第019話 もう?
「――ルナー様、ヴェルナー様、朝ですよ。起きてください」
身体を揺すられたので目を開けると、リーエがいた。
「もう朝か……一瞬だったな」
身体を起こし、手を伸ばす。
「お疲れだったんでしょう。どうぞお水です」
「悪いな」
コップを受け取り、水を飲むと、リーエが綺麗な生足が見えているイレーネのところに向かった。
「イレーネさん、起きてください。朝ですよ」
「うーん……朝かぁ……」
イレーネも身体を起こした。
眠そうな顔をしているし、髪の毛がぴょんと跳ねている。
「朝食をお願いしてきますので御二人はシャワーでも浴びて、しっかりしてください」
よく見ると、リーエはすでに着替えているし、俺とイレーネのベッドの端には折り畳まれた服が置いてあった。
「ありがとう……」
「いえいえ。私の仕事です」
リーエはそう言って部屋から出ていった。
「イレーネ、先に入ってくれ」
「はーい……ありがとうね……」
イレーネは眠そうな顔でベッドから降り、服を持って風呂場に向かった。
俺もベッドから降りると、テーブルにつく。
そのまま待っていると、リーエが戻ってきた。
「イレーネさんはシャワーですか?」
「ああ。リーエは何時に起きたんだ?」
「1時間前には起きてましたよ。ご主人様より遅く起きるなんてありえません」
できたお手伝いさんホムンクルスだ。
「身体の方はどうだ?」
「あれだけ休めば大丈夫です。ドラゴンも倒せます」
ドラゴンがいるのかねー?
さすがに俺もドラゴンスレイヤーの称号は持っていない。
俺達が話をしていると、風呂場の扉が開き、冒険者服に着替えたイレーネが出てくる。
髪も寝ぐせがなくなった綺麗なポニーテールであり、目もシャキッとしていた。
「どう?」
イレーネがドヤ顔で聞いてくる。
「今日もお美しいと思います」
「絵になるな」
ぱちぱちー。
「そうでしょう、そうでしょう。あ、お先にでした。ヴェルナーもシャワーを浴びて、イケメンになってきたら?」
「そうする」
ベッドに置いてある服を持つと、風呂場に向かい、シャワーを浴びる。
そして、風呂から上がると、朝食が来ており、2人が席についていた。
「あ、上がった? かっこよくなったじゃないの」
イレーネって賛美を要求するが、ちゃんと褒めてくれるんだよな。
「どうも。パンとスープとスクランブルエッグか」
普通だ。
俺は目玉焼き派なんだが。
「こんなものよ。果物と木の実よりはずっと良い」
「確かにな」
席につくと、3人で朝食を食べる。
「イレーネ、乗合馬車ってどんなのだ? ウチの国にもあったが、乗ったことがない」
俺が乗るやつはそれはもう豪華な馬車だ。
若い頃の軍属時代はひたすら歩きと走り。
「皆でお金を出し合って馬車に乗り込む感じね」
すし詰めかな?
「辛くないか?」
「そこはちょっと考えがある。馬車って一台で行くわけじゃなくて、自衛のためにキャラバンを組むのよ。だから私達は乗合馬車じゃなくて、商人の馬車に乗せてもらおうかと思っている」
ふむ……
「乗せてくれるのか?」
「そこは交渉。ウチには魔法のカバンがあるのよ」
イレーネがベッドの上に置いてあるリーエのカバンを指差す。
「普通のカバンだな。オラースが空間魔法を使う時はそれで偽装しろって言っていた」
「それよそれ。正直ね、乗合馬車ってトラブルも多いのよ」
そんな気がする。
「それを避けるために商人の荷物を魔法のカバンに入れてやるから乗せてくれって頼むのか?」
「そういうこと。商人は食いつくわよ。魔法のカバンを持っている商人も多いけど、高いから数は持ってないからね」
トラブルを避けるのは良いな。
こっちは目立ちたくない事情があるし。
「できるのか?」
「女性冒険者はよくやるのよ。対価は魔法のカバンじゃなくて、護衛だけどね」
護衛するから乗せてくれか。
「リーエ、どう思う?」
「良いと思います。イレーネさんはお綺麗ですし、変なナンパに絡まれても面倒です。乗合馬車の嫌なところは一種の閉鎖空間となり、逃げられないことですからね。最初から対策し、自衛すべきです」
ふむふむ。
俺にはわからない女性の意見だ。
「わかった。じゃあ、そんな感じでいこう。イレーネ、任せる」
「ええ。慣れたものよ。上手くいけば運賃も無料でいける」
昨夜、イレーネが乗合馬車の運賃をうろ覚えだったのはいつもこうやっていたからだな。
「よし、じゃあ、さっさと行くか」
「ええ」
俺達は朝食を食べ終えると、片付けをする。
そして、それぞれ剣、カバン、弓なんかを装備すると、部屋を出た。
「おっ、出かけるのか?」
エントランスまで出ると、掃除をしているおっさんが声をかけてくる。
「ああ。世話になったな」
「まいど。また来てくれよな。それと昨日の夜から兵士が増えているから気を付けな。何かの事件かもしれん」
兵士……
「犯罪か?」
「わからん。昼ぐらいになれば情報も入ってくると思うんだがなー」
「そうか。まあ、俺達はすぐに南のコスタリナに向かうから大丈夫だ」
「そうかい。気を付けてな」
「ああ」
おっさんに別れを告げると、扉に向かう。
『リーエ、出たと同時にイレーネにミスディレクションをかけろ』
『了解です』
俺達は何食わぬ顔で宿屋を出た。
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