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第180話:付与魔法使いは特別扱いを受ける

 ◇


 ——討伐隊のメンバーたちと共に、里に帰るまでの一幕。


「里に戻ったらすぐに教会へ行っても構わないか?」


 魔法書に関するエルフの神への質問。俺やセリアにとっては急を要する案件ではないが、ユキナはすぐにでも知りたいだろう。そう思ってソフィアに尋ねてみた。


 しかし、返ってきた答えは——


「すぐにでも用意してやりたいのじゃが、神への質問は神事じゃからな……。司祭が準備を終えるのにどうしても一晩かかってしまうのじゃ。明日の朝には間に合うと思うのじゃが……すまんの」


「分かった。それなら仕方ない。急がせて悪いな」


「とんでもないのじゃ。あっ、それとは別件なのじゃが……」


 言いながら、一枚の白い封筒を手渡すソフィア。封筒は閉じられており、開封しないと中の書類を取り出せないようになっている。


「これは?」


「温泉の紹介状じゃ。今夜の営業終了後に持っていけば、貸切で風呂に入れるよう伝えておる」


「えっ、貸切⁉︎ 良いのか?」


「もちろんじゃ。もっと早く渡すつもりじゃったのだが、調整に時間がかかってしまっての。ゆるりと休んで欲しいのじゃ」


 ただでさえ人間というだけで里の中では目立つ俺たちだ。貸切じゃないとゆっくりできないと思って気を利かせてくれたのだろう。


「めちゃくちゃありがたい。行かせてもらうよ」


「温泉! すごく楽しみです! シルフィちゃん、洗いっこしましょうね!」


「うん! ユキナママもね!」


「そ、そうね」


 女風呂の方はなかなか賑やかで楽しそうだ。少し羨ましいなと思ってしまったが、たまには一人で落ち着いてゆっくりというのも、それはそれで悪くない。


 里へ帰る楽しみが一つ増えたことで、足取りが軽くなった気がする。


「そういえば、アルス」


 るんるん気分で歩いていると、何かを思い出したように隣のセリアが尋ねてきた。


「さっきのジャイアント・ウルフですけど、アルス一人でも倒せましたよね?」


「……ん?」


「惚けても無駄ですよ。私には分かるのです。きっとアルスは一人でも倒せたのです。私たちに花を持たせるために譲ってくれたのでしょう?」


「さ、さあな」


「違うわ、セリア。アルスは私とセリアを試したのよ」


「ええっ⁉︎ 私試されていたんですか⁉︎ って言うか、ユキナも気づいていたのですか⁉︎」


「あれだけ簡単そうに魔物の攻撃を捌いていて気づかないわけないでしょ。セリアですら気付くほど露骨だったのよ?」


「私ですら⁉︎ まるで私が鈍感みたいじゃないですか!」


「え、そうだけど……?」


「もう! それで、どうなんですか? アルス」


「そうよ。どうなの?」


 二人が同時に俺の顔を覗き込む。


 やれやれ。


「どちらも半分正解、半分間違い……ってところだな」


 確かに、俺だけでも魔物を倒すことは出来ただろう。だが、俺が倒してしまっては、二人の成長の機会を奪ってしまうことになる。試した——というと言葉が悪いが、実力を信じたことは事実。二人に成功体験を積ませることを意図したのも事実。


 だが、それだけでもなかった。


 戦闘力に課題があるジュピラを抱えた状況で、確実に彼を守りながら魔物を倒さなければならない状況。不足の事態があっても安全かつ確実にあの局面を乗り切るために、敢えて俺一人の力じゃなく、二人の力を借りたのだ。


「えーと、どういうことですか?」


「煮え切らないわね」


「まあ、後でゆっくり話すよ」

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