第14話 妖精のひみつ
シルフィーナは助手席のヘッドレストのところに座り外を見ている。ずっとペーパードライバーだったので安全運転を心がける。気がつけばシルフィーナは外を見るのが飽きたのか助手席のシートに降りて眠っていた。車が動き出した当初は「あれは何?」などと絶えず騒いでいたのが嘘みたいだ。
結構な田舎なので車の数も少ないしそれ以上に外を歩いている人の姿は皆無だ。特に夜ともなると極端にその数を減らす。街灯なんてないような田舎なのでそれも仕方がないことだと思う。
たまに学校帰りの学生が自転車ですれ違うくらいだろうか。そんな道を進みスーパーへたどり着く。流石に地元で一軒しかない総合スーパーなので、駐車場は半分ほど埋まっている。
「シルフィーナついたよ」
「それじゃあ姿を消してオトハの肩に乗るわね」
姿を消して見えなくなったシルフィーナが、私の肩の上に座ったのか少しだけ重さを感じた。マイバッグと財布を持ち、車を降りて店へ向かう。なかなかの広さのある総合スーパーで、日用品からペット用品、車の整備や点検までできる設備が備えられている。
「晩御飯はお弁当でいいかな」
もう既に十八時を過ぎているのでお弁当に割引シールが貼られているはず。都市部で割引のお弁当なんて出ようものなら争奪戦になるだろうけど、ここは田舎なのでよっぽど遅い時間でもない限りは残っているはずだ。さっそく惣菜コーナーの近くにあるお弁当売り場へ向かう。
「シルフィーナは何か食べてみたいものとかある?」
残っていたお弁当を見てみる。唐揚げ弁当、ハンバーグ弁当、幕の内、チキン南蛮は残っていた。どれも四割引のシールが貼られている。一番コスパの良さそうな海苔弁はないようだった。
「どれも美味しそうね」
耳の側からささやくようなシルフィーナの声が聞こえる。
「この中では一番値段が高い幕の内にしておこうかな」
色々入っている方がシルフィーナにはいいだろう。続いて野菜コーナーに向かう。特に何かを作るという目的はないので適当に青野菜を入れていく。続いてお酒コーナーで六本セットの缶ビールを手に取る。
「おつまみは何がいいかなー」
酒の肴としてこちらも適当にカゴに入れていく。キャンプ用の食料は明日にでも改めて買い物に出かける予定にしている。他にも必要そうなものもあるのでそちらは駅近くにあるショッピングモール内にあるキャンプ用品が売っているテナントで選ぶつもりでいる。
「とりあえず今日はこれくらいでいいかな」
今回の買い物はこれくらいでいいだろう。最後にアイスコーナーを通ったので、少しお高いカップアイスをいくつかカゴに入れて会計へ向かう。電子マネーで支払いを済ませ、持ってきたマイバッグに商品を詰め込み車に戻る。
「シルフィーナもういいわよ」
「いっぱい買ったわね」
「そうでもないかな。これだけだとまた二、三日あとに買い物に来ないとね」
「今度来るときはもっとゆっくりお店の中を見てみたいわ」
「それはまた次の機会にね」
安全運転で家まで帰る。途中何事もなく帰り着いた。家に入るとまっさきに冷蔵庫に買ったものを入れていく。幕の内弁当は今のうちにレンジで温めをしておく。
「ご飯を食べた後にこれたべようね」
「それはなに?」
「少しお高いアイスよ」
「アイス? 氷?」
どうやらアイスという言葉が勝手に氷として変換されたようだ。
「氷菓子、ではないわね。動物の乳を絞って作った冷たいお菓子といえば通じるかな」
「おもしろそうね」
「面白いかどうかはわからないけど美味しいわよ」
「それは楽しみね」
幕の内弁当が温まったのでさっそく食べることにする。いつも通りインスタントのスープを用意する。後は久しぶりにサラダも用意した。レタスとミニトマトだけの簡単なものだけど。最近はみじん切りにされた野菜が袋分けされて売られているので便利。
「どれから食べようかな」
「言ってくれたら小皿にわけるよ」
「これはなに?」
「ああ鮭ね。魚だけど食べてみる?」
鮭の切り身を小皿に分ける。
「他にも適当にわけて入れておくね」
箸を使い適当に切り分けて小皿に入れていく。
「どれもおいしいわ」
「本当にね。安いし味も悪くないし何と言っても片付けが楽なのがいいね」
シルフィーナも満足したようでお腹を膨らませてテーブルの上で寝転んでいる。食べ終わった弁当の容器を洗ってプラスチック専用のゴミ袋に入れておく。
「シルフィーナ、お風呂に入るけどどうする?」
「お腹いっぱいで動けないから今日はいいかな」
「わかった。それじゃあお風呂行ってくるね」
「ごゆっくりー」
シルフィーナは寝転んだまま器用にテレビを付けている。私は手早くお風呂をすませて戻ってくるとシルフィーナはサブスクでアニメを見ているようだった。さて、お風呂上がりに今日はあれを食べよう。
冷凍庫を開けて普段は買うことのない少しお高いあれを取り出す。スプーンとシルフィーナ用の小皿を持ってテレビのある部屋に持って行く。
「おまたせ。それじゃあアイスを食べましょう」
「アイス! おいしいっていっていたから楽しみだったのよ」
そしてこれはとある高級アイス、年に何度も買うことはない。シルフィーナのために小皿に取り分けて差し出す。
「いただきます」
「んーあまーい」
さっそく高級アイスを食べたシルフィーナがすごくいい笑顔で食べている。
「うん、久しぶりに食べたけど美味しいわね」
「おかわりー」
「えっ、もう食べたの」
一瞬でお皿の中まできれいに食べきっていた。
「あまり食べすぎるとお腹壊すよ」
「わたしは妖精だから大丈夫よ」
「そうなの?」
「そうよ」
どうやら妖精はお腹を壊さないらしい。そういえばシルフィーナってトイレにいっているところを見ていない気がする。どうやら妖精はそういった存在らしい。





