瞼《まぶた》をあけた朝
ずっと夢を見ている気分だった。
夢から覚めて現実、そして眠ってまた見るのが夢。そのはずなのに、違うんだ。
いつもどこかがぼんやりとしていて、その記憶がおぼろげなまま私が次の夢の中にいて、そんな断片が延々と続く。
簡素な暖炉に薪がくべられる。
羊毛の糸紡ぎを見せてくれるお婆さん。
幼い同士の女の子から手を引かれ、もっと幼い男の子をあやすのが私。
広場に響く太鼓と笛の音。
雪の中を見送られる小さな棺。
子供服を縫い直す女性。
家を修繕する男性。
作業場で算数の何かを言い出した私に驚く大人たち。
それらの断片は短縮された感覚を伴って、順番に私の成長の時系列になっている。
ある時、おぼろな記憶に包まれながら、私は朝日の明るさで目覚めた。見渡すのは石と煉瓦と精度の甘い天然素材の家具、肌触りの良くないお布団。
そして夢の中でずうっと何度も聞かされてきた優しい声と、おそらく私の名前。
「エレナ、起きなさい。あなたの朝の役目はなあに?」
ぼんやり見えていたのはこの家か……本当の雰囲気はこんなところよね。
「ねえママ。」
「おはよう、でしょ。早く山羊の世話をしてきてちょうだい。朝食がミルク抜きになるわよ。」
「あのね、ママ。お姉ちゃんと弟の夢を見たんだ。一緒に遊んでるのよ。」
炊事の手を止めて、ママは私をなぜか懐かしそうに眺める。
「お祖母ちゃんの元に行くのが早かった子たち……。エレナはニミアの背丈を追い越しちゃったわねえ。」
そう、夢の細部でそう感じていたけど、亡くなっていたのか。5秒間ばかり黙祷する。
「姉弟はいなくて親子3人暮らし。まるで核家族ばかりの日本と同じだわ。」
「かくかぞ……それ、どこの言葉なのよ?」
おっとと、何でもありませんママ。
「ねえママ、私ってさ……、庶民だよね?」
「ええこうしてお国に税金を納めてる働き者の家族よ。なんだか変だわ、どんな夢を見たのかしら。エレナはまだ4年も子供でいるんだから立派になるにはパパとママと、あのお師匠さんの言う通りにしてればいいの。」
えっとこの世界では確か、成人年齢が2段階になっていて前半が14歳だったはず。
そんな時代の深刻な乳幼児死亡率の難関も乗り越えて、この身体は10歳前後か。うふふ、今日からの私だ。
でも、お師匠さんって誰だっけ?




