第014話 ご主人様の敵じゃないのです!
「ッ!? 盗賊!?」
セシリアが立ち上がり、腰の剣に手をやる。
「大人しくしな」
「もう囲んだぞ」
剣を持った男達が徐々に距離を詰めてくる。
人数は8人であり、鎧なんかは着ていない。
「近づかないで! これ以上は斬るわよ!」
セシリアが剣を抜いた。
セシリアの剣はショートソードだが、きらりと光っており、安物ではないと思った。
「やる気か?」
「大人しくしろよ。命までは取らないからよ」
本当かね?
「何の用だ?」
一応、聞いてみる。
「金と女を置いていきな」
「兄ちゃん、良い女とガキを連れているじゃねーか」
リーエもか。
「やめておけ」
「あん?」
「怖くて立てない野郎が何言ってんだ?」
ハァ……
「やめなさい! 私を誰だと思っているの? セシリア・オクレールよ!」
名乗るかね?
「セシリア……白銀か!」
「確かに銀髪だが……」
「いや、セシリアは貴族に嫁いだんだろ。偽物だ」
セシリアって想像以上に有名だな。
「盗賊共、すまない」
「あ?」
「何だ? 自分だけは助けてほしいってか?」
「面白いこと言うな。ははっ」
そんなことは一言も言ってない。
「本来なら大人しく下がれば見逃すという勧告をするはずだった。しかし、セシリアを知っているなら話は別だ」
むやみに命を取る気はなかった。
「あん? こいつ、何言ってんだ?」
「知らねーよ。面倒だし、もうやっちま――あれ?」
「あ? どうし――へ?」
男達の上半身がずれ、ぼとぼとと地面に落ちていく。
「雑魚が……敵国から人間兵器と呼ばれたこの俺に勝てると思っているのか?」
あっという間に盗賊達は2つに分かれ、地に伏した。
「さすご主ー」
「さすヴェルー……いや! え!? 何が起きたの!? 盗賊達が死んじゃったけど!?」
セシリアが驚き、焦ったような顔で見てくる。
「魔法だ。風魔法で斬ってやった」
「まったく魔力を感じませんでしたね。隠密性に優れた素晴らしい魔法だと思います。魔法使いでもない者にそれをする意味があったのか疑問ですが」
まあね。
でも、かっこよかっただろ?
「ヴェルナー……あなた、本当にとんでもない人間なのね……」
「何度も言っただろ。1000の兵を相手にしたし、俺に並ぶ魔法使いはいない」
「よっ、大魔導士!」
ふふっ。
「すんごいドヤ顔……私、とんでもない人についていくことになったわけね」
「良いじゃないですか。心強いだけです。適当に褒めておけば活躍するから楽って評判の御方ですよ?」
それは初めて聞いた。
「そう……いや、助かったわ」
まあ、魔力も持っていない相手だったし、セシリアでもやれたと思うがな。
「いや……それよりもセシリア、お前ってかなり有名なんだな」
「自分で言うのもなんだけど、そうね。さっき盗賊が言ってたけど、『白銀』っていう二つ名があるくらいには有名」
「美人ですしね」
「そうそう」
人のことは言えないが、自意識も強いな。
「セシリア、今後のことを考えて、名前を変えた方が良くないか?」
セシリアは有名すぎる。
国を出たとしても少し不安だ。
「あー、それはちょっと思っていた。私も稼がないといけないけど、ギルドも再登録した方が良いかなって」
「どういう名前にする?」
「うーん、自分で考えるのもちょっと恥ずかしいわね」
そうかね?
「リーエ、考えてみ?」
「ふーむ……イレーネはどうでしょう? 不屈の女帝イレーネ様よりもらいました」
帝国の何代前の女帝だな。
「どうだ?」
「じゃあ、それで。イレーネ、イレーネ……私はイレーネ……」
そのうち慣れるだろう。
「イレーネ・ランゲンバッハですね」
聞いたことがある馴染み深い苗字だな。
「あなた達と一緒じゃないの」
まあ、俺達の苗字だ。
「逃げているんですからそっちの方が良いじゃないですか。探す方はセシリアさん個人を探しています。私達は家族でパーティーを組む冒険者です」
意識からは外れるかもな。
「うーん……まあ、いっか。でも、お母さんとは呼ばないでね」
「私は親戚の子ですよ」
そういう設定だったな。
「決まったか?」
「名前はこれで良いと思います。容姿はどうします?」
確かにそれも変えた方が良いか。
「そこは大丈夫だと思う。冒険者時代の私は髪もショートだったし、痩せていた。婚約のことがあったから伸ばしたし、肥えたのよね」
全然、太ってないが?
あ、女性的にか。
「では、ぱっと見はわからない感じですか?」
「ええ。知り合いに会っても話をしない限りは大丈夫だと思う」
問題なさそうだな。
「よし、それでいくか。休憩はもういいだろ?」
「そうね。ここで休憩するのは嫌よ」
周りが死体だらけだものな。
「死体は処理した方が良いか?」
「いえ、盗賊だし、放っておけばいいわ」
ふむ……
「お待ちください。朝に冒険者や猟師が来るんですよね? 問題になり、イレーネさんがこっちに来たのかと思われる可能性があります」
あー、確かに。
「私にこんな芸当はできないけど……まあ、でも、それが安全か。面倒だけど、処理しましょう」
「俺がやろう」
そう言って魔法を使うと、地面が動き出し、死体を呑み込んでいく。
「なんか怖いのよね……」
「燃やすと匂うし、こっちの方が早くて良いだろ」
一瞬で炭にする魔法もあるが、森の中で使っていい魔法ではない。
「まあね。じゃあ、行きましょうか」
「そうだな」
「れっつごー」
俺達はこの場を離れると、眠かったが、頑張って歩いていく。
そして、ある程度進んだところで休むことにした。
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