第177話:付与魔法使いは作戦を変更する
どうやら、ジュピラの言葉から想像するに、彼はソフィアの指示を無視して単独でここに乗り込んできたようだ。しかし、俺たちでも一人で相手にするとなると不安になる魔物。ジュピラが一人で戦って勝算があるとはとても思えない。
「待て、死ぬぞ?」
「ふん、百も承知だ。勝てるかどうかではない。戦うことに意味があるのだ!」
そう言って、剣を構えるジュピラ。既にジャイアント・ウルフは加速を始め、猛スピードでジュピラに襲いかかっている。
当然ながら、ジュピラの攻撃は有効なダメージを与えられない。そして、強靭なパワーとスピードに抗えるはずもなく——
「——ぐはっ!」
ジュピラは前脚で蹴飛ばされ、十メートルほど滑り転がった。辛うじて意識はあるようだが、右腕があらぬ方向に曲がってしまっている。これではもう剣は持てないだろう。
たったの一撃でこの状況。やはり無謀としか思えない。
俺は、すぐにセリアとユキナの二人に指示を出した。
「作戦変更だ。ジュピラを守りながら戦う。俺の近くに集まってくれ!」
そう言って、俺は地面に横たわるジュピラの前へ。
「は、はい!」
「……! わかったわ」
ジュピラにとっては要らぬ世話かもしれないが、俺たちとしては彼にここで死なれては困るのだ。素材を手に入れる意味でも、気分的にも。
とりあえず、さっきのジュピラへの一撃でジャイアント・ウルフの身体能力についてはある程度把握できた。想定内の範囲内。今の俺たちならなんとかなるだろう。
「俺が全ての攻撃を受け止める。二人は攻撃に専念してくれ」
「えっ⁉︎ 大丈夫なのですか⁉︎」
「大丈夫よ。アルスだし」
なぜか俺ではなくユキナが返事をすると、戦闘態勢に。
「くっ……よ、余計なことをするな……。助けは要らないと言っただろう!」
弱々しく掠れた声で怒りをあらわにするジュピラ。
……やれやれ。
「そうだな。だが、承知した覚えはない」
「……! だ、だとしても、無理だ。いくらお前たちが強いとは言っても、一歩も動けない俺を守りながらこいつを相手にするなど……。べ、別に俺は人間を道連れにする気はないのだ……」
ん? ジュピラは人間を憎み嫌っているものだと思っていたのだが、ここにきて俺たちを気遣っているのか? よくわからないやつだな。
「とりあえず、黙って見ていればいい」






