ルリアVSデタリ 試合開始
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ルリアとデタリの試合が騎士団員の合図と共に開始された。
デタリの武器はバスターソードと呼ばれる両手剣だ。
騎士が最も練習する武器で、馬上では片手で扱い、地面に降りた時には両手で扱う。
両手で扱った時の攻撃力は軽装のルリアなど防具の上からでも骨折させられる。
デタリは盾を装備していないが、全身はフルプレートアーマーに身を包んでいて、生半可な攻撃は通らない。
対してルリアは片手剣に小型のラウンドシールド。
防具には鉄の胸当て、脛当て、小手など主要な部位を守る程度で、動きやすさを優先している。
デタリは筋肉ムキムキで身長も高いのに対して、ルリアは体が大きい訳ではないので、子供と大人の戦いの様にさえ見える。
「ちょっと、あれ狡くないか?」
「あんな装備して恥ずかしくないんですかね?」
「これだから男って・・・」
「僕もあれは無いと思うなー」
俺達がデタリの悪口を言っていたら、聞こえた様でデタリが叫ぶ。
「これは勇者の騎士の座を賭けた戦いだ!ヴィーラ様を守る者を選ぶのだがら、実戦形式でやるのは当然だ!本来なら木剣などでなく本物の剣ですべきなのだ!」
「私はデタリさんが納得するルールで構いませんよ」
ルリアは良いと言ってはいるが、それでも見た目はイジメだ。
「体は大きいが心は小さい奴だな」
「きっと女性と付き合った事がないんでしょうね」
「あの鎧の中臭そう」
「僕なら鎧を脱いで対等な装備で戦って、相手より強さを示すけどな」
デタリに追加で悪口を言ってやったら、顔を赤くして怒っていた。
ルリアはフルプレートアーマーの相手を前にしても、いつもの、のほほんとした感じだ。
「まあまあ、私はどんな条件でも良いですよー。鎧も暑そうですし、サクッと始めてすぐに終わりにしましょう」
「そうだな、一分で終わりにしてやる。さあ、どこからでも来い!」
デタリはニヤッと笑うと兜の前面を降ろし、バスターソードを構える。
「どうした?来ないのか?ならこちらから行くぞ!スラッシュ!」
デタリが鎧の重さを感じさせないスピードで間合いを詰めると、スキルを発動する。
俺はルリアがやられたと思ったが、デタリのバスターソードがルリアを掠めていく。
「この!」
デタリがそのままバスターソードの斬撃を繰り出していく。
ルリアはその全てをかわしているが、一撃でも当てればそれで終わる。
ルリアは避けるだけで未だに一度も攻撃出来ていない。
「オラオラ!どうした!」
デタリが 声を上げながら斬り付ける。
大柄の体格から繰り出される攻撃は、剣の重さを感じさせない速さだ。
その後もデタリが一方的に斬り付け、ルリアが逃げ回る展開が続く。
「デタリさん、そろそろ一分経っちゃいますよ」
ルリアの挑発にデタリの動きが大きくなり隙が出来た!
ルリアがその隙を見逃す筈もなく、バスターソードの間合いの中に入り、ルリアの一撃が綺麗にデタリの胴を横に一閃する。
「よし!勝った!」
「やったー!」
シアと喜びの声を上げる。
デタリはルリアの一撃を無視して、バスターソードをルリアに叩きつける。
ルリアはデタリの攻撃を盾で華麗に受け流し、デタリの剣が地面に当たる。
そして二人は再度距離を取る。
「あー、決まったと思ったのに、あの鎧やっぱり狡いな!」
「ルリア・・・」
シアが不満げな声を漏らす。
あれだけルリアの攻撃が綺麗に決まってもダメージが無いなら、一体どうやってルリアはデタリに勝てるのだろうか?
「確かに元ヴィーラ様の騎士だな。技術はあるが・・・それだけだ。それではヴィーラ様をお守りする事は出来ないぞ。お前は非力すぎる。攻撃力、防御力、共に揃って始めて勇者の騎士なのだ!」
「デガリさん、うだうだ言ってないで掛かって来て下さい」
「デタリだ!」
てっきり、ルリアは素でデタリの名前を間違えているのだと思っていたが、どうやらルリアがムカついた時にわざと間違えてる様だ。
ルリアの挑発に乗ってデタリが激しく斬り付ける。
ルリアはまた防戦一方になりデタリの攻撃を全てかわしていく。
その攻防が五分を経過した辺りから戦況が変化を見せる。
防戦一方だったルリアの攻撃が当たり始めたのだ。
だがどの攻撃もデタリの鎧に阻まれダメージを与えられない。
デタリはルリアの攻撃を無視して受けながらも斬り返す。
「はあ、はあ、はあ。そんな攻撃いくらしても効かない!」
デタリの動きが鈍くなり肩で息をし始める。
「あれ?デタリさん疲れちゃいましたか?じゃあ、そろそろ本気で行きますよ」
ルリアが獰猛な笑みを浮かべる。
いつもの無邪気なルリアからは想像出来ない残忍な笑みだ。
そこからのルリアは凄まじかった。
まずデタリの攻撃が先程までは当たりそうだったのが、今は全く当たる気配がない。
もしかしたら、わざと当たりそうな演出をして、デタリをムキにさせたのかもしれない。
そして攻撃も斬撃から刺突に切り替え、フルプレートアーマの繋ぎ目の細い隙間を的確に突いていく。
これもあえて刺突を使わずに、斬撃主体でデタリを挑発していた可能性がある。
「があ、・・・く、・・・あ、・・・があ」
デタリが突かれる度に痛みから声を漏らす。
これが真剣ならデタリの全身が真っ赤に染まっているだろう。
みるみるデタリの動きが鈍くなり、遂に膝を突いてしまう。
「勝負あり!」
その瞬間騎士団員が試合を終わらせた。
「ちょっと待て!俺はまだやれるぞ!」
「え・・・、でも今のは明らかに・・・」
デタリが兜を脱ぎ騎士団員に詰め寄ると、騎士団員は困った様にルリアを見る。
「ははは、私は構いませんよ。デタリさんが納得する形で勝負を決めましょう」
「今、言ったな!俺の納得する形で勝負すると!」
「え?最初からそう言ってますけど?」
「うるさい!俺は最初からおかしいと思っていたんだ!勇者の騎士を決めるなら、実戦形式でやるべきだと!」
「はあ・・・」
「いいか!まず、木剣などでなく真剣を使う!そしてスピードポーション、パワーポーション有りでいく!フルプレートアーマーをパワーポーション、スピードポーション無しで戦えば、その重さから俺が明らかに不利だろうが!」
「はあ・・・」
ルリアが呆れたように生返事を繰り返す。
「私はそのルールで構いませんけど?それってやる意味ありますか?」
「ああ、より実戦に近い形で勝負してこそ、ヴィーラ様を真に守れる騎士が分かると言う物だ!」
デタリのルール変更の申し出が有りルリアが了承したので、再度、武器を真剣に変えて、さらにポーション有りの強化をした状態での仕切り直しになった。
勝負が長引く理由で回復ポーションの使用は禁止だ。
戻って来たルリアに声を掛ける。
「良かったのか、もう一度勝負受けて?受けなくてもルリアの勝ちだろ」
「はい。私も勇者PTの座を無くした人間です。デタリさんの気持ちは凄くわかるので、お互いが納得する形で勝負を着けたいんです」
「だけど真剣でやって、もし当たったら大怪我ですまないぞ」
危険な勝負の前なのにルリアが笑顔を見せる。
「ラムさん、あの言い難いんですが、スピードポーション売って貰えますか?」
「売るも何も、頼むから使って怪我をしないでくれ」
ハイパワーポーションとハイスピードポーションを取り出しルリアに差し出す。
「ありがとうございます!必ず勝って、ポーションの代金は体で返しますから!」
ルリアはイタズラな笑みを浮かべて、礼を言うとポーションを飲んで中央に戻って行く。
ルリアの背中に必ず生きて帰って来いと、痛みに耐えながら念じて送り出す。
俺の隣にはルリアを不安げに見送る、リーザさんとシアがピタッと立っていた。