第139話 汚物は消毒ですー
翌日も俺達は馬を走らせる。
この日も魔物が出てこなかった。
そして、翌日も進んでいくと、遠くに見えていた山がかなり近くなったし、森も見え始める。
「そろそろだな」
「そうね」
リーエが言っていた人が町を作る地形になってきた。
そのまま進んでいくと、前方に町が見えてくる。
「大きい町ですね」
「この国の第二の町だからね。コスタリナ王国もだったけど、第二の都市って治安が悪くなるようにできているのかしら?」
ミストラな。
「大きい町はそれだけ人が多く、富が集まるところですから悪い人間も増えるのです。しかし、王都は王様がいますからね。権力の強さがはっきりしているところは乱れにくいんです。一方でミストラやああいうところはあくまでも領主としての権限しか持ち合わせていない人間がトップですし、違うところから人が集まるため、管理する側も大変なんです」
外国の人間は特にそうだろうな。
「へー……リーエって博識だし、頭が良いわよね。まだ小さいのに」
「は? あ、いや、背ですね、背」
他にあるか?
「背よ。それにしても私より賢かったりして……」
「イレーネさんが私より賢いと思っていたことに衝撃です」
ノーコメント。
「私はあなたが私のことをとんでもなくバカにしているんだろうなって思ってたから衝撃じゃないわね」
「とんでもなくなんて思っていませんよ」
普通にバカにしてるんだな。
「選ばれし新人類っていうのも選民思想だし、リーエって本当に人類に反乱を起こしそうよね」
「私、暇じゃないんで。よく寝る旦那様と奥様のお世話で忙しいです」
いつもすまないねぇ……
「リーエっていつも何時に起きてるの? 起きたら着替えて、準備もばっちりだけど」
「御二人を起こす1時間前に起きてますよ。私はお手伝いさんなので当然です」
「リーエは偉いわねー」
イレーネがリーエの頭を撫でる。
「それが仕事です。見た目以外はずぼらなところがあるイレーネさんを支えます」
「ヴェルナーは?」
「ヴェルナー様はもっとずぼらです。まあ、そもそもそのために作られたのが私なので当然です。きっちりとして、全部自分でやられる方はお手伝いさんなんて必要ないですから」
それはそう。
「じゃあ、私達が寝ているのもリーエの仕事にためには仕方がないことなのね」
「そうですね。私、イレーネさんのそういうところが好きですよ」
リーエが嫌味を言ったところでルミフィアの町の南門に到着する。
門の近くに兵士がいたのでそこまで行くと、馬から降りた。
「ん? どうした?」
兵士が聞いてくる。
「王都から届けものだ。馬をルミフィアの南門までということだった」
そう言うと、リーエが書類を取り出し、兵士に渡した。
「ほう……確かにそう書いてあるな。それでは、受け取ろう」
兵士が書類にサインし、リーエに返したので手綱を渡す。
「冒険者ギルドはどこだろうか?」
「ギルドなら町に入り、まっすぐ行けば見えてくると思う」
「わかった。ちょっと行ってみる」
「ああ。ご苦労だった」
俺達は町の中に入る。
町は王都ほどではないが、多くの人が歩いており、かなり活気のある町だった。
「ミストラよりも大きいな」
「ええ。というか、これまでの国では各国の王都を除けば一番じゃないかしら?」
そんな気はする。
「ヴェルナー様、ミスディレクションをかけます」
「頼む」
頷くと、リーエが自分とイレーネにミスディレクションをかけた。
「よし、ギルドが混む前に行こう」
「今は15時ね……まあ、観光なんてしないし、ぱぱっと行って、宿屋にでも行きましょう」
「ああ」
俺達はギルドを探しながら大通りを歩いていく。
どうやらこの辺は武器屋や防具屋、それに野営道具が集まっている区画のようで冒険者の数が多かった。
ただ、その冒険者もミストラで見たような半分、野盗っぽいみすぼらしい者からガラの悪い者が半分くらいを占めている。
「ほぼ輩だな」
「ヴァンナが行きたくないって言うわけだわ。自慢じゃないけど、ミスディレクションをかけてもらってなかったら声をかけられそう」
そんな感じはする。
幸い、こちらを注目するようなことはないが、それでもさっさと通り過ぎた方が良さそうだった。
「歩く速度を速めるぞ」
俺達は早歩きで大通りを進んでいった。
すると、剣が交差する看板の建物を見つけたのでさっさと中に入る。
中は受付が8つある規模の大きなギルドだったが、幸い、輩のような冒険者はおらず、普通の革鎧を着た人間が数人いるだけだった。
「すごいわね。受付に男性しかいない……」
イレーネが言うように8つある受付は皆、男性だった。
「やっぱり治安の悪さか?」
「なりたいっていう人がいないんでしょうね。多分、前に何かあったんでしょう」
ナンパかな?
それも強引なやつ。
やはり良い町じゃないなと思いつつ、正面の30代くらいの男性のもとに向かった。
「いらっしゃいませ。ご依頼でしょうか?」
男性が声をかけてくる。
「依頼達成の報告だ」
「かしこまりました。それでは書類とギルドカードをお願いします」
「ああ」
俺達はそれぞれギルドカードと書類を出し、カウンターに置いた。
男性は俺とイレーネのギルドカードを確認し、書類を見ていく。
「確かに依頼達成を確認しました。それでは報酬をお支払いしますので少々、お待ちください」
男性はそう言うと、ギルドカードを俺達に返し、奥の部屋に向かった。
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