第176話:付与魔法使いは戸惑う
まずは、弱体化魔法を付与しておく。
弱体化魔法の種類は、『移動速度弱化』『攻撃速度弱化』『攻撃力弱化』『命中率弱化』『防御力弱化』『魔法抵抗力弱化』『回復力弱化』の七つ。普段は消費魔力を考えて必要なものを選んでいるが、今回ばかりはフルセットだ。
そして、間髪入れずに先制攻撃。右手を突き出し、付与魔法で円状に七つの『火球』を生成する。これを同時に発射しようとしたのだが——
「なっ……!」
直前で大幅に軌道を変え、明後日の方向へ飛ばすしかなかった。
ドオオオオオオオオンンンンッッ‼︎
火球はジャイアント・ウルフには擦りもしない軌道で森を切り裂き、爆発した。
「え? アルス、どうかしたのですか?」
「後ろ! 誰かいるのよ!」
「後ろ……ですか?」
そう、ユキナの説明通りだ。『周辺探知』で近くに誰かエルフが来ていることは把握していた。戦況確認のため討伐隊から派遣されたのだろうと思って気にしていなかったが、なんと発射の直前にこちらに走って近づいて来たのだ。
そのまま攻撃するとエルフを巻き込んでしまうため、こうするしかなかった。
それにしても、どうしてここに? 討伐隊のメンバーならソフィアから作戦を聞いているはず。討伐隊とは関係のないエルフなのか? それとも何かのトラブルか? 答えの出ない疑問が頭を支配する中、近づいてきたエルフの姿が見えた。見覚えのある顔だった。
「ジュピラ……! どういうことだ⁉︎」
「里に住むエルフとして当然の責務を果たしに来たまでだ。危険は人間に任せて、民である我らはぬくぬくと戦いを見守るだと? あり得ない話だ」
そう言って、剣を抜いたジュピラは手頃な石を拾う。そして、ジャイアント・ウルフを目掛けて大きく振りかぶった。
コツン。
ジュピラが投げた石はジャイアント・ウルフの背中に衝突。次の瞬間、大きな魔力を発散する俺に注意を向けていた魔物のターゲットはジュピラに移った。
ガウルルルルル……。
攻撃を受けたことで興奮状態になったようだ。目を血走らせ、ジュピラを睨んでいる。
「そうだ、狼野郎。こっちを向け。——おっと、人間、助けなど要らぬぞ?」






