吾輩は猫なのか?【第二十話】
――それにしても。
サンドラの指示で、生徒たちは散った。
全員で、その“核”を探しているはずだ。
――にも関わらず。
未だに、結界は解除されていない。
――ジル。
不意に、あいつの顔が脳裏をよぎる。
私はぶんぶんと頭を振った。
「大丈夫?顔色悪いけど♪」
「ああ、うん……大丈夫」
「そ♪なら、そろそろ動きましょうか♪」
……きっと大丈夫。
サンドラは、“核”の形を知らないと言っていた。
仮に見つけても、それが核だと分からないのかもしれない。
それか――まだ誰も入っていない場所が……
「…………」
そう。
違和感は、ずっとあった。
ただ、その意味を考える余裕がなかっただけだ。
「サンドラ」
「ん?何かな♪」
「私、核の場所……分かったかも」
サンドラは少し驚いたように目を見開く。
そして――
「ふーん♪まぁ、試しに言ってみたら?」
いたずらっぽく笑った。
* * *
私はサンドラと共に、“そこ”へ向かって歩いていた。
「最初の違和感」
私は前を向いたまま口を開く。
「あいつ、トーマス先生の部屋から出る時、腕を引っ掛けてた。まるで――“初めてそこを通った”みたいに」
「なるほどね♪」
サンドラは顎へ手を当てた。
「あいつ、自分の体の形を変えられる♪だとすると考えられるのは――」
「あいつは、あの姿で“部屋の中に現れた”。魔術師の協力者がいるのか、光界の技術なのかは分からない。扉に腕を引っ掛けたのは、それが理由」
「ん〜♪発想が飛躍し過ぎてる気もするけど♪」
サンドラは小さく肩を竦めた。
「あいつが別の形で中に入って、中で変形して出てこようとした♪……こっちの方が自然じゃないかな♪」
「いや、違和感はまだある」
私は隣を歩くサンドラへ、人差し指を立てた。
「サンドラが周りの生徒へ“指示”を出して、みんなが散っていった時……あいつ、何してた?」
サンドラはぱちんと指を鳴らした。
「なるほどね♪確かに、あいつはみんなが散っていく様子を眺めてた♪」
サンドラは目を細めた。
「“その場から動かず”にね♪」
「そう。そして――」
私たちは同時に足を止めた。
目の前には、扉にもたれ掛かるトーマス先生の死体。
「わざわざ先生の死体を拾い直して、扉へ投げつけた」
私は死体を見る。
「なぜそんなことを?」
サンドラは肩をすくめた。
「“心理的な壁”を作るため♪」
死体へ視線を向ける。
「まぁ確かに、先生の死体がある扉を調べるハードルは高いかもね♪」
そして、私へ笑いかけた。
「あなたなら喜んで調べそうだけど♪」
こいつ……
なんて失礼なやつ。
私だって、こんな場所できれば調べたくない。
「ま、それは置いといて。結界の“核”があるのは――」
私は扉を指差した。
「トーマス先生の部屋の中ってこと」




