第018話 おやすみなさい
風呂から上がり、身体を拭くと、洗濯機にタオルを入れ、扉を閉める。
「イレーネ、洗剤とかないのかー?」
『その辺も自動だからスイッチを押すだけでいいわよー』
すごいな、おい。
本当に技術力がすごいなと思いつつ、スイッチを入れると、ゴトゴトと動き出したので服を着る。
そして、脱衣所から出たのだが、イレーネが何かを描いており、リーエがその様子を見ながらニヤニヤしていた。
「何してんだ?」
「地図を描いているのよ。そして、あなたのホムンクルスちゃんがバカにしてる」
なんでだと思い、テーブルに行き、地図とやらを見たのだが、よくわかった。
丸っぽくて小学生が描くような地図なのだ。
「地図って売ってないのか?」
「節約。それにおおまかで良いから」
じゃあ、仕方がないな。
特にツッコむこともせずに席につく。
イレーネは前かがみで一生懸命地図を描いていた。
「「………………」」
リーエと顔を見合わせる。
「……何よ?」
「「いや?」」
リーエと揃った。
「ヴェルナーまでバカにする……」
「それはしてない。本当にな」
そういうことじゃないんだよ。
「じゃあ、何?」
「服装を考えたらどうだ?」
「その格好でその姿勢はないですよ」
薄着のネグリジェで前かがみになっているから谷間がざっくり。
「そっちね。好きに見なさいよ。私は気にしない」
貴族令嬢さんはそれでいいのかね?
「まあ、イレーネが良いならそれで良いけど……」
「さすがは夜に男の部屋を訪ねるイレーネさんですね」
「それどころか同じ部屋で寝るイレーネさんよ……よし、できた」
イレーネが顔を上げる。
「ふむ……」
「ほうほう……」
俺とリーエが地図を見る。
「下手さは置いといてね」
今は目的地を知りたいだけだから適当な地図でいい。
余裕ができたら地図を買えばいいだろう。
「確かこの国はリーフェル王国だったな」
「ええ。ここが王都で今はここね」
イレーネが王都と書いてある丸を指差すと、指を右に走らせ、森と書いてある丸を通ってアルベンと書かれた丸で止める。
「ここからどうするんだ?」
「2つある。ここから南に行き、コスタリナ王国に向かう案。もう1つはここからさらに東に行き、このマリティアの町から船で別大陸に向かう案ね」
陸路か海路か……
「コスタリナ王国の理由は?」
リーエがイレーネに聞く。
「コスタリナはリーフェルと仲が良くない国なのよ。だから追手を撒ける。私は国に追われているわけではなく、一貴族に追われているわけだからさすがに敵国に逃げたら手出しできないわ」
国際問題になれば重い責任になるか。
「なるほど。もう1つが海を渡って距離を取る案ですね」
「そういうこと。ヘタクソでわかりづらいけど、マリティアはここから比較的近いわ。ただ、船に乗るのにお金がかかる。コスタリナは陸路だから安価だけど遠いわね」
地図を見る限り、確かに距離に差がある。
「船に乗るのにはいくらくらいかかるんでしょうか?」
「1人20万ソル」
高いな。
「そんなにするんですか?」
「近場だったらもっと安いけど、別大陸に行くわけだからね。そんなものよ」
「なるほど……イレーネさんの所持金が40万ソルでしたね……足りませんね」
足りないな。
「剣を売るってば。それくらいにはなる」
それはなー……
元軍属の俺としては剣士が剣を売るのはどうしても気が引ける。
ましてや、イレーネの剣は安物じゃない。
こういうのは売る時に買い叩かれるものだし、後のことを考えると売るのは得策じゃないのだ。
「ミスディレクションでいけますかね?」
リーエが聞いてくる。
「お前だけならいけると思う」
「では、足りますね」
お釣りなしでぴったりだ。
「余裕ゼロだな。イレーネ、マリティアまでは?」
イレーネに確認する。
「乗合馬車で行きたいと思っている。料金はそんなに高くなかったと思うけど……1万か2万ソルじゃなかったかしら? 時間的には明日の朝に出れば、明後日の夕方には着くわね」
「行ったことあるのか?」
「ええ。港町で海が綺麗よ」
ふーん……
「馬車代……食費……ギリってところか?」
現所持金は4万ソル。
「そうね。マリティア方面だとそうなる」
「そっちが良いだろ。陸路になると、馬で追われたら確実に戦闘だぞ。別に負けやしないが、リスクを取るべきじゃない」
「私もそう思います。イレーネさんのお父さんの人となりがわかりませんが、貴族は敵に容赦しないイメージがありますし、コスタリナに逃げてもまだ安心はできません。それにイレーヌさんとしても、別大陸に行き、心機一転で次の人生を歩んだ方がよろしいかと思います」
俺もそう思う。
娘を身代わりに使うような奴だし。
「次の人生か……」
「はい。私達もお供しましょう」
「俺達も行く当てなんてないしな」
付き合おうじゃないか。
「いいの?」
「魔力操作のこともあるしな。何だったら便利な魔法も教えてやる」
イレーネほどの魔力と才があれば大抵の魔法は使えるようになる。
「ええ。共に魔法の真理を追究しましょう」
「真理はよくわからないけど、じゃあ、海路でいきましょう」
マリティア方面だな。
「明日の朝に出発だな? 食事は?」
「乗合馬車の近くに露店があると思うわ。そこでパンなり、携帯食を買う感じね」
携帯食か……不味いんだよな。
この世界は技術発展しているし、携帯食のクォリティーに期待するか。
「何時起きですか?」
リーエが確認する。
「6時には出ると思うから。5時半には起きたいわね」
早いなー。
「了解しました。寝坊助ご主人様と悠々自適に暮らしてきたお嬢様が起きられるか微妙なので私が起こしましょう」
「頼むわ……」
「お願い……」
5時半は自信ない。
「では、今日は早めに寝ましょう。御二人共、飲んだらダメですよ」
飲まない、飲まない。
「さすがに飲まないわよ。疲れたし、寝るわ。おやすみ」
イレーネは立ち上がると、ベッドの行き、倒れ込む。
「俺達も寝るか」
「そうですね。実に43時間ぶりのお布団です」
おー……寝よう!
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