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決闘

 ルリアとデタリの決闘当日、俺達五人はベルクド騎士団の訓練場に来ていた。

騎士団の訓練場は屋根のない屋外にあり、広さはテニスコート二枚分位だろうか。

剥き出しの赤土が騎士団の練習によって踏み固められ、カチカチに固まっている。

訓練場の壁沿いには練習用の木剣や木の盾が立て掛けてある。

騎士団は休憩中なのか身軽な格好でくつろいでいる。

 

 しばらくするとヴィーラ達がやって来た。

ヴィーラが練習場に姿を現すと騎士団の男達がざわめき出す。

いつもながらヴィーラの美しさは息を呑むものがある。

青い髪にあの冷たい青い目もぞくっとくる美しさだ。

そして冷たい微笑も新しい自分に目覚めてしまいそうだ。

これで性格が良ければ惚れてしまうが、性格が悪くて助かった。


「ラムザール。トット村でも奇病の原因を究明し、病を治すポーションまで作りあげる活躍だったそうだな」

「たまたまですよ」

「ふ、ポイズンフロッグも相当数討伐したと聞いた。相変わらず見かけによらず出来る男の様だな」


 見かけによらずは余計だ。

だが、今回も何となく、どうにかなっただけで運の要素が大きい。


「私は出来る男は嫌いじゃない。どうだ、私のPTに加えてやっても良いんだぞ?」


 ヴィーラの言葉に騎士団員達がざわめき出す。


「おい、あいつは何者だ?ヴィーラ様に直接PTに勧誘されてるぞ!?」

「確か、錬金術ギルドのギルドマスターだ」

「あの若さでギルドマスターだと!」

「この前のドラゴンもどきの討伐にも加わっていて、相当功績を挙げていたぞ!」


 騎士団のざわめきを無視してヴィーラの誘いを断ると、先程より騎士団員がさらにざわつく。 


「ありがたいお話ですが遠慮しておきます」


 俺が断るとヴィーラはちょっと目を見開いて、笑い出す。


「ははは、勇者のPTの誘いを断る奴がいるとは・・・なんとも面白いやつだ!」


 ルリアの待遇を見ていると、どう見てもブラック企業なんだが、誰が勇者PTなんかに入りたいんだ?

ああ、俺の横のうさ耳は勇者PTに入りたいんだっけか。


「ルリア・・・お前その腕・・・」


 ヴィーラが口をパクパクしながらルリアを指さす。

美人はアホづらしても美人だからずるい。

ルリアが自慢げにヴィーラの前に右腕を突き出す。


「ラムさんに腕を治してもらいました!」

「治したって・・・ラムザールはそんな事も出来るのか!?」

「まー、正確には俺の作ったポーションが治したんですけどね」

「分かってるわ!」


 美人は怒った顔も美人なんだよなー。

普段の冷たいヴィーラより、驚いたり、怒ったりした表情の方が可愛い。


「その歳でジェネレイツポーションを作れるなんて、ラムザールは見た目通りの年齢なのか!?・・・ところで、金の無いルリアがどうやってジェネレイツポーションを買ったんだ?」


 ヴィーラが俺を睨んでくる。


「ラムザール、お前!対価としてルリアの体を求めたのか!?そしてあんな事や、こんな事をルリアに要求して・・・。く・・・!何て破廉恥な奴だ!」


 ヴィーラの中では一体どんな想像がなされているのか・・・興味はある!


「・・・いや、逆にルリアがラムザールを誑かしてポーションを貢がせたのか・・・?ルリアは直ぐに男に色目を使うからな・・・。あー!!!!やっぱりヤメだ、ヤメだ!ルリアは私のPTには戻さん!」

「ちょっと、待て!なんでそうなるんだ!」

「ヴィーラ、酷いですよ・・・」


 ルリアのうさ耳がいつもより垂れ下がっている気がする。

普段冷静なヴィーラからは想像出来ないくらい感情を表す。


「私は昔からルリアのそう言った男を誑かす所が嫌いなんだ!直ぐに男の前で下着になるし、直ぐに男の体を触るし!なんでいつもピンクの服を着ているんだ!そのぶりっ子な所とかが嫌いなんだ!」


 ヴィーラの剣幕を黙って聞いていたルリアがついにヴィーラに食って掛かる。


「もう、我慢出来ません!勇者の騎士になりたくて、ずっと我慢してヴィーラの機嫌を取ってましたけど、なーんでそんな事言われなくちゃ、いけないんですか!ヴィーラだって良い男がいると直ぐに声掛けるじゃないですか!今だってラムさんをPTに誘ってたし、どれだけ周りに男を置けば気が済むんですか!」

「私は違う!!!ラムザールだって優秀だからPTに誘っただけで、こんなエロい目の男なんてタイプじゃない!」

「ヴィーラはそうやって直ぐ見た目で判断するんだから!確かにラムさんは見た目はエロいですけど、中身はもっとエロいんですよ!」


 おい、ルリア・・・全くフォローになってないぞ。

むしろそれって悪口だよね。

ヴィーラは俺のチート能力は褒めてたぞ。

ルリアも何か吹っ切れたのか、今までヴィーラに対して一歩引いていて、何処か怖じけている節があったのだが、今はヴィーラに詰め寄っている。


「私も言わせてもらいますけど!私だってヴィーラの直ぐ練習サボる所とか、外面ばっか整える所とか嫌いなんです!なんでヴィーラが勇者なんですか!」

「うるさい!私だって好きで勇者をやってる訳じゃない!本当は戦いなんて好きじゃない!領主の娘の私が何で、命を懸けて戦わなくちゃならないんだ!毎日、パーティーして遊んで暮らせるはずだったのに!だが勇者になった以上、役目を全うしようと頑張っているんじゃないか!領主の娘として、勇者として体裁を整えて何が悪い!お前の様にアホ面はしてられないんだ!」

「誰がアホ面ですか!ヴィーラのツンツン顔よりずっとマシですよ!」


 皆んなの見ている前でルリアとヴィーラの幼馴染であるが為の、今まで溜まった不満の応酬がしばらく続いた。

 

「勝負ですヴィーラ!」

「その挑戦受けてやる!」


 今日はルリアとデタリの試合で、デタリに勝てばルリアが勇者PTに戻れる話だったのだが、何故かルリアとヴィーラの勝負に変わっている。


「ルリア良いのか?勇者の騎士に戻るのにヴィーラの機嫌を損ねたら戻れないんじゃないか?」


 ルリアに話しかけるとルリアはウッと唸って項垂れる。


「やってしまいました・・・。ずっと我慢してたのに・・・。ううう」

「今から謝ってくれば?」

「ううう・・・。謝ったらヴィーラ許してくれますかね?」


 ちらっとヴィーラを見ると、PTの男達に囲まれて落ち着きを取り戻していたので、ルリアに代わって条件を確認しに行く。

ヴィーラはいつもの冷静な感じで対応してくる。

本心はどうか分からないが、ルリアの言う所、体裁を整えたヴィーラ様だ。


「私もルリアのバカに釣られて熱くなってしまったが、最初の条件の通り、ルリアがデタリに勝てれば勇者PTへの復帰を認めよう。まあ、私にも勝てないルリアがデタリに勝てるとは思えんがな」


 ルリアとヴィーラの口喧嘩はあったが、当初の予定通りにルリアとデタリの試合が開始される。

ルリアとデタリの試合を見に騎士団員が周りを囲む。

ヴィーラは騎士団に用意された椅子に座って、横にはヴィーラの為に日傘をさすベロが立っている。

シア、リーザさん、トールさんは固唾を呑んでルリアを見守る。

 

 ルリアの武器はショートソード型の木剣に小型のラウンドシールド。

対するデタリはバスターソード型の木剣だ。

前回の試合時はデタリは盾を使っていたが今回は両手剣で力押しでくるのか?

デタリがルリアを小馬鹿にした笑みを浮かべる。


「前回、俺に全く歯が立たなかったのに、腕が治った位で俺に勝てると思ったのか?」

「・・・」


 ルリアが真剣な眼差しでデタリを睨み返す。


「前回は片手剣で戦ったが、今回は俺の得意なこれでいかせてもらう」


 デタリが両手剣をルリアに突きつけ、不敵な笑みを浮かべる。

ルリアの人生が懸かった試合だ。

ルリアも今までに無い真剣な目でデタリを観察する。 


「これでお前の勝ち目は絶対にない」

「・・・」

「ふ、緊張から声が出ないか?安心しろお前の勝てる可能性はないから、緊張なんて必要ないぞ」

 

 ふっとルリアの顔が明るくなる。


「あ!思い出しました!ダダルさんだ!ここまで名前が出かかっていて、凄く気持ち悪かったんですよね。あー思い出してよかった、これでスッキリしました!」

「・・・」

「あれ?ダラリさんどうしたんですか?」

「・・・殺す」

「へ!?」


 怒りの表情のデタリとアホ面のルリアの試合が開始された。

     

 




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