第13話 買い物に行こう
自分に倍化を使ったことで魔力の超回復を得たわけだけど、アレクシア様からは特にお咎めのようなものはなかった。むしろ良くこんな事を思いついたと面白がられていたようだ。
ついでにマイナス倍化はちゃんと若返りの効果もあるとのお答えをいただいた。つまりこのまま日が経てば経つほど私は若返ることができるということになる。いえね、今でも若いつもりではいるけどね。
それよりも、魔法が簡単に使えたことが嬉しい。この異世界の魔法というものはイメージが大事なパターンのようだ。異世界ものの小説やゲームにアニメなどだと様々なパターンがある。
長い呪文を唱えるものや道具の類が必要なもの。その中でも無詠唱などもある。シルフィーナなどは無詠唱で使っているけど、私に関しては無詠唱よりも呪文をショートカットにしてパターンを組み込むほうが合っている。
これに関しては良し悪しがあると思っている。パターン化することで発動までが速いが汎用性にかける。水の矢を例に出すと、水でできた矢を一本生み出して前方に飛ばす事ができる。これはもうこういう物だと固定化してしまうと、複数の水の矢を打つには別の呪文が必要になる。
これはこれでいい。多ければいいというものでもない。もし仮に複数の水の矢を攻撃として使いたいなら、それと紐づけた呪文を用意したらいいと思っている。あまり複雑にするとこんがらがると思うので、なるべくショートカットの数は絞ってみるつもりでいる。
「シルフィーナそろそろ戻ろうと思うけど」
「わかったわ」
「思ったよりも時間が経っててびっくりしたわ」
気がつけば辺りが暗くなり始めている。
「このあたりって魔物っていうのはいないの?」
「いるわよ。さっきもオトハが魔法を使っているところを見て逃げていったわね」
「えっ、大丈夫なの? 急に襲ってきたりはしない?」
「わたしがいるから大丈夫よ。あとオトハの魔法なら倒せるよ」
「いまいち私の魔法がどれくらいの強さなのかってわからないのよね」
木に向かって水の矢や土の矢を使ってみたけど、私が両手を広げて抱きつけるくらいの木だと、表面に少し傷をつける事ができるくらいだった。風の刃は枝をなんとか伐るくらいだったので、それなら枝切りバサミでいいんじゃ? となる。
「オトハ、今回は魔法が使えるとわかっただけで十分じゃないかな? 威力に関しては魔力をもっと込めるとか工夫してみるといいわよ」
「あー魔力を込める方法もあるのね。その辺り全然考えないで使っていたわ」
「そうね、オトハ風に言うならイメージよイメージ。ただ魔法を使うだけじゃなくて、使ったあとの結果も一緒に考えると良いと思うわ」
「ありがとうシルフィーナ。参考にしてみるわ」
テントの元まで戻り地球に帰るイメージを頭に浮かべながらテントの中に入って入り口を閉める。再び入口を開ける。無事に家の庭に戻って来ることができた。
「晩ごはん何にしようかな。結局野菜を買いに行ってないのよね」
思いの外魔法に夢中になっていて買い物に行く暇がなかった。そろそろ冷蔵庫の中身も心もとないので近くのスーパーにでも行ってこようかな。
「シルフィーナは少しお留守番していてもらっていいかな?」
「どこか行くの?」
「ちょっと近くのスーパーまで晩ごはんを買いに行こうかなって」
「わたしもいきたい」
「いや、さすがに連れてはいけないかな」
「大丈夫よ。こうしたら見えなくなるから」
シルフィーナはそういうと同時にその姿が見えなくなった。
「これでどうかな?」
「私にも見えないのだけど」
声は聞こえど姿は見えず。だけどこれなら連れて行っても大丈夫かもしれない。
「まあいいか。本当に他の人にバレないように気をつけてね。この世界には妖精っていないはずだから」
世界は広いし、私のようにあちらとこちらを行き来できる例もあるので絶対にいないとは言えない。昔の小説や物語に出てくる不思議な生き物って、この世界とは違う異世界から迷い込んできた存在ではないだろうか。そういった存在がもしかすると、未だにこの世界のどこかで生きている可能性だってあるかもしれない。
「それじゃあ着替えてくるから少し待っていてね」
再び姿を表したシルフィーナにそう言って寝室に向かう。本当なら魔法の練習で汗もかいたのでシャワーを浴びたいのだけど、それをしてしまうと外出したくなくなるのは自分のことなのでわかっている。そういうわけなので服だけ着替えて軽く化粧をしてから出かける準備を終える。
「おまたせ」
シルフィーナに声をかけて玄関から外へ出る。戸締まりチェックをしたあと大門の横にある潜戸から外に出る。残念ながら大門の外は階段になっていて直接車を敷地の中にいれることができないようになっている。
この家で生活をするようになって一番不便だと思えるところがこれだろうか。そんな敷地の正面に面した所に車庫と倉庫がある。倉庫には古い農具や草刈り機などもいれられている。
車庫には祖父が使っていた軽トラックと祖母の使っていた軽自動車がある。名義は祖父母から家を譲り受けた時に変更している。今回は軽自動車を使う。
「車で行くのね」
「一応歩いていける距離だけど荷物をもって帰るのも面倒だからね」
今から向かういわゆる地元の総合スーパーまでは歩いて十分くらいの場所にある。今回は食料品をある程度買う予定なので車で行くことにした。
「さ、乗って」
「はーい」
「車も人通りも少ないけど人に見られないようにね」
「わかったわ」
シルフィーナはそういうと助手席のヘッドレストに腰を下ろした。





