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マッチとポンプで異世界神様業  作者: ゆうと
第Ⅳ部:天地創造編
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第75話:ケルベロスさんたちとの一枚

 


 ケルベロス。

 3つの首を持つ地獄の番犬さんである。ワゴン車くらいの大きさの…


 ターニャ、獣王神なだけあって獣系の生き物が大好きなのだ。ケルベロスさんを生き物って表現していいのかは不明だけど。




「ケロケロシュ!」


 ルシファーの腕から飛び降りて、ケルベロスさんのところにトテトテ歩いていく。

 大きな口を開けたケルベロスがターニャの服をかじり、そのまま背中に乗っけてくれる。



 楽しそうに手を降るターニャをパシャパシャ撮影すると、隣で大悪魔王様も嬉しそうにパシャパシャし始めた。親戚のおじさんか…




 そうそう。

 初めてこの乗馬ならぬ乗犬シーンを見たときは、全力ダッシュしたものである。パクリと飲み込まれると思ったからだ…


 そんな親の心子知らずで、ターニャはキャイキャイしてたけども。心臓に悪いったらこの上なかった。子育てはどうやら、心臓の強さを鍛えてくれるようだ。もちろん、神体だから心臓はないんだけどね…




「お前ら、ターニャを乗っけて鬼ごっこしてきてくれるか?」


 ルシファーの声掛けで、百匹ほどのケルベロスが集まってきた。

 鬼役、つまりターニャの乗ったケルベロスから離れるため、一斉に駆け出していく。



「2秒で一匹も見えなくなった件…… 」


 ターニャを乗せた鬼役のケルベロスさんは、ちょっと青い毛色の珍しい個体だ。リーダー格なのかもしれない。



「あい!」


 楽しそうに尻尾を振りながら、ターニャの掛け声とともに視界の外に消えていった。ターニャが戻ってくるまで、あと2時間くらいはかかるだろう。




「ルシファー」

「なんだよ」

「ひまー」

「お前それマジで言ってんのか?」

「うん」

 


「…… その辺に落ちてるケルベロスの糞でも捏ねて人形でも作れよ」

「や、汚いものに触るとか無理なんで」

「ならまた話でもすっか」

「…… いいけど。何の話題?」

「そうだな。天使と悪魔についてなんてどうだ?」

「天使がいい奴、悪魔が残念な奴?」

「残念ってお前…… 言い方があるだろもっと」


 ブツブツ文句を言いながら、ルシファーがルビー色のベンチを指さした。

 地獄の血の池を固めたような不思議な形状のこのベンチ。一見硬そうだけど、座るとフワフワなのだ。


 何回か利用したことがあるけど、寝転がろうとすると座椅子のように背もたれが下がる。しかも自動でだ。これも我が社に欲しい逸品である。



 ターニャが眷属さんたちと遊んでいる間、こうしてルシファーと過ごすことが、これまでも何回かあった。スマホゲームしたり、昼寝したり、今日みたいに何か話をしたり… それなりに楽しいひとときなのだ。



 

「天使と悪魔って、どういう存在なの?」


 ロココさんが水筒につめてくれてたブラッディオレンジジュースを注いで、ルシファーに手渡す。

 密かに彼のお気に入りなことは、リサーチ済みである。


 しっかりとこれを持たせてくれてるあたり、さすがロココさんだ。遠くにいてもロココさんの有能さに支えられている感じがして、心強い。




「天使は陽、悪魔が陰。それが俺様達の関係なんだよ」

「関係ってところ、もっとわかりやすく教えて」

「ったく。仕方ねぇな」

「ありがと」



「今お前は、湖の上に浮かんでる。水中側が陰、空側が陽だとするぜ?」

「うん......」


「水中で生きるにも空気がいるな?」

「生命体ならね」

「なら、空気中で生きるのに水は?」

「必要。生きるのに欠かせない」


 ルシファーの話の行き先が、わかったような気がする。



「自分側の世界で生きるにも、真逆の相手側の要素が必要ってこと?」

「そうさ。悪がないと善が判断できねぇ。善がないと悪が生まれねぇのさ」

「なるほど。そういうもんか...」


「大天使のバカどもは、このあたりがまだ理解できてねぇ。両者は表裏一体なんだっつーの」


 クククククと楽しそうに笑った大悪魔王は、なぜだか優しそうな表情に見える。

 なんだかんだで、大天使のことを思っているんだろうな...




「天使と悪魔って、どこから来たの?」


「悲しみや苦しみ、愛や喜びを理解しようとして、天使や悪魔の存在が信じられるようになって……俺様達が生まれたのさ。多分な」


 なるほど。

 人は自分のことを理解しようとして、天使や悪魔の存在を見出したのか。



 それにしても、多分って、適当な。

 自分たちのことなのに…


 まぁでも、そんなもんか。

 人類もそうだ。人の起源を街頭インタビューで聞かれたら「知ってる知ってる!!人って猿だったんでしょ?ウケる!」って、多くの人は回答するだろう。

 でも、人が猿からどのように進化して生まれたかは、人間自身にも、まだ完全にはわかってない。



「悪魔は星の住民どもの悪意…… 苦痛、悲しみや妬みなんかのマイナス感情を理解しようとして生まれてきたと考えられてる」


 ルシファーが左手で天を指さすと、そこに悪魔型の星座が登場する。



「天使は、星の住民どもの善意…… 愛や幸福、秩序遵守なんかのプラス感情を理解しようとして生まれてきたらしいぜ」


 今度は右手で点を指さすと、天使型の星座が登場する。





「じゃあ、堕天って何なの?」

「それ俺様に聞いちゃう?」

「いや、一番正確な情報もってそうだし。体験者語る…… 的な?」

「そうだけどな」


 天使型の星座が徐々に、悪魔型へと変化していく。



「陽から陰に落ちるってことだ」

「いや、全くわかんない……」

「俺様の場合は、悲しみや苦痛、妬みに狂うものを、そこから生じた悪魔たちを愛したんだよ」

「…… それって、心配だったから?」

「うるせーバーカ」


 心配性の大天使が、この世で孤独だったものたちを愛した結果、堕天したのか。


 やっぱりいい奴じゃん、この大悪魔王様。






「話題変わるけど、土地神なんかも同じ?」

「そうだな。多くの土地神は、自然現象から生まれてきたらしい。や、自然現象を理解しようとして生みだされてきたって言った方が正しいか。ポセイドンやトール、ディーテがそうだろ」


 トールは雷、ポセイドンは海。

 自分たちに理解できないこうした自然現象を、なんとか理解しようとして神と言う存在が創造された。


 このあたりは、オレの転生前の世界でも同じだったっけ。




「ディーテも自然現象なの?」

「朝焼けに夕焼け、虹、雨粒に降雪…… 絶えず変化する自然現象に見出された美の神だな」


 なるほど。

 それで美の女神は、いつも見た目が変化しているのか...




「整理してみていい?」

「ご勝手に」

「自分の外の世界を理解しようとして土地神が、自分の内部の世界、心身を理解しようとして天使と悪魔が生みだされた?」 


「さぁな。まぁ、いい線いってんじゃねぇの?」


 クククククと笑いながら、ルシファーは再び、空を指差した。

 そこには、とある問いが、星座のように描かれている。



「我々はどこから来たのか?…… 」

「単なる暇つぶしの問いだがな」


 どうやらルシファーは、これからも、ターニャ待ちのオレの暇つぶしに付き合ってくれるようだ。

 




「そう言えば、ラグナ師匠は? 超越者って何なの? 」

「あれは怪物だぞ。竜人でありながら、竜原種…… つまり竜やドラゴンをぶっ飛ばしまくった英雄さんだ」

「つまり超越者って……」

「原種を超越した者に与えられる証な。普通は無理だ。拳一つでドラゴンや龍を追い払うなんてな」

「ドラゴンをグーパンっすか…… さすが師匠」

「まぁとんでもねぇ話だ。竜人族を守り抜いた伝説の英雄、要するに究極のバトルマニアだな」


 マジありえねぇ星一番の大バカだよアイツと、ルシファーが豪快に笑った。

 大悪魔王的には、最大級の賛辞ってことだろうな。



「ハイエルフのイブさんのことも知ってる?」

「…… 多分、あいつが一番のバケモンだぞ? この世界に、とある基準をもたらした天才様だ」

「基準?」

「そうさ。お前らもいつもお世話になってるぜきっと」

「なんだよそれ…… 」


 ひとさし指を左右に振って、ニヤニヤ笑う。

 なんとも、もったいぶった仕草だ。



「秘密ってこと?」

「いや、今のが答えさ」

「今のが? 」

「チクタクチクタクってな」

「まさか、時?」

「そのまさかだ。時だよ。この星に時間って概念を、つまり誰にも平等な1秒、1分、1時間…って基準をもたらしたのはイブだ」

「……マジで?」


 だからあんなに、時間に厳しいのか…

 それにしても、どうやって時間という基準を生み出したんだろう。


 星の動きを観測して、一日を均等に分割したんだろうか...




「そろそろターニャが戻ってくるか」

「あ、ルシファー」

「なんだよ」


「今の話を聞いて、思いついたことがあるんだ」

「なんだ? また悪だくみか? 」

「なんだよ悪だくみって...」

「お前は、善と悪が表裏一体だってよくわかってやがる。だからマッチとポンプなんて思いつくし、躊躇なく実行できるんだよ。見込みあるぜお前」

「……悪魔に褒められても嬉しくない」

「ククク。そいつはどーも」


 ニヤニヤとまた、悪魔的にはご褒美ゼリフをゲットしていった。

 さすが抜かりない。



「で、思いついたってのは何だ?」

「信仰心集めだよ。天使と悪魔のね」


 社外取締役としてね。

 ぶっちゃけ社外取締役って何するのかよくわかってないけどね。

 提案くらいしてみてもいいんじゃないかな、多分。



「なら仕方ねぇ。あいつらを呼んでやるか」

「大天使たちを? どこに? 」

「俺様の根城、氷の監獄に」

「……やめとこうよ」

「はぁ? 超頑丈でちょっとくらいバトっても問題ないんだぜ?」

「その前提で部屋を強化する方がおかしいんだって」


 兄弟げんかは、他所でやっていただきたい…



「ミカエルが悪いんだろ?」

「ほぼ100でルシファーが悪い」

「あい!!」


 さすがターニャ。

 議論の答えが出ないことを察したかのような、神がかった絶妙なタイミングでのご帰還だ。


 ルシファーも、早速ターニャを抱っこしている。



「楽しかったか?」

「あい!」

「そーか。ターニャついてるな。今からウリエルが来るってよ!」

「ウリウル?」

「そうそう。よかったな」

「あい!!ウリウル!」


 まぁ、いっか。

 兄弟げんかでもなんでも、自由にしてもらおう。ルシファーの家だしね。

 


 それに実は、大天使と大悪魔王の超絶バトルを撮影した動画は、そこそこに人気コンテンツなのだ。今日も続編を撮ることにしよっと。






本日も読んで下さってありがとうございました!

ブクマも嬉しかったです!!

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