第35話:スマホあるある
発展的神権⑤のオーパーツ。
これを使って、人々の生活が豊かになるような、そして特に、かれらの知的成長を支えるダンジョン攻略に関する学びあいの組織(学校)に役立つようなアイテム開発に、連日、挑戦している。この組織、アカデメイアと呼ばれるようになった。
この時代、まだまだ紙は貴重なので、この神権を使ってノート類や鉛筆類を生産した。
ダンジョン攻略への参加報酬として、希望の里の人々全員に大量配布されるように設定してある。ロココ特性桜餅を添えてだ。
もう一つが、設計書である。
建物の設計書、水道や道路などのインフラに関する設計書、農業用の道具の設計書などを作成した。三階層ごとに登場するスフィンクスさんの知的問答に勝利した際の報酬として、これらの設計書のかけらを配っている。
攻略が進むにつれ、かけらが集まり、設計書の全体像やその用途が明らかとなるようにした。この設計書を読み解き、何をどうすればよいかを考える部門の人々が、アカデメイア(学校)に登場してきている。
こんな感じで、オーパーツの力を使って、ヒュムや獣人の努力を生み出し、それを支えたり、やる気を満たしたり、彼らの主体性を引き出したりするようなアイテムを提供したいと思っている。
あと、栄養面や衛生面では、まだまだ不安な点が多いため、これに資するアイテム等を提供している。
一つめの不安は、食料の保管である。
そこで、旧式の冷蔵庫や冷凍庫の設計図を配った。水の精霊や氷の精霊(雪ん子)たちの協力もあって、氷を安定的に量産できる状態にある。精霊さんたちの力で作った氷は、非常に溶けにくく、数か月は冷気が持つというから驚きである。
二つめの不安は、怪我や病気に対する理解である。
薬学、生体や免疫、公衆衛生等に関する知識が、圧倒的に不足している。怪我や病気については、魔法が解決策となった。治癒の魔法、解毒の魔法、診断の魔法、抵抗力向上の低級魔法をつくり、ダンジョンコアを通して、人々に配布した。その呪文を分析し、効果を高めるための研究が、アカデメイアで始まっている。
そして、これらの魔法の効果を封じて補完できるボール型のアイテムも作った。いざという時に誰でも使えるようにするためだ。このボールの原理も、いつの日か、アカデメイアの人々によって分析され、開発や改良が進むことを願っている。
「じゃあ結局、長時間試されていたスマホやノートPCなどは、配布なさらないのですね?」
「うん。しばらくはいいかなって思ってるんだ」
いきなりこんなものが広く流通したら、人々が自分たちの手で文明を高めていくプロセスを奪うことになる。それは、人々が自らの手で知的な成長を遂げる機会を奪ってしまうことと同じだ。
支援の過不足については、どこまでOkで、どこからがやり過ぎなのか、その見極めが難しい。
なんとか、自分たちの手で未来を切り開くことを誇りとするヒュムや獣人たちの誇りを守っていきながら、支援したいと思う。
「じゃあ、それらのアイテムはもう不要ですね?」
「や、えっと…… ホラ、アレに使うんだよ」
「最近のカイト様は、暇さえあればそのスマホを触ってらっしゃいます」
なんだろう......この急に開かれた家族会議のような気まずさ。
あまり保護者に見つかりたくない物体が発見されたり、良からぬ検索履歴がうっかり見つかったときのような、不思議な緊張感である。
「いや、そんなことは……」
「先日はとうとう、入浴中にまでスマホでゲームをなさっていました」
「……おっしゃる通りです」
「ロココは思うのです。カイト様がスマホ中毒になっているのではないかと」
「じゃあ、使用のルールをさぁ... 」
「それにあろうことか、カイト様は最近、サボってはいませんか?」
「や、そんなことは……」
「キープモードで保存されている願いは現在、五千件を超えております。また、カイト様が前回、願いを叶えるために神樹へアクセスなさったのは八十時間前でございます。ヒュムの時に換算するとたいしたことはないとはいえ、願い事の精選や緊急度の確認くらいは進めていただきませんと。いささか心配でございます」
じっとりとしたロココさんの視線に、冷や汗が止まらなくなる。
オレ神体だから汗かかないはずなのに…
「よし! スマホなんて邪魔だから、ロココさんにあげるね」
「ではお預かりします」
「今日も頑張っちゃうぞー!」
口笛拭いてごまかそうとしたけど、まったく音が出ない。
基本的神権にぜひ、口笛上達を追加していただきたい。
第二部もあと一話!




