第141話 抱えられるのも好きなんですね
部屋に戻ると、リーエがこちらを見てくる。
さらには風呂場からイレーネが顔を覗かせていた。
しかも、髪を下ろしているし、扉に触れている手から露出している肩までが見えていた。
多分、風呂に入る前であり、何も着ていないと思われる。
「ギルドは何だったの?」
イレーネが聞いてくる。
ちょっと首を傾げたので輝いている長い髪が垂れた。
「ベッキーからの手紙を届けてくれたんだ。風呂から上がったら見よう」
「あ、そうなんだ。じゃあ、入ってくる」
「ゆっくりで良いからなー」
イレーネが扉を閉じたのでテーブルにつき、手紙を置いた。
「ベッキーさんですか」
「ああ。まあ、教授かもしれんがな」
両方かな?
「銃の報告書の返事ですかね?」
「多分な」
俺とリーエがそのまま待っていると、イレーネが風呂から上がってくる。
次にリーエが入り、さらに待つと、最後に俺が風呂に入った。
そして、ゆっくりと湯に浸かり、風呂を堪能すると、部屋に戻り、手紙を手に取る。
「読んでよ」
「ああ」
封を開け、手紙を取り出すと、読んでみる。
「ベッキー? 教授?」
「ベッキーだ。礼の言葉と共に自分達も元気だと書いてあるな」
伝言の返事だな。
「それは良かった。それだけ?」
「いや、結構書いてあるな……ふーん……」
「何て?」
「2人はまだマルーン王国にいるらしい。こっちに来ることがあったら会いたいってよ。教授が俺が書いた銃の報告書に興味を示したらしい」
3枚も書いたからな。
「へー……まあ、私達に銃を渡すくらいだしねー」
「ああ。マルーン王国か……」
「カリス王国のどちらかで悩んでいたし、ちょうどいいんじゃない? 私も肉よりも食べられる地域が限られる魚介の方が良いわね」
俺もそう思う。
なので、マルーン王国にしないかと提案するつもりだった。
「リーエ、どう思う?」
「私もマルーン王国で良いと思いますよ。それに今、思い付いたんですけど、例の帝国の件を教授に聞いてみては? 教授をやられているくらいですし、詳しいかもしれません」
確かに……
「リーエ、地図を出してくれ」
「はい」
リーエが地図を出し、テーブルに広げた。
「マルーン王国となると、北西ね。地図を見る限り、この町から西に行って、北に行く感じ」
イレーネが地図の街道をなぞっていく。
「王都はここか。2人は王都にいるらしい」
マルーン王国に入って、さらに北だ。
「道中に町が一つあるわね。地図に書かれているってことは大きい町かしら?」
フォルバードの町だ。
「だろうな。他にも小さな町や村があると思うが、まずはここだな」
「キャラバン?」
「そこだな……どうする? 馬を買うか?」
馬車は楽だし、徒歩よりかは早いが、やはり馬に乗るのとではスピードが違う。
「買うなら馬1頭と馬車じゃなくて、馬2頭よね。最低でも100万ソルかー……」
安くはないな。
「買っても元は取れるわけだろ?」
「そりゃね。Cランクだから依頼が回ってくるようになるし、移動時間を短縮できるってことはその分、仕事に回す時間が増えるってことだもの。100万くらいはすぐに戻ってくるわ」
1日10万稼げば10日で戻ってくるってことだな。
良い狩場があれば20万も稼げるし、悪くはないと思う。
「買った方が良くないか?」
「もし、馬で行けない状況になったら置いていかないといけないわよ? 例えば、山越えとかね」
うーん……100万を置いていくわけか。
厳しい。
「とりあえず、馬の購入は保留にしませんか? 明日はキャラバンでこの国を出て、まずはフォルバードを目指しましょう」
それが良いか。
「そうね。どちらにせよ、買うならこういう大きな町じゃなくて、牧場とかがある小さな町が良いし」
そういうもんか。
まあ、牧場から直接買った方が安いのは確かだしな。
「じゃあ、そうしよう。俺はベッキー宛の手紙を書くわ。俺達が王都に着いた時にあいつらがいなかったら面倒だ」
紙とペンを取り出し、俺達もマルーン王国の王都に向かうことと教授に相談したいことがあるという内容を書き始めた。
「じゃあ、私は魔法の練習でもしようかな」
「そろそろ空を飛ぶ魔法でも覚えます?」
「うーん……空ねー……」
イレーネが悩みだす。
「あ、お嫌でしたか。では、エンチャントの練習でもしますか」
「そうする」
何が嫌なんだろうと思いつつも手紙を書き終えると、立ち上がる。
「ちょっとギルドに行ってくる。手紙もだが、荷物の運搬の話を聞いてくるわ」
「よろしくー」
「私達は行かない方が良いですね」
魔法の練習中の2人を置いて、部屋を出る。
そして、宿屋を出ると、ギルドに向かう。
時刻はすでに17時前となっており、歩いている人も増えていた。
十字路を右に曲がり、南の通りに入ると、さらに冒険者が増える。
ただ、輩のような者も多いが、強そうな冒険者の姿も見え、実は昼間より夕方の方が治安自体は良いようだった。
ギルドに着き、中に入ると、やはり多くの冒険者が並んでいたので俺も並ぶ。
しばらく待ち、徐々に前に進んでいくと、俺の番になった。
「これはヴェルナー様、どうしました?」
担当してくれた受付の男性が聞いてくる。
「さっきは手紙を届けてくれてありがとう。返事を書いたからベッキーに届けてくれないか? 会うことになったんだが、俺達が行くまでにあいつらがマルーン王国の王都から離れたら面倒だ」
「かしこまりました。それでは速達便で届けさせていただきます。2万5000ソルになります」
高いなー……
「わかった」
財布を取り出し、渋々、料金を支払う。
「それではマルーン王国の王都のギルドに届けさせて頂きます」
「ああ。そういうわけでマルーン王国の王都に向かうことになった。届け物は?」
「5冊の本をマルーン王国のフォルバードまで運んで頂きたいのです。王都までの道中ですし、寄って頂けると助かります」
本が5冊ね。
まあ、たいした荷物じゃないし、空間魔法でどうとでもなる。
「わかった。やろう」
「それでは少々、お待ちください」
受付の男性が奥に向かったので待つ。
すると、すぐに本を5冊持って、受付に戻ってきた。
「何の本だ? 重要な本か?」
それにしてはむき出しだが。
「ただの小説ですよ。こちらをフォルバードの冒険者ギルドに渡してください。それとこちらに署名を」
男性がカウンター下から2枚の書類を取り出したのでどちらにも名前を書く。
「それでは荷物と共にこちらをギルドに提出してください。それで依頼料である1万ソルをもらえます」
安いな……
手紙の配達より安い。
まあ、距離も速度も違うし、依頼料より運搬料が高いわけないのでわかるんだが。
「わかった。じゃあ、行ってくる」
「お気を付けて」
本を取ると、ギルドをあとにし、宿屋に戻った。
お読み頂き、ありがとうございます。
この作品を『おもしろかった!』、『続きが気になる!』と思ってくださった方はブックマーク登録や↓の『☆☆☆☆☆』を『★★★★★』に評価して下さると執筆の励みになります。
よろしくお願いします!




