った。



「ウルセーぞ。自分の心配でもしとけよ」


 いつもより更に深いルビー色に変色した瞳を見開いて、大悪魔王がクククククと笑った。



「今のお前なら、秒殺だな。大天使様が聞いて呆れるぜ」

「なら、試してみるかい?」

「泣いて謝りたいなら、やってやるけどな?」


 ミカエルとルシファーの双方から、神威がオーラ状に揺らめき立つ。


 太陽のように燃え輝く深紅のオーラと、ブラックダイヤのような漆黒のオーラが、空中でぶつかり合い、地鳴りがし始める…




「ターニャ、一緒にいようね。ミカエルとルシファーがまたバトルするみたいだから」

「ミカ? ルシルシ? 」

「そうだよ。あ、始まった」


 ルシファーの住まい、氷の監獄に設けられている巨大な王室で、今日も熱い兄弟げんかが展開され始めた。



「我が名はミカエル。炎の元素を統べて汝をはかる天秤なり……」


 ミカエルが手を振り下ろすと、熱線が迸る。レーザービームのような高熱の光がルシファーに衝撃波を伴いながら襲い掛かる。




「我が名はルシファー。世界の半刻を司る(よい)の明星なり……」


 大悪魔王の眼前で、熱線が闇に吸い込まれて消える。

 ブラックホールのような闇の渦が揺らめいて、静かにミカエルの攻撃を飲み込んでいったのだ。



「大天使さまの光、ゴチでーす」


 ニヤニヤ挑発するルシファー。実に大人げない兄である。



「この程度の力なら、泣いて謝る前に気絶すんじゃねぇの?」

「うるさい」

「まぁそもそも大天使ミカエルなんて、この程度か」

「……うるさい」

「泣いて謝るなら意識のある今のうちだぞー」


 ここぞとばかりに、ミカエルを煽るルシファー。

 ブルブル震えて怒りを堪えていたミカエルが唐突に、慈愛に満ちた笑顔を見せる。




「天装降臨!」


 マジか!? 

 大天使も、天装降臨するのか!

 始めて見るけど… 超絶カッコいいじゃんミカエル!!


 目立った変化として、まず羽だ。

 3対6枚となった羽が深紅の神々しい炎の形状に変化している。それから、ミカエルの装いがカッコよくなってる。ローブ姿から、プラチナに輝く胸当てや籠手などをともなった戦闘服になっているのだ。


 そして…… 天使の輪…!

 虹色に光り輝く頭上の輪の存在感と美しさよ…… 涙がでそうなくらいカッコいい…!


 天使の輪や羽から放たれているオーラが、空気中で深紅の砂金のように煌めき、ミカエルの神々しさを際立たせている。





「…… やべ。ブチ切れやがった」


「出でよ万物の火」

「本気かお前!?」


 後方に飛び去って距離をとったルシファーの行動、その正しさがすぐに理解できた。ルシファーの立っていた空間が熱流で満たされ、ちょっとしたミニ太陽が登場したのだ。


 ミニ太陽、たいへん美しい。眩く、でも優しい温もりを感じさせる光が、見ているものを吸い寄せていくような魅力がある。



「カイト、気を付けて。念のためあの太陽を見すぎないで」

「なんで?」


 ターニャの瞳を大天使の羽で覆い隠しながら、ウリエルが防御壁を展開している。



「あの太陽に魅入られた者は、アレに近づきたいと願い…… いつの間にか太陽を抱き燃え尽きるという」

「…… 怖っ」


「でもあれ、浄化の太陽なんだよ?」

「そうなの?」


 ラファが得意げに教えてくれる。どうやら、ダークサイドに落ちている者ほど、あの太陽に惹かれるらしい。


 つまり、ルシファーの天敵ってことになるじゃないか…




「我が名はガブリエル。神の意を持ちて水の元素を統べる我が命に応じよ……」


 ガブリエルによって、ミカエルとルシファーの頭上から、大量の水が注ぎこまれる。

 頭を冷やしなさいと告げられて、二人はチラッとガブリエルの表情を確認した後…… すいませんと謝罪モードに移行した。


 怒らせてはいけない人を怒らせかけていることに、二人は気が付いたのだろう。



 遠くから見つめてるだけでも、よくわかる。

 二人の神威が小さくなって、謝罪の言葉を連発している様子が…






「さて、今回はどうしたんだい?」


 ウリエルが三人を見えないことにして、集まった理由を確認しだした。

 さすが大天使、大人な対応である。




「急に呼び出してごめんね」


 この流れに乗って、ターニャを抱っこしたウリエルとラファエルを相手に、先に会議を始めてしまおう。ミカエルとルシファー、そしてガブリエルはただいま、とても忙しそうなので…




「天使と悪魔の皆さんが信仰心を集めるための仕組みを考えてみたんだ」

「仕組み?」

「うん」


 ターニャがスヤスヤと寝息を立て始めた。激しいバトルを見たし、今日もいっぱい遊んだし、色々と疲れたんだろうな。神体だから疲れないはずではあるけど…



「仕組みってどんなの? ラファ興味ある!」


 大きな瞳と、屈託のない笑顔。それに自らを愛称で呼んでもしっくりきてしまう愛嬌さ。


 ぐうかわとは、こういう生き物のことを言うんですよガブリエルさん。



「ザックリ言うと、大天使は星の住民のポジティブな感情から、大悪魔王はネガティブな感情から信仰心を獲得してるんだよね?」

「まぁ、そうだね」


「感謝や幸福、正義、愛情といった自他を祝福する感情は天使の糧」


 ラファが楽しそうに教えてくれる。 



「怒りや苦しみ、悲しみや後悔といった自他との関わりを閉ざす感情は…… 悪魔の好物」


 ウリエルの補足に、ラファが大きく頷いた。



「諦め、つまり停滞の感情は、天使も悪魔も食わねぇぞ」

「あ、お帰りルシファー」

「お恥ずかしいところをお見せしました」

「ミカエル、あれはルシファーが悪いよ」

「まだまだ未熟だよね俺も」


 ミカエルはタトゥーをひとさし指でなぞりながら、苦笑を浮かべた。 




「それよりもミカエルの天装降臨、超絶カッコ良すぎだった!」


 天使さんについては、オレの敵か味方かを、つまりイケメンかどうかを問題視していない。あまり気にならないのだ。

 一緒にいてわかってきたけど、特に大天使たちは、ファンタジーやゲームなんかに出てくるレアキャラ的憧れが勝る。二次元での憧れが具現化した存在だと、カッコ良さや美しさ、可愛さにテンションが上がるくらいだ。

 



「そうかい?」

「うん!」


 スマホで撮った写真を見せると、ミカエルは恥ずかしそうに、でも面白そうに画面をのぞき込んできた。

 天装降臨状態の自分を写真に撮られることなんてなかっただろうし、興味持ったんだろうな。


 ちなみにカードゲームとかだったらこの写真、絶対にSSSレートのレアものである。そう思うだけで、テンション爆上がりだ! 大切に保管しておこう。




「これでもまだまだ不完全なんだ」

「これで?」

「あぁ」


 ミカエルが苦笑しながら教えてくれる。装備品もオーラの状態も、まだまだとのこと。

 それに、成体モードで天装降臨ができるほど回復していないとのこと。それはそれで、機会があったらぜひ見たいお姿だ。



 ひょっとしたら、ウリエルやガブリエル、ラファエルも天装降臨できるのかもしれない。

 可能ならぜひ、拝見したい。何なら四名揃って撮影させて頂きたい!もう大天使は箱推し決定!!


 大天使たちが天装降臨するきっかけをつくってくれそうなルシファーのイタズラや挑発に、今後ますます期待大だ。



 ポンッと肩を叩いて、大悪魔王にエールを送っておこう。


「応援してるからな。頑張れルシファー!」

「何だよ?いや、何をだよ??」

「なんでもない。こっちの話!」



 ミカエルや大天使の皆さんの天装降臨が見れる可能性が高まると思うと、信仰心集めにも、ますます気合がはいるというものだ。




「で、仕組みとはどのようなものなの?」


 話の輪の中に、青の大天使が加わってくれた。ガブリエルの気配にルシファーがビクっとしたのを、ニヤニヤ見つめてやる。



「ガブリエル、これを見てくれる?」


 大きめのタブレット端末に、仕組みのモデル図を示した。



「こんな感じだと、上手くいきそうかなぁって」

「…… なるほど」


 ミカエルが唸り、ラファが何度も頷いて同意してくれる。



「ここをこうした方がよくねぇか?」

「なるほど。さすが大悪魔王」

「あとは、こういった場所も必要だろうか?」

「ウリエル、それ採用で!」


 皆の意見をタブレットに書きこみながら、大天使と大悪魔王の信仰心集めについて、細部を具体化していく。


 この案を持ち帰って、ロココさんと検討してみよう。


最後まで読んで下さり、ありがとうございました!!

ブクマしてくださった方も、ありがとうございました。

遊びに来てくださる皆様から執筆のエネルギーを頂いております。週末もぼちぼち頑張ります!


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