第015話 結婚しちゃえ
目が覚めると、周囲が明るくなっていた。
そして、毛布にくるまっているイレーネと準備運動をしているリーエがいた。
俺達は順番に見張りをして休んだのだが、リーエが最後だったのだ。
「おや? おはようございます」
「ああ。おはよう。何かあったか?」
「何もありません。穏やかな森のようですね」
穏やかな森に盗賊は出てこない。
「イレーネを起こしてくれ」
「はい。イレーネさん、イレーネさん、起きてください」
リーエがイレーネを起こし始めたので立ち上がり、身体を伸ばす。
「おはよー……」
イレーネが薄目を開けた。
「おはようございます。はい、あなたの名前は?」
「セシリア……あ、イレーネか」
「はい、そうです。すぐにイレーネが出るようにしてくださいね」
「頑張る。ふわーあ」
イレーネも立ち上がり、身体を伸ばす。
「身体の方はどうだ?」
「うん、大丈夫。喉が渇いてるけどね」
それは酒のせいだ。
実際、俺も乾いているし。
「リーエ、コップをくれ」
「はい」
リーエがコップを配っていったのでそれに魔法で水を入れる。
「便利ねー」
「それが魔法だ」
俺達は水を飲む。
「しかし、食べ物がないですね」
さすがに食べ物を出す魔法はない。
当然、空間魔法にも何も入っていない。
「この森は豊かだから果物とか木の実があるわ。食べられそうな動物が出ればいいけど、基本はそれで凌ぎましょう」
「そうするか」
「時間は……6時か。オラースが私を起こすのが8時、そこから父に報告する感じになると思うわ」
イレーネが懐中時計を見る。
「今日一日は王都内を探す。それから追手が出る感じだったな?」
「多分ね」
あくまでも予想にすぎないか。
「行こう。休み休みに行くが、走るぞ」
明るいし、これなら走れる。
「ええ」
「早く馬か馬車が欲しいですねー」
俺達は片付けをすると、ジョギングくらいのペースで走り出した。
「リーエ、こんな感じ? 魔力は動いている?」
イレーネがリーエに聞く。
「ええ。わずかですが動いています。やはり強化魔法を無意識に使っているようですし、当面は身体を動かしていきましょう」
「わかったわ」
俺達が走りながら、途中にある果物や木の実を採る。
食べられるかどうかもイレーネが教えてくれるので安心して食べることができた。
ただ、やはり果物や木の実だけでは満足感がない。
「腹減ったな」
「動物が出てこないのよね……まあ、街道を進んでいればそうなんだけどさ」
「探すか?」
「いえ、先に進みたいわ。我慢して、アルベンに着いたら食べましょう」
昨日の豪勢な夕食が懐かしいわ。
「5万ソルほど持っているんだが、足りるか?」
「5万? そりゃ足りるけど……あなた達、無一文じゃなかったの? 昨日でもうそれだけ稼いだわけ?」
イレーネがちょっと驚く。
「オラースに俺達の国の通貨である金貨を換金してもらったんだ。10枚ほどあったんだが、それで服と剣を買ってもらい、お釣りで5万ソルをもらった」
「そんなに高値で売れるかしら? 金貨ってことは小さいわけでしょ?」
「このくらいだな」
指で円を描く。
「絶対に無理よ」
やっぱりか。
「オラースは魔法が使える俺達にお前を託したかったんだろう」
「そう……オラース……無事だと良いけど」
ホントにな。
「イレーネさんはいくら持っているんですか?」
「40万ソル」
金持ちだな。
「結構、持ってますね」
「Bランクだったからね。その時の貯金。でも、これは使えないわ。詳しくはアルベンに着いたら説明するけど、逃亡資金なわけ」
アルベンで足を確保するって話だったしな。
「じゃあ、俺達の使える資金は5万ソルと考えればいいな?」
「ええ。2、3日はご飯と寝床は考えなくていいって感じね」
本当に1ソル1円で良さそうだな。
「もうちょっと余裕が欲しいですね」
「確かにな。稼ぐか?」
「できたらアルベンも早めに出たい。稼いでる時間はないと思う。最悪は私の剣を売るわ」
昨日見たが、良い剣だったし、高そうだったな。
「盗賊から奪えば良かったか?」
特に戦利品のことを考えずに地面に埋めてしまった。
「ないない。お金がないから盗賊なんて非効率なことをするのよ。盗賊は問答無用で縛り首だからね」
リザルトのない敵だったか。
「剣は売るな。節制していこう」
「わかった」
俺達は所々で軽い休憩を挟みながら走っていく。
すると、夕方くらいには森を抜けることができた。
「あれか?」
前方にはかなり遠いが、町らしきものが見えている。
「ええ。あれがアルベンの町。予想以上に早く着いたわね。深夜に着くと思ったんだけど、あなた達も結構、体力があるんだ」
「誰にものを言っている? 強化魔法も魔法だぞ」
「あー、そういやそうね。魔法の天才様には余裕か」
そうそう。
「まあ、単純に軍属だったこともあるから体力もある」
めっちゃ走らされたし。
「それは本当に心強いわ。どうする? 町に行ってしまう? 町も日が暮れたら門を閉めるからギリってところよ?」
「門は検問というか、門番がいるのか?」
「いるわね。私の冒険者カードは使えないし、旅の人間ってことで誤魔化すしかない。幸い、リーエがいるから怪しいと思われることはないわ」
子連れだもんな。
「行こう。それに門を通るのはやめた方が良いだろう。イレーネは目立ちすぎる」
「美人だしね」
イレーネがドヤ顔になる。
「そうそう」
「……自意識の高さはそっくり。お似合いですよ」
どうも。
「門を通らないってことは王都を出た時と同じ感じ?」
「ああ。それでいこう」
「わかったわ。じゃあ、行きましょう」
俺達は休憩を終え、町に向かって走り出した。
お読み頂き、ありがとうございます。
この作品を『おもしろかった!』、『続きが気になる!』と思ってくださった方はブックマーク登録や↓の『☆☆☆☆☆』を『★★★★★』に評価して下さると執筆の励みになります。
よろしくお願いします!




