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第182話:付与魔法使いは温泉へ

 ◇


 午後九時。


 お開きになってから二時間ほど経ったのだが——


「アルシュー! そろそろ温泉! 行きましょー? こっそり混浴しちゃいます⁉︎」


「良いわね! 貸切ならこっそり来てもわからないわよ! ふふっ」


 ずっとこの調子である。


 ちなみに、場所はエルフとニーナの家の中。滞在中は使って良いということで寝泊まりさせてもらっている部屋の中だ。今日が祝勝会じゃなかったら、なかなかに迷惑な声量である。


「ママたち温泉行って大丈夫?」


 ふらふらのセリアとユキナを見て、心配そうに尋ねてくるシルフィ。


「さすがにこの状態じゃダメだな」


 飲酒後の入浴は意識を失って倒れてしまったり、脱水症状を起こすリスクがある。そうじゃなくともフラフラの状態では足を滑らせてしまうかもしれない。危うい状況なのだ。


「じゃあ、今日は無理かぁ……」


 残念そうに呟くシルフィ。


「無理ではないぞ。この状態じゃダメってだけだ」


 言ってから、俺はセリアとユキナに『解毒』を付与。急速に二人の血中アルコールは分解され、素面の状態に戻ったのだった。


「わっ! パパすご〜い!」


 これでみんなで行けるということで、シルフィはほっとしたようだ。


 そして、アルコールが抜けた二人。


「あれ? 私、お祭り会場にいたはずでは……?」


「いつの間にか部屋に戻ってたみたいね。私、何か変なこと言ってなかったわよね?」


 どうやら、二人ともさっきまでの記憶を失っているようだ。まあ、酔っていた時のことは俺とシルフィだけの秘密にしておくとしよう。


「ああ、何も。そろそろ温泉に行こうか」


 ◇


 エルフの里の北の果て。温泉浴場は山を少し登ったところにあった。


 人間の街の温泉街のように宿泊機能は特にないようで、こぢんまりとしている。利用者の百パーセントが里の住人なので、泊まれる必要がないのだろう。


 ちなみに硫黄の香りがする。


「あっ、お待ちしておりました! 長老から話は聞いています。こちら、タオルセットです。ゆっくりしていってくださいね!」


 ソフィアにもらった紹介状を受付で渡す前に声を掛けられてしまった。この里にいる人間は俺たちだけなので、すぐに分かったのだろう。


 俺たちはタオルセットを受け取り、浴場の入り口へ。


「じゃあ、また後でな」

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