小さな冒険者たち
「じゃあ約束、なんだった?」
三人は次の日には親からの許可を取り付けてきた。
今は薬草採取に向かう道中。
最近の異変もあるから本当はギルバートさんに同行を頼みたかったんだけど、今日は朝から見当たらなかった。
いらない時ばっかいて、何故必要な時にいないんだろう、あの人。
そんなことを考えつつ振り返ると、三人は慌てて答えた。
「リヴィアさんから離れない!」
「危ないと思ったらすぐ逃げる!」
「勝手に森の奥へ行かない!」
「よし、合格」
えらいえらい、と頷けば三人とも少し得意げな顔になる。
「りびー!」
「せんせー!」
「えらーい!」
肩の上の術式ちゃんたちまで便乗し始めた。
誰が先生ですか。
嬉しいのでもっと褒めていいよ!
「でもさ」
トーマくんが首の後ろで手を組む。
「リヴィアさんって本当に強いのか?」
「え?」
「父ちゃんが言ってたけど条件付きA級ってすげー強い奴なんだろ?」
「そうなの?」
「でもリヴィアさん、全然そんな風に見えませんけど」
三人の目が疑うように私を見た。
「信用してない顔してるね?じゃあこれでどう?」
三人のおでこに指先でちょん、と術式を書く。
ぽこん、ぽこん、ぽこん。
小さな術式ちゃんが一匹ずつ生まれた。
「おしごとー!」
「まもるー!」
「ちびたちまかせろー!」
三匹は嬉しそうに飛び回ると、それぞれトーマくんたちの肩へ飛び乗った。
「うわっ?!」
「な、なに?!」
見えていないはずなのに、何かを感じたのか三人がきょろきょろ辺りを見回す。
「なんか肩重くない?」
「え?」
「誰か乗ってるみたい……」
ノアくんの言葉に思わず噴き出しそうになった。
大正解である。
「トーマくん、ちょっとこっち」
「なんだよ」
トーマくんの頭に向けて軽く手を振り下ろす。
すると。
カキン。
小さな金属音が鳴った。
「うおっ?!」
トーマくんが目を丸くする。
「今のなに?!」
「防御」
「へぇ!」
興味津々で頭を触り始める。
「じゃあ俺も!」
今度はトーマくんがノアくんの頭を軽く叩いた。
「いてっ」
「あれ?」
「なんで?さっきリヴィアお姉ちゃんのは防がれてたよ?」
「そうだよ!なんで俺は防げてノアは防げなかったんだ?」
「...なんでだろ?」
「え?」
「いつもは大体防げるんだけどなぁ?」
「じゃあ俺が強すぎたってことか?」
「もうっ!トーマはすぐ調子にのる」
「いつものことですね」
「りびよわーい!」
「とーまよりよわーい!」
「ぽんこつー!」
こら!黙りなさい!!
そんなやり取りをしているうちに、目的の森へ到着した。
「うわぁ!ここが薬草採取の場所ですか?」
「すげぇ!」
「いっぱい生えてる!」
王都から離れていないけれど人の手があまり入ってない草原。
そこが今回の採取地。
「じゃあ薬草探しはじめようか」
はじまって数分、もうトーマくんとリリーちゃんが揉め出した。
「リリー、これは薬草?」
「ちがうよ」
「え?じゃあこっちは?」
「そっちは薬草、もうっ!ちゃんと見て!」
「どう見ても同じにしか見えないんだけど?!」
「全然違うでしょ!それにトーマ、根っこごと抜いちゃだめ!」
「なんで?」
「もう生えなくなるから」
「だめなのか?」
「薬草駆逐してどうするの!」
その横で周りを見渡していたノアくんが、あ、と声を上げた。
「どうしたの?」
「こっちにもあります」
ノアくんが指差した先には薬草が群生していた。
「本当だ、よく見つけたね」
「えへへ」
「順調だね」
「楽勝じゃん!」
「薬草いっぱいある!」
「だからって油断しないの」
「なぁ!もっと奥まで行こうぜ!」
「今日は行かない、ここまでだよ」
「えー」
「約束」
そう言えば、トーマくんはぐっと言葉を詰まらせた。
「……あれ?」
「どうしたの?」
「なんか焦げ臭くないですか?」
「焦げ臭い?」
「あっちから」
ノアくんが森の奥を指差した。
「え?」
リリーちゃんが鼻をひくつかせる。
「言われてみれば……」
「火事か?」
トーマくんが首を傾げた。
次の瞬間。
ギャオオオオオオオ!!
森に咆哮が響いた。




