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第188話:付与魔法使いは慎重になる

 愉快そうにケラケラと笑うエルフの神。


 できないと断言しないということは、俺たちなら僅かばかりでも可能性があるということだろうか? いや、それは考えすぎか。


「では、回答の時間は終わりだ。其方らが望んだ答えを示すことはできなかった。今回だけの特別サービスだ。供物は次の機会に回すが良い」


 エルフの神がそのように言い残すと、モヤが霧散し、祭壇の青白い輝きも静まったのだった。なお、その言葉の通り今回の質問のために献上した魔物の亡骸は残ったまま。


「これ、どうします? 魔王の居場所について質問してみますか?」


「現状思いつくのはそんなところよね。アルス次第だけど……」


 二人が俺を同時に見た。


 確かに、魔王の居場所を聞くのも選択肢の一つだ。魔法書と同様に答えてもらえない可能性もあるが、案外すんなりと聞き出せるかもしれない。


 だが——


「いや、もう少し調べてからにしよう。このクラスの魔物はなかなか手に入らない。精霊界のどこかにいるってことまでは掴めてるんだ。質問するにしても大事に使いたい」


 『今回だけの特別サービス』から察するに、望んだ答えが得られなくても本来は消費されるのだろう。一刻を争うわけではない。魔物の亡骸さえ確保しておけば、いつでもここに来さえすれば訊けるのだ。それなら、もう少し質問を絞りたい。


 俺はジャイアント・ウルフの亡骸を元通りアイテムスロットに収納。二人とシルフィと共に教会を出たのだった。


 ◇


 教会を出ると、里の中が騒がしくなっていた。


 空には緊急事態を知らせる赤色の煙幕が打ち上がり、大きな荷物を持って慌ただしく南門の方へ向かうエルフたち。平和な里は只事ではない雰囲気に一変していた。


「な、何かあったのでしょうか……?」


 答えは、すぐにわかった。


 住民を誘導していると思われる拡声器を持ったエルフが繰り返し叫んでいたからだ。


「火事だ————‼︎」


「今すぐ荷物をまとめて里を出てください!」


「南門を目指せ! 今すぐだ!」


 どうやら、どこかで火事があったようだ。この近くなのだろうか? それにしても、火事とはいえ里の外までとは大袈裟だな。エルフの里では滅多にないことなのだろうか?


 などと思っていたところ——


「ア、アルス! あれ見て!」


 血相を変えたユキナが肩を叩いてきた。


 あちらを見るようユキナが指を差す里の北方向に目をやる。


「……っ!」


 俺は、思わず言葉を失った。

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