第006話 足がちょっと痛いです
「余裕ですね」
リーエが俺達にまったく気付いていない兵士達を見ながらつぶやく。
「魔法がない世界だろ? 対策なんかないし、ザルだ」
ミスディレクションにも対策魔法がある。
「このまま行きますか?」
「ああ。わからないことが多い。魔力があまり残っていないが、未知の土地だ。念のためにミスディレクションはかけたままにしておこう」
「ヴェルナー様にとって魔力は生命線です。私が代わりに使いましょう」
「頼む」
ミスディレクションをリーエに代わりに使ってもらうと、町を歩いていく。
どうやらこの辺りは普通の住宅街のようで道を歩く町人や井戸端会議をしているおばちゃん達が見える。
「普通の町だな」
「王都だけあって大きいと思いますが、人間も服装も同じですね。ついでに言えば言語もです」
まあ、言語は魔法があればどうとでもなるのだが……
「ここ、本当に別世界か?」
「色んなところが同じですよね……もしかして、遠い地に飛んだのでは?」
うーむ……しかし、魔法がないというのがな……
それに俺の魔法が失敗するわけないし。
「たまたまということでいいか?」
「どうぞご自由に。ヴェルナー様は失敗しませんし、主目的である『逃げる』は遂行されております。さすご主ー」
よし。
「セシリアはどう思った?」
「何とも言えませんね。不明な点が多すぎます」
だよな。
あの女、ちょっと変なのだ。
「まあいいか」
俺達はその後も町を見て回る。
住宅街を抜けると店が多い通りに出たのが、一気に人が多くなった。
店は色んなものが売られているし、特に魔道具は見るところが多い。
「本当に魔道具が発展しているんだな」
「そのようですね」
俺達はとある魔導具屋に入って商品を見たり、レジの受付の方を見て、客と店主のやり取りを観察していた。
「お金は紙幣のようですね」
「金貨や銀貨、それに銅貨はなしか」
金貨10枚くらいなら持っているのだが。
「金貨なら売れるかもしれませんね」
そうだと良いがな。
「それである程度に金になればちょっと安心だな」
俺達は店を見て回っていき、色々と調べると、通りを出た。
すると、大きな城が見えてくる。
「あれが王城か」
「警備も厳重ですし、そうだと思います」
門の前には門番の兵士がいるし、城の周りを歩いている見回りの兵士もいる。
「魔法が使えるから国に仕えれば重宝されると思わんか?」
「思いますが、馬車馬のごとく働かされます」
それは嫌。
「俺には俺のやることがある。魔法の研究をし、誰も到達できていない領域に行くのだ」
それが子供の頃からの目標だ。
「素晴らしいことと思います。それらを加味しながら今後のことを考えましょう」
「そうだな」
俺達は王城から離れると、また別の区域に向かった。
「ここは……高級住宅街か?」
「そのようですね」
家の造りが異なっているし、大きさもかなりある。
それに門にはやはり門番がいる。
「そうなると、セシリアは……」
「色々と事情がある令嬢かもしれませんね」
そうだと思う。
「どうする?」
「ヴェルナー様の御心次第です。ただ、恩に報いることは大事なことだとも思いますね」
確かにな。
「ここはいい。別のところを見てから帰るか」
「そうしましょう」
俺達はこの場を離れると、別の区域を見て回る。
そして、日が沈みだしたのでセシリアの屋敷に戻ると、堂々と正面から入り、裏口から屋敷の中に入った。
「おかえりなさいませ。王都はどうでしたか?」
オラースが出迎えてくれる。
「すごい人だったな。俺達がいた帝都と比べても多かった」
「この国で一番の人口を誇るのが王都です。お疲れでしょう? どうぞこちらへ」
オラースに案内され、とある部屋に入る。
そこは客室のようでベッドが2つとテーブルなんかがあった。
「ここを使っても良いのか?」
「はい。今日はこちらでお休みください。どうぞお座りを。今、お茶を淹れましょう」
オラースがお茶の用意を始めたのでリーエと共に席につく。
「ふう……リーエ、どう思った?」
「こちらの世界でも馴染めそうだと思います。そこまで大きな差はないです。上手く魔法を隠せば、仕事をしながら生活ができると思います」
何とかなりそうか。
「仕事は冒険者とやらだな?」
「まずはそれでしょうね。しかし、少し問題があります」
「何だ?」
「服装です。探索中に冒険者らしき剣を持った男性の方を見かけました。ヴェルナー様はどう見てもデスクワーカーです。というか、私のドレスもですが、ヴェルナー様のような格好をしている人を見ませんでした」
確かにな。
「これは魔導士の正装だからな……オラース、やはり変か?」
現地民に聞いてみる。
「執事服を着ている私が言うのも何ですが、あまり見ませんね。目立つと思います」
オラースがはっきりと告げる。
「服か……オラース、ちょっといいか?」
「何でしょう?」
オラースは俺達の前にカップを置く。
「これを買い取れないだろうか?」
空間魔法から財布を取り出し、金貨をテーブルに置いた。
「すみません。その前に確認なのですが、今、何もないところから財布が出てきました。それも魔法で?」
「ああ。空間魔法だ。術者の魔力に依存するが、かなりの量を手ぶらで持ち運べる便利な魔法だな」
難易度自体は初級。
ただ、容量を増やすのが難しい。
「なるほど。実はこの世界にも魔法のカバンというものがあります。こちらはかなり高価なものですが、これから先、そういう魔法を使う際は偽装用のカバンをお持ちになり、カバンに手を突っ込みながら使われた方がよろしいかと思います」
実にタメになる意見だ。
「教えてくれて感謝する」
本当にセシリアもオラースも良い人だ。
現地民とのファーストコンタクトがこの2人で良かった。
「いえ。それでこちらですね? これは金ですか?」
オラースが金貨を手に取り、凝視する。
「ああ。俺達がいた国の貨幣である金貨だ。町を見て回ったが、こちらは紙幣のようだった」
「はい。紙幣です。単位はソルになります。パンがだいたい100ソルですね」
とりあえず、1円1ソルと覚えよう。
「さすがにそれは使えない。だから換金したいのだが、どうだろうか?」
「ふーむ……金は売れます。知り合いの店で聞いてきましょうか?」
「いいのか?」
悪いな……
「ええ。それくらいはすぐです」
「そうか……10枚ある。それを換金して欲しいのと服を買ってきてほしいんだが、頼めるだろうか? 安いものでいい」
ついでに頼んじゃえ。
「お安い御用です。どのような服装がよろしいでしょうか?」
「俺達は冒険者になるつもりだ。動きやすいのが良いな」
「わかりました。それではすぐに用意致します」
オラースは一礼すると、金貨を持って部屋から出ていった。
「恩を積み重ねていきますね」
「ちゃんと返すよ」
「それもそうですね。少し休みますか」
「ああ」
俺達はお茶を飲みながら休むことにした。
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