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三時五分(ご『ぷん』)?

 とある中国人と話しているときのことだった。彼女が「三時五分になったら……」と言ったとき、「五分」のことをゴ()ンと発音していて思わず「え? 《《()()()》》?」と聞き返してしまった。


 日本語の序数詞の中でも「分」や「本」は不思議で、「いっ()ん、に()ん、さん()ん」、「いっ()ん」「に()ん」「さん()ん」と前に来る数字によって発音が変わる。

 ゴプン、という発音は日本人からしたらとてもおかしいが、実はコレ、外国人にとってはとても習得が難しい部分の一つなのだ。


 こういう発音の変化が起きる理由について私なりに考察してみた。

 そもそも日本語のハ行は昔の日本語だとパ行であった。沖縄の方言だとまだ残っていてハナをファナとかパナとか言う。

 そしてイチ+ポン、ニ+ポン、サン+ポンであったわけだが、ハ行の発音がpからhに変わってにほんに関してはもとの発音が失われた。しかしイチ+ポンはおそらく元の発音の時点で促音便が起こって「いっぽん」になったので残存したのではないだろうか。この促音便が起こった原因はただ言いにくかったからか、漢語の発音の影響を受けたものだと推測する。

 ただ言いにくかったから促音便が起きたと考える場合の説明はこうだ。まず、「イチポン」と自分で発音してみれば分かると思うが、「チ」がほとんど子音だけになっていることに気づくだろう。日本語は標準語だとこういう母音脱落がよく起きる。「行きました」と発音した場合でも「キ」や「シ」はもうほとんど子音だけになっている。おそらく古語でも似たような現象が起きて、イチポンのチが弱まった結果そうなったのではないだろうか。

 また、イチは本来の中国語の発音では入声(末子音)が-tの音節で、実際入声がまだ残っている広東語だと「yat1 ヤッ、のような発音」になる。itiになったのは日本人にとってこの末子音が発音しづらかったので母音を付けたしたせいである。(同じような現象は英語外来語でも起きている。例えばスマートは本来末子音が-tだが、日本語の音節構造的にtは末尾に来られないので「ト」になる)

 つまりイチ+ホンをもとの中国語の発音的に読めば日本人の耳には「イッポン」に聞こえたはずである。(広東語で読むならyat1bun2 ヤップン、になる。他の大半の言語と違って、中国語の末子音は帯気しないためほとんど聞こえない)


 ではサンボンは何なのかというと、三は末子音が-mになので鼻音のmにつられて後ろのpが連濁してbになるのではないだろうか。実際、現代中国語(普通話)でもngやnが末子音に来て後ろにdやbと言った無気音が来ると、つられて中国語に本来ないはずの濁音が出てくる場合がある。つまり音便の類である。

 しかしなぜか三分はサン()ンだし、説明してみたところで覚えやすくなるわけでもないというね……。

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