ルリアを騎士に
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ヴィーラのPT加入を断られて、自棄になったルリアが俺の騎士に成りたいと言い出した。
ルリアの一生を左右する責任の重さに、簡単にハイとは答えられない。
だが、シアもリーザさんも俺が助けてと目線を送ると、うんうん頷いて返す。
当のルリアは期待の眼差しで俺を見る。
そんな俺に助け舟を出したはヴィーラだった。
「ルリアにはラムザールくらいが丁度良いんじゃないか。ラムザールもルリアの希望を聞いてやれば良い。どうせ爵位の無いラムザールとルリアの間に結んだ契約など、法的な束縛はない。どちらからでも破棄出来る。騎士にすると言っても二人だけの関係で、公の場では騎士とは名乗れない。従者と名乗るだけだ」
ヴィーラの言葉に少し気持ちが軽くなった。
この国で本来騎士とは貴族から任命されて成るものだ。
騎士になると俺が貰ったベルクドの印の様に、ある程度一般市民とは区別された、準貴族して扱われる。
もし俺が貴族なら、ルリアを騎士に任命出来るが、俺もあくまで御用ギルドのギルドマスターで、勿論任命権はない。
ルリアはヴィーラにPT加入を反対されて、自棄になって俺の騎士などと言いだしただけで、ルリアも頭が冷めたら考えも変わるだろう。
その時には快く騎士の任を解いてやれば良い。
ならば今はルリアの希望を叶えてやりたい。
それでルリアが満足するのなら。
騎士の任命の仕方なんか分からないが、テレビで見た任命式を思い出しながらそれっぽくやれば良いだろう。
ルリアから剣を受け取り、ルリアの肩に剣を交互に当てる。
「ルリアを俺の騎士と認める。ルリアが俺の騎士となるなら、ルリアが正しいと思った事をすること。俺が間違った事をしたと思ったら正すことを誓え」
ルリアは俺の言った内容に一瞬ぽかんとしたが、すぐに戦士の顔になって宣言する。
「誓います!」
ルリアはちょっと照れ臭そうにしている。
俺が手を出すとルリアが力強く握り返す。
「ルリア、これからも宜しくな」
「ハイ!こちらこそ宜しくお願いします」
いつもの無邪気な笑顔を見せるルリアになんかホッとする。
そんなルリアを見ていると、ついからかいたくなってしまう。
「俺の騎士に成ったからには、もうイタズラするなよ」
「う・・・。私の楽しみが・・・」
「どこの世界に主人にイタズラする騎士がいるんだよ」
「それはそうなんですけど・・・。う・・・私の楽しみが・・・」
なんでそんなに世界の終わりの様な絶望した顔をするんだ。
たかが俺への悪戯を禁止しただけなのに。
どれだけルリアは俺への悪戯を生き甲斐にしているのか。
色々、あったデタリとの決闘だったが、怪我も無く終える事が出来た。
ルリアの夢は叶えられなかったが、俺としてはルリアが戻って来てくれた事は嬉しい。
俺の騎士になったのだ、これからはあんな事やこんな事もお願いして良いのだろうか?
ふふふ、手始めに今後、家に居る時は常にメイド服を着るようにお願いしてみよう。
楽しい妄想を繰り広げながら錬金術ギルドに戻って来た俺は、現在溜まった錬金術依頼に追われていた。
トット村の件でギルドを留守にし、帰って来てからはルリアのジェネレイツポーション作りで、殆どギルドの依頼を消化出来ていなかった。
御用ギルドになって多くの従業員が当ギルドに戻って来てくれて、簡単なポーションの依頼は俺に回って来なくなったのだが、一部、ハイポーション系の制作は間に合わず滞留している。
まー、ハイポーションくらいなら、俺のチートな錬金術スキルがあれば直ぐに終わる。
シアとルリアに錬金術の補助をしてもらい一気に依頼を片付けた。
その日の夕方、シアが料理を作っている時間でルリアと短剣の練習をする。
片腕のルリアには互角の勝負が出来ていた俺だが、両腕のあるルリアには全く歯が立たない。
でも負けても、悔しさよりも嬉しさが込み上げてくる。
両腕があって楽しそうに剣を振るうルリアを見ていると俺まで楽しくなる。
「ラムさん、負けてニヤニヤするなんて気持ち悪いですよ!」
「おい!騎士が主人に向かって気持ち悪いなんて言って良いのか」
「う・・・」
ルリアが悔しそうに上目使いで見てくる。
イタズラしないって約束もしたし、これで当分は俺の方がルリアをからかってやる。
想像するだけでニヤけててしまう。
「ぶー、さっきからラムさん、ニヤニヤしてなんか変ですよ?」
ルリアが気持ち悪そうに俺を見るが、その嫌そうなルリアの顔を見ても口元が緩んでしまう。
ルリアがヴィーラの元に戻れなかったのは残念だが、また一緒に過ごせるのは素直に嬉しい。
「そのなんだ、勇者PTに戻れなくて残念だったな。だが、こうしてまたルリアと練習が出来て俺は嬉しいんだ」
なんか改まってこんな事言うのは恥ずかしい。
恥ずかしさを誤魔化すために軽口をたたく。
「俺の騎士になったからには家に居る時はメイド服を着て、ご主人様って言ってもらおうかなー」
「ラムさん・・・私がメイド服着ると嬉しいんですか?」
「ああ・・・。そうだな、似合っていて可愛いと思う」
夕日のせいで顔が赤くなっているのか、恥ずかしさからなのか、俯き加減で俺の名前を呼ぶ。
ルリアから聞く初めての声色にドキッとする。
いつも、ニヤニヤと俺をからかう余裕の笑みを浮かべるルリアからは想像も付かないほど、自信なさげにしている。
「ラムさんが喜ぶなら毎日、メイド服着ますね」
「・・・なんだと」
ルリアの言葉に驚きながら何とか言葉を絞り出す。
ルリアが小さく頷く。
「あ・・・」
ルリアが何か思い出したようだ。
「ラムさんから、騎士の祝福をまだ受けてませんでした・・・」
「騎士の祝福ってなんだ?」
「もー、恥ずかしいなー。女性にそれを言わせるんですか?」
ルリアが目を瞑って唇を突き出す。
その動作で少し心当たりがある。
確か女王が騎士の任命式で、おでこにキスをしていた。
この世界でも騎士の任命に君主から、キスの祝福をするのだろうか?
だがルリアの行動を見る限りその可能性が高い。
いつも面白そうに俺をからかうルリアが、恥ずかしそうにしている。
これがいつものルリアのイタズラで無いかと疑念がある。
だが俺の騎士になってイタズラをしないと約束したし、何よりルリアの初めて見る態度から素である可能性が高い。
ルリアのこの態度がもし演技だとしたなら、ルリアは王都の劇団に所属した方がいいだろう。
ならばやはり騎士の祝福はキスをする事だ。
そう結論付けた俺はルリアに近づいて行く。
練習で汗をかいて、ルリアの匂いが強まっていて、よりルリアの存在を強く感じる。
これは俺がキスをしたいからする訳ではない。
あくまで騎士の任命式の儀式の一つとして行う。
決してエロい心は無い。
目を瞑るルリアは普段の快活な姿はなく、別人の様に大人びた顔のルリアがいた。
ルリアってこんなに美人だったっけ?
目を瞑るルリアの唇に騎士の祝福を授けるために俺の唇を重ねる。
柔らかくて温かい感触が心地良く、しばらく時が止まったように動けない。
祝福をしてゆっくり唇を離すと、ルリアのトロンと眠そうな桃色の瞳と目が合う。
ルリアが甘えた声を出す。
「ラムさん、祝福はおでこで良いんですよー」
ルリアの言葉に俺の思考が停止する。
「だって、ルリアが唇を突き出すから、てっきり口かと・・・」
ルリアがイタズラな笑みを浮かべる。
「私、男の人とキスするの初めてだったんですよ。ちゃんと責任とって下さいね!」
ルリアが俺をからかう時の笑顔だ。
「なーんて!冗談ですよ!また引っ掛かりましたね!」
「ルリア、もうイタズラしないって約束しただろ・・・」
「騎士の誓いで私の思った正しい事をしろって宣誓しましたから」
さっきのドキッとする女性のルリアではなく、いつもの無邪気に笑うルリアが居た。




