転生したらスライムだったと思ったら、おっぱいだった件
怒られたら消します
ある朝、目覚めたら俺はおっぱいになっていた。美少女になっていたのではない。おっぱいになっていたのだ。片乳である。しかも気が付いたら見た事も無い鬱蒼とした森の中だった。
「目が覚めたようですね。哀れなる人の子……いえ、おっぱいの子よ……」
「だ、誰だ!?」
見上げると、美しい銀髪の女性が俺を覗きこんでいた。美人ではあるが、それよりも特徴的なのは顔よりもでかい乳である。
「私は乳の神ボインプルン。あなたの乳房を求める願望によって呼び出された女神です」
「ボインプルンだと!?」
俺には何がなんだかわからなかった。確かに俺はおっぱいが好きだ。愛している。だが、おっぱいの方は俺を愛してはくれなかった。よって、俺は今の今までおっぱいに触れた事が無かったのだ。
「その通りです。ですので、あなたをおっぱいにしたのです」
「何だって!?」
俺は驚愕した。もう色々と突っ込みたいのだが、何がどうなったら人間がおっぱいになるのだろう。俺の考えを見透かしたように、ボインプルンは笑顔で説明を続ける。
「あなたは美少女になりたかった。その願いを私は聞き入れたのです。ですが、あなたの前世での実績を考慮すると、完璧な美少女にするにはいささかポイントが足りなかったのです」
「いや、だからって何でおっぱいに……」
「仕方が無かったのです。チート能力を与えつつ全身美少女ではコストが掛かりすぎます。なので、女性のシンボルであるおっぱいに全精力を集中しました。今のあなたはチートおっぱいと言えるでしょう」
「チートおっぱい」
俺がオウム返しにそう言うと、ボインプルンは頷いた。いや、頷かれても困るのだが。
「ほら、ご覧ください。自分で言うのも何ですが、まさに理想的なおっぱいだと思いませんか?」
そう言ってボインプルンは乳の谷間から手鏡を取り出し、俺に突きつけた。確かにボインプルンの言うとおり、おっぱいと化した俺は美乳だった。いや、神乳と言ってもいいかもしれない。
手のひらからややはみ出すくらいで揉みごたえがありつつも、決してバランスが悪くない。先端は桜色の突起がつんと上を向いており、きめ細やかな肌で、俺が身体をゆするたびにぷるぷる揺れる。その柔らかさをキープしつつも、決して重力に屈しない弾力性を持っている。
「とりあえず適当な葉っぱをかぶせましょう。先端が出ていると怒られる可能性があるので」
ボインプルンはそう言って、近くにあった葉っぱを俺の頭頂部にかぶせた。これでR18は回避出来たはずだ。
「さて、こうして異世界でおっぱいと化したあなたには、他のパーツを集めて美少女にならねばなりません」
「それ以前に、勝手に異世界に拉致して、おっぱいにしておいて話を進めないで欲しいんだけど」
「元の薄汚いおっさんに戻りたいと」
「いや、おっぱいでいいです」
俺は即答した。まさかおっさんである俺がおっぱいになるとは思ってもみなかったが、元の姿に戻るくらいならおっぱいを選ぶ。おっさんとおっぱいって語呂は似てるのに、どうしてこうも希望と絶望に差があるんだろうな。
「分かれば結構です。では話を戻しますが、今のあなたはチート能力を持ったおっぱいです。ですが、最終的に美少女になるために、理想のパーツを集め、あなただけの美少女を作らねばなりません」
「そんな、『君だけのロボットを作ろう!』みたいなノリで話されましても」
俺は困惑した。プラモデルじゃあるまいし、人間の各部位を集めるなんて無理だろ。そういうのはフランケンシュタインの怪物とかでやるべきなのではないだろうか。
「残念ですが私に出来るのはこのくらいなのです……では、チートおっぱいさん、あなたが幸せになれる事を心から願っていますよ」
「え!? あ!? ちょ、ちょっと!?」
ボインプルンは優しい笑みを浮かべ、光の粒子となって大気中に消え去った。俺を残して。
「いや、これどうすればいいのよ……」
葉っぱを被った片乳と化した俺は、見知らぬ異世界で呆然としていた。しかし、このままでは埒があかない。
俺はスキル【念動飛行】を発動させ、ふわりと宙に浮かんだ。不思議だが、俺の頭……いや、頭無いんだけど、とにかく俺は自分の能力を何故か完全に把握していた。先端から火炎放射を出したりも出来るようだが、今はそれをやる時ではない。
最初はぼいんぼいん飛び跳ねて移動しようかと思ったのだが、そんな事したら美乳が汚れてしまう。おっぱいは神聖不可侵。決して何物にも汚されてはならないのだ。
「しかし、どうやって美少女のパーツを集めて人間になればいいんだ……どこかに片乳を落として困っている美少女はいないものか……」
俺はスキル、【探知】を発動させた。これは俺の望む物が近くにあると、ちょうどネット検索のように引っ掛かるスキルである。片乳を無くして困っている美少女の検索結果は……一件ヒット!
「マジかよ!? よっしゃ! 早速行くしかねえ!」
俺は念動飛行をフル活用し、気球のように森の遥か上まで浮かんだ。そして【探知】の挿す方向へ真っ直ぐに飛んでいく。
「うう! 来ないで! 来ないでったら!」
しばらく飛んだ先には切り立った崖があり、そこには一人の少女が追い詰められていた。目の前には凶暴そうな黒い狼が三頭ほどおり、少女を獲物として追い詰めている真っ最中のようだ。
「あの子、片方の乳が無いな」
俺は【千里眼】を持っているので、遥か上空からでも少女の姿を見る事が出来た。彼女は弓を持っていて、布を巻きつけたようなラフな格好をしていた。そして何より、右側の乳房が無かった。
「このぉ!」
少女が先頭の狼に向かって矢を放つ。だが、命中したはずなのに狼には全然ダメージは入っていないようだ。多分、乳房が無い分筋力が落ちているからだろう。乳がんとかで手術した後、筋力が落ちてしまうというのは聞いた事がある。
「分かった! あの子はアマゾネスだな!」
これまでの状況を鑑みて、俺に一つの答えが浮かび上がった。彼女はきっとアマゾネスなのだ。アマゾネスとは女性だけの部族で、弓を使う戦士なのだが、弓を射る際に邪魔なので片乳を切り落とすのだ。なんてもったいない。いらないんなら俺にくれよ。
……などと解説している場合ではない。片乳だけの俺、片乳を失い窮地に陥っている少女。ならばやるべき事は一つ。
「そこの娘、聞こえるか!」
「えっ!? あ、あなたは一体!?」
「通りすがりのお人よしのスライムさ!」
通りすがりのおっぱいというとさすがに怪しまれると思い、俺はあえてスライムと名乗った。この世界のスライムが空を飛んで喋るかは知ったこっちゃない。
「娘! お前はその狼どもに襲われていて、しかも撃退の弓の威力を出せない。合っているな?」
「え、ええ。合ってますけど、もう無理です! 仲間ともはぐれてしまったし、黒狼は森の中でも頂点捕食者なんです!」
「大丈夫だ! 俺を使え!」
「えっ!? 使うって……どうすれば!?」
「決まっている! 合体だあああああああああああ!!」
俺は裂帛の気合を籠め、流星の如く少女の失われた乳房めがけて落下する。ガ○ダムのパーツがドッキングするような音と共に、俺は完全に少女の乳房と合体した。
「グルオオオッ!?」
狼どももさすがにこの状況には困惑している。今がチャンスだ。
「娘、矢を放て!」
「え、で、でも! 私はあんまりうまく弓が使えないんです!」
「大丈夫だ! 俺を信じろ! 俺は……チート使いだ!」
多分チートの意味は良く分かっていないだろうが、少女は弓を構える。多分、もう四の五の言ってられないと思ったのだろう。狼どもは既に陣形を建て直し、せせら笑うように低く唸る。
恐らく、俺が加わったことで食える部位がちょっと増えたとか思っているのだろう。
「フッ、どちらが狩られる側かまだ分からんか。所詮けだものよ!」
少女が再び矢を放った。相変わらずへろへろとした軌道を描く。だが、今のこの少女は先ほどとは違う。何故なら……チートおっぱいの俺がいるからだ!
「スキル【螺旋加速】」
俺は攻撃スキルを発動させる。これは文字通り、放たれた物体に対し、回転と加速を加えるスキルだ。空中で突如ドリルのように回転しだした矢は、戦闘で余裕ぶっこいていた黒狼を貫いた。それどころか、矢はそのまま飛んでいき、遥か後ろにある巨木を十数本なぎ倒す。
「ガガッ!?」
後ろに控えていた二頭の狼は、何が何だか分からないと言ったように短く吼えた。そしてその直後、脱兎のごとく逃げ出した。勝てる相手か勝てない相手か分かるや否や、瞬時に撤退するのは賢明だ。
「す、すごい……」
そして、狼よりも驚いていたのは、矢を放った少女自身だった。そりゃ、いきなりあんな大技ぶっ放したら驚くだろう。
「これは、スライムさんの力なんですか?」
「まあ、そんな所だ。ところで娘よ、一つ提案があるのだが」
「な、何でしょう?」
「実は俺は、訳あって美少女のパーツを集める旅をしなければならいんだが、君がよかったら、しばらく君の片乳の担がせて貰えないだろうか?」
「え? え?」
何を言われているのかさっぱり分かっていないようだが、俺もいまいちよくわかっていないので許して欲しい。
「もちろん礼はする。今のように、俺は超強いおっぱ……スライムだ。君の身体にくっ付いている間、力を分け与えようじゃないか」
「ほ、本当ですか!?」
少女はぱっと表情を輝かせた。失われた片方の乳房も戻り、しかも強くなるんだから悪い条件じゃないだろう。俺としても、都合よく片方の乳だけを失った少女を探せるとは思っていない。
こうして俺は、擬似的に美少女となった。よかったよかった。




