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ルリアVSヴィーラ

誤字訂正誠にありがとうございます!

お読み頂きありがとうございます!


 デタリの物言いでルールを変えて再試合になった。

デタリが先程負けた事など無かった様に、余裕の表情でルリアと向かい合う。

 

「先程はお前の有利なルールで試合をしたが、今回は先程と同じだと思うなよ!」


 さっきの試合も、どう見てもお前の方が有利だったろうが。

フルプレートアーマー着てくるなんてびっくりしたぞ。

ルリアの挑発に乗って無駄に動いて、体力を消耗させたのが敗因だ。


「だが、今回はハイパワーポーションとハイスピードポーションを使ったから、フルプレートアーマーを着ていても、お前と同じスピードで動けるからな!先程の様にはいかないぞ!」

「ダガリさん御託は良いんで早く始めましょうよ」

「ふ!その挑発も、もう乗らないぞ!これでお前の勝ち目は無くなったな!」


 試合が開始されデタリが先程より早い動きで攻撃を繰り出していく。

先程はデタリの攻撃を華麗に避けれていたルリアが、今度は、剣や盾を使わないとデタリの攻撃を捌けなくなっている。

デタリが勝ち誇った様に声を出す。


「ほら!どうした!先程の様に避けてみたらどうだ!出来ないだろう!これが私本来の力だ!私が使ってるポーションは王都の錬金術ギルドから買った高級品だ!こんな田舎の錬金術ギルドが作ったポーション何かとは質が違うんだ!」


 さらにデタリは加速して攻撃を繰り出す。

ルリアがデタリの攻撃をなんとか受ける度に騎士団から歓声が上がる。

ルリアの動きが鈍くなった瞬間ルリアの頭上からデタリの渾身の一撃が振り下ろされる。


「スラッシュ!」

「ガキーーーン!」


 ルリアは寸前の所で辛うじてデタリのスラッシュの一撃を受け止めると、騎士団員から大歓声が上がる。


「「「おおお!!!!」」」

「あの女の子、凄いぞ!」

「ああ、何て力なんだ!」

「スラッシュをスキルを使わないで防いだぞ!」


 俺はデタリのスピードの上がった攻撃に、ルリアが先程より苦戦していると思っていたが違った。

デタリがルリアの頭上でバスターソードを動かせずに苦悶の声を漏らす。


「く・・・。バカな!俺のスラッシュをその細腕で受け止められる筈が無い・・・」

「ははは・・・。私も驚いてますよ。ラムさんのポーションの効きが良いのは知ってましたけど、ここまでとは・・・。先程の試合は攻撃を受けたら体勢を崩されるので避けてましたけど、今回、受けれるかと試しに受けて戦ってみたらこれですよ」


 ルリアが苦笑いを浮かべる。


「こんな田舎の錬金術師が作ったポーションが、王都のポーションより優れているはずがないだろう!きっとマグレだ!」


 ルリアは呆れた顔でため息を吐く。


「それってどんな理論ですか・・・。まあ、ラムさんのポーションの効果が高くて調子に乗ってしまいましたが、私、本来の戦い方に戻しますね」


 ルリアがスピードで撹乱しながら、刺突で先程同様にフルプレートアーマーの隙間に剣を刺していく。

ほんの数秒でデタリの足が止まり、見るからに立っているだけで辛そうだ。


「まだ、やりますか?」

「当たり前だ!私はまだ負けていない」

「分りました。最後まで全力で相手します」


 ルリアの目がスッと細められる。

いつもの無邪気なルリアからは想像出来ない。

あんな目のルリアと試合したら、きっと俺は床を濡らしてしまう。

ルリアは遠目から見ている俺ですら目で追えない動きでスキルを放つ。


「スラッシュトラスト!」

「へ・・・」


 デタリが間抜けな声を漏らして、自分のフルプレートアーマーに刺さったルリアの剣を見下ろす。

先程まではフルプレートアーマーの隙間からの攻撃で、致命傷は与えていなかったが、今度は違う。

デタリの右腹にルリアの剣が鎧を突き破り刺さっているのだ。


「がああ!!!死ぬ!死ぬ!早くポーションを!誰かポーションを!」

「デタリさん、まだ勝負は着いてませんよ!」


 ルリアが剣を引き抜き構える。


「俺の負けだ!勇者の騎士の座は譲る!だから早くポーションを!」


 それを聞いて騎士団員が試合終了を告げる。


「勝者ルリア!!!!」


 騎士団員の歓声に包まれ俺達も抱き合って喜び合う。

デタリは騎士団員によって医務室に運ばれて行った。

ルリアとヴィーラが向い合う。


「ヴィーラこれで約束通りPTに戻してくれる?」

「駄目だ!」

「え!だってヴィーラは勝ったら戻してくれるって言ったじゃない!」

「気が変わった。私と戦え」

「えっと・・・。それでヴィーラに勝てればいいの?」

「そうだ」

「なんだそんな事なら早くやろうよ」


 ヴィーラが拒否した時には絶望の顔をしていたルリアだが、ヴィーラの新たに出した条件を聞いてホッと胸を撫で下ろす。

それとは対照的に、自分の出した条件が、さもたいした事がない様に扱われて、

ヴィーラは不満を露わにする。


「ルールは木剣を用いてポーションは無しの試合だ」

「はい!いつもの練習ですね!」


 ヴィーラとルリアの試合は一瞬でルリアが勝利した。

ルリアにあっさりと負けたヴィーラが青色の瞳を大きく開く。


「なぜ・・・。ルリアになんか一度も負けた事がないのに・・・。お前、まだポーションの効果が残っているのか!」

「ははは、ポーションの効果はもう残ってないですよー」

「ではなぜ私がこうも簡単に負けたのだ!?」

「簡単な事です。私の方が強いからです!だってヴィーラに勝つとお父さんが困った顔するし、ヴィーラの機嫌も悪くなるから、毎回、ギリギリで負けるのも大変でしたよ」

「な・・・な・・・」


 ヴィーラがプルプルと羞恥心からなのか怒りなのか、顔を真っ赤にして小刻みに震えている。

ルリアがそんなヴィーラに嬉しそうに声を掛ける。


「ヴィーラ、約束ですよ!これで私を勇者の騎士にしてくださいね!」

「・・だ・・・」

「・・・へ?ヴィーラ、今何て言ったんですか?」

「駄目だ・・・」

「え!だってヴィーラに勝ったら良いよって、さっき言いましたよね!」

「駄目だ・・・。私はやっぱりお前の事が嫌いらしい・・・」

「嫌いって!そんな酷いですよ!私が何をしたって言うんですか!」

「うるさい!お前の無神経な所とか、何も考えていない所が嫌いなんだ!」

 

 ルリアもムッとした表情で答える。


「無神経なのはヴィーラじゃないですか!私が最後に食べようと思っていたクッキーを食べちゃうし!」

「あれは!お前がバカすか食って、私はクッキーを一枚しか食べてないだろ!」

「いつも私はあのクッキーが好きって、言ってたじゃないですか!それを知ってて食べたでしょ!」

「それを言うなら、私が気になっていると言った男に色目を使っただろ!相手をその気にさせて、私は勇者の騎士になる夢があるんでって言って、振っただろうが!興味がないんなら色目なんか使うな!」

「あれは相手が勝手に言ってきただけで、私はそんな気は最初からありませんでした!」

「じゃあ、なんで男の体を触ったり、目の前で裸になったりしたんだ!」

「ちょ、ちょ!裸に何てなってませんよ!汗を拭くのに服を脱いだだけで、下着は着けてましたし!体を触ったのも剣の練習の為に、筋肉のつき方を確認しただけですし!」

「そんな事されたら男は勘違いするだろうが!」

「昔の事はいいので約束守ってPTに戻して下さいよ!」


 普段の冷静なヴィーラからは想像出来ない程、感情を露わにしてルリアと言い合いをしている。

周りで見ている俺達は苦笑いを浮かべるしか出来ない。

ルリアの一際大きな声が聞こえる。


「あー!もうヴィーラの騎士なんて私の方からお断りしますよ!」


 ルリアがプンプン怒りながら俺の前にやって来て跪く。


「?」


 そしてルリアが剣先を持って柄を俺に向ける。

ルリアが戦士の顔で俺を見上げて剣の柄を差し出す。 


「私、ルリアは貴方の作ったポーションで命を助けられ、失った腕を治して頂きました。この御恩に報いる為に、貴方の剣となり敵を討ち滅ぼし、盾となりお守り致します。どうか貴方の騎士としてお側に仕える事をお許し下さい」


 ルリアが突然真剣な顔でとんでもない事を言い出したので、戸惑いながら返す。


「えっと・・・ルリア、何を言って言っているのかな?」


 ルリアが茶化す事なく桃色の瞳で俺の目をじっと見つめる。


「勇者とは勇者の職業を得た者ではなく、弱き者を助ける人を勇者と呼ぶと、父は言っていました。ラムさんと、トット村で戦った時に、ラムさんがポーションで多くの人を笑顔にするのを見ました」


 ルリアはずっと俺の瞳から目を逸らさない。


「私には戦う事しか出来ないけど、ラムさんと一緒なら多くの人を笑顔に出来ると思ったんです。だから私を貴方の騎士にして下さい」


 とは言われても、知り合ったナンが居たからトット村に行ったし。

それにたまたま解決出来ただけで、俺は正義感に燃えて、自己犠牲をしてまで人を助けようとは思っていない。

ルリアが望む様な慈善活動をしていくつもりは無い。

でもこんな目で言われたら断れないよ。

シアやリーザさんに助けを求めて視線を送ると、二人が大きく頷き返す。

・・・え!

それってルリアを俺の騎士にしてやれってこと・・・。

ルリアに目を戻すとキラキラと期待の眼差しだし・・・。


「う・・・」


 どうすりゃ良いのよ。




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