閃きの瞬間
しばらく考えた末に、僕は口を開く。
「実業家の妻は、このパーティに今年初めて来たんでしたよね」
教授は頷いた。
「死体の状況を思い返して欲しいんですが、彼が死んだのはソファの上でしたよね。しかも彼は老眼鏡を付けていて、地面には本が落ちていた。この事から分かることがあると思うんです」
「……彼は死ぬ間際まで本を手放さず、本を読んでいた」
「そうなると思います。関係が薄いはずの実業家の妻が部屋に訪れたと仮定すると、そこで不都合が起きるはずです。彼は、あまりなじみのない人間を部屋に招き入れたのにもかかわらず、本を手放そうとしなかったことになります。目の前にはテーブルがあるのですから、そこに本を置き、老眼鏡を外して出迎えるべきです」
教授も先輩も何も言わない。
少し不安になるのを振り切って、次の質問をする。
「画家の妻に尋ねたいのですが、彼女が十一時に画家の部屋へ行ったときはソファで本を読んでいましたか?彼は老眼鏡をかけていましたか?話しかけた時に本は机の上に置きましたか?」
一気に三つの質問を受けた教授はそれを吟味しているのか、少し考える様子を見せてからゆっくりと口を開いた。
「そうだな……彼女が画家の部屋へ行くと、殺人現場と同じような光景で夫はソファに座っており、本から目を離さずに返事をしたと答えるだろうな」
なるほど。確か、その時は寝酒を出すかということを聞きに行ったんだったな。
本から目を離さずにいらないと答える画家の姿が目に浮かんだ。と言っても見た事のない故画家の姿なんて想像のしようがないのだが。
ともかく。これはかなり大きな情報だ。
「つまり、この犯人は画家と親しい人物である可能性が高いわけです。このパーティに呼ばれている人は全員が画家と親密な関係にあるわけですが……唯一実業家の妻だけは違います」
彼女は今年初めてパーティに参加しており、馴染みのないせいで早めに寝室へと戻っている。彼女が画家と懇意であったとは到底考えられない。
「なるほど。そういう理論ですか」
腕を組んで先輩は呟いた。
苦し紛れに絞り出したものにしてはかなりいい線言っているんじゃないか?
「ですが、その理論には穴があります」
ありゃ。
「先ほど関根君はこう言いましたね。あまりなじみのない人間を部屋に招き入れたのなら、眼の前のテーブルに本を置き、老眼鏡を外すべきだと」
……?
先輩の意図が分からない。その通りだが、それはこの事件の犯人が実業家の妻ではないという証拠そのものだ。
「あまりなじみのない人間が部屋に入ってきたにもかかわらずそんな態度をとることはあり得ない。これが関根君の推理のようですが、これを逆に犯人が利用していたとしたらどうでしょう」
逆に犯人が利用する?
先輩の言いたいことが全く分からずに戸惑っていると、教授がなるほど……と感心したように呟いたのが聞こえた。
「話を遡りますが、今までの前提として被害者は、ソファで首を絞められて失神し、その場で胸を刺されて失血死したということになっています。これは、床に落ちていた本の上に血が付いていることから分かる推論でした。彼が本を手に持った状態で首を絞められて落とし、そのすぐ後に刺されて血がその上につく。その前提には、犯人は偽装工作をしていないということが挙げられます」
画家の死体は老眼鏡を付けており、その偽装のためには本を読むときに老眼鏡を付けるという事と老眼鏡が収納されている場所の知識が必要な以上、そう簡単ではないという話だった。
「ですが、目の前で老眼鏡を外しているところを見た場合は別です。彼女はそれを覚えておいたと考えられます。画家は本から顔を挙げてテーブルに置き、彼女を迎え入れます。その後首を絞められた画家はソファに座らされて眼鏡を掛けさせられ、床に本を落として、その上で彼を刺します。そうすると今のような状態が出来上がるでしょう」
……確かに。
こうなると、たとえアリバイが無くともその点で反論が出来る。
「親しき仲の振る舞いが彼女に向けられるというのは不自然だから彼女を容疑者から除外する、ということを利用した偽装……という事ですか」
先輩は頷く。
もう何が何やらだ。
そこまで突き詰めて考えると本当の真実なんて一生たどり着けない気さえしてきた。
絶対に揺るがない真実なんて確かめようがない。
この世に定義無き絶対は無いのだ。定義が揺らぐとその絶対もまた揺らぐ。
何か……反論の余地は無いものか。
これが偽装ではないという証拠。
被害者の座るソファ。その傍に落ちていた本。老眼鏡はかけたまま。
もし来客があったのならその本は一旦置いて対応するのが自然。
しかし彼はそれをしていない。
これらから何か情報を……
……閃いた。
「この本、しおりは挟まってました?」
「というと?」
教授は眉をひそめる。
「本のしおりって、自分がどこまで読んだかを記しておくものですよね?もし仮に画家に来客があって彼の意思で本を閉じるのなら、しおりを挟むはずなんです」
言わんとすることが分かったらしい。教授は頷いた。
「また、もし画家が来客に注意を払わず、本に目を落したまま対応していたとしたら、しおりは挟まっていないはずなんです。読んでいる途中に突然首を絞められるわけですから、挟んでいる暇なんてありません。つまり、しおりの有無でその場の状況が分かるわけです」
教授は考え込んでいる様子だった。
恐らく現場ではそんな調査はしていないのだろう。が、真実を知っている教授ならその判断が出来るはずだ。
しばらくの沈黙の後、教授は口を開く。
「……そうだな。少し迷ったが答えることにしよう。その本にしおりは挟まっていなかった」
思わず僕は拳をにぎっていた。
大きな収穫だ。
これは、画家が首を絞められる直前まで本に目を落していたことの証左に他ならない。
つまり来客は、このパーティに馴染みのない事業家の妻ではありえないわけだ。
「そうですね……流石にそこまでを読んで彼女がしおりを抜いておいたと考えるのは無理があるでしょう」
ため息交じりに先輩は言った。
よし。これで一歩真実に近づいた。
ゲームにはまだ負けていないはずだ。
しかし同時に、唯一の犯人候補が白になってしまったことになる。
普通に考えれば、犯人足り得る人物はもういない。
残っている人は全て何かしらの反論材料を持っているのだ。
ここからは、そのうちのどれかをつぶす作業に入らなければならない。
この事件には、まだ何かある。
考えるとしたらやはり、ガラスの割れたタイミングだろう。
僕はまだ、そこに何か仕掛けがあるという疑念を捨てきれていない。
「話をまた現場に移したいんですがいいですか?」
教授は頷いた。
「窓ガラスが割れているとありましたけど、犯人は何でその窓ガラスを割ったんでしたっけ?」
僕の質問に、教授は首をかしげる。
「何って……別に現時点では判明はしていない。何か気になるのならもっと具体的に訊いてくれ」
それはそうか。ここは自分の手で調査をする必要がある。
しかし何を調べれば分かるのだろう。
今までのイメージでは、適当な固いもの……それこそ凶器のナイフの柄でも使って割ればいいと思っていたのだが、そこは覆されている。
「まず、血の付いた凶器のナイフでガラスを割った、ということは考えづらいですよね。以前ナイフを遠くに投げることについて議論したと思うんですが、その時に血が飛び散ることを考慮すると犯人にとって不利益であるという結論が出たと思います」
考えを整理するように、口に出して話を進める。
「となると、自身の拳でガラスを殴ったのでもない限り他のものを使ってガラスを割ったことになるんですが……」
と、ここまで言って一つ思いついた。
ガラスを割るとなるとそこに必ず痕跡が残るはずだ。
「仮に、犯人が椅子か何かで何かでガラスを割ったとする。すると、その破片が本人の服や割ったものの素材によっては事件後もまだ付着している可能性があるんじゃないですか?」
「なら何を調べたい?」
「もちろん、全員分の服です。靴に関しても同様ですが、底についている物ではなくあくまで足の甲の方についていないか調べて欲しいですね」
目に見えない細かなガラス片を探すことも、鑑識の手にかかればそれくらいの事は余裕だろう。
今回の探偵は、警察の持つあらゆる情報を手に入れられる前提で動いているのだから見逃すなんてことはあり得ないはずだ。
「そうだな……調べたところ、誰の服にも靴にも破片は認められなかった」
となると?
これは……かなり大きなヒントなんじゃないか?
「もちろん、その日に着ていた服をチェックしたんですよね?また、その部屋には他に破片を防げそうなものは無かったんですよね?」
教授は頷いた。
だとすると……どうなる?
犯人は、飛び散るガラスの破片を受けない位置でガラスを割ったことになるんじゃないか?
ここから分かることと言えば……
「もし仮に、先ほどのように遠くから椅子を投げつけてガラスを割ったとすれば、その物体は窓の外へ出て行った可能性が考えられます。また、外へ出て行かないとすればそれは、窓枠よりも大きいものだったと考えられます」
ヒートアップしていた。真実に近づいているという感覚が、僕の中には確実にあった。
「ならどうする?」
決まっている。
「窓の外を調べます。遠くからその窓を狙ったのなら、窓を壊したものが見つかるかもしれません」
「……それは、窓の真下にあるナイフではないと思うんだな?」
僕は頷いた。
これも先ほどの理論が適用できる。
それにもし遠くからナイフを投げて窓を割ったのなら、窓の真下の茂みにそれが落ちていることと矛盾する。
「そのとおりだ。探偵も同じことを考えて、一時間ほどかけて外を探した。そして見つけたのが……これだ」
言って教授は手を突き出し、何かを差し出してきた。
その上に乗っているのは……小さな黒い鉄の球だった。
「これが、窓から少し離れた所の茂みに隠れていた。しかしそれが君の目当ての物かは分からないがね」
とぼける教授。
しかしこれは、ここまでの仮説は正しかったという証拠に他ならない。
犯人は、この球でガラスを割ったんだ。
パチンコ玉よりかは少し大きく、ビー玉よりかは少し小さい。
重量感と質感からして明らかに金属だということが分かる。
「一応その黒い鉄の球が見つかった位置というのを教えてもらえますか?」
教授は頷き、また新しい紙を手元に手繰り寄せて簡易的な地図を書き始めた。
館の壁と現場の窓を描き、鉄球の位置関係を書き込むのにそう時間はかからなかった。
窓から少し離れた茂み……気になるところと言えば窓から少し左にそれたところにあることくらいか。
窓から見て少し左側にあるということは……少なくとも窓へ向かって真っすぐには飛ばしていないことになりそうだ。
だとすると……
だとすると、何だ?
ここまで流れるように進んでいた思考は、ここまで来て急に止まってしまった。
これ以上何も分からない。
そもそもこの窓ガラスをこんな球で割ったからなんだというのだ。
そんな小さな発見で鬼の首を取ったように喜んで……
失望した僕は、時計を見上げる。十七時三十五分。
予定通りならもう五分後には届いてしまう。
時間が無い……
ここから解決まで持っていくのは流石に無理か?
どうすればいい?
鉄球を使った理由は?服にガラスの破片が付かないようにするためか?
本当にそれだけなのか?何か……何か手掛かりは……
そう言えば、この鉄の球はどうやって飛ばしたんだ?
手で投げた?古典的な、ゴム紐を伸ばして離すいわゆるあのパチンコを使った?
他には……
ふざけたアイデアを一蹴するために、教授に質問をする。
「誰か、パチンコを持っていた人なんていないですよね?」
教授は首を振った。当然だ。
となると手で投げた……?
手袋で滑るだろうに、わざわざ手で小さな鉄の球を投げて窓を割る……
やはり考えづらい。
何より、手で投げるのであればもっと自然な、どこにでも落ちている石ころなんかがふさわしいだろう。
どれがガラスを割った石なのかなんて、どんな探偵にも特定は不可能なはずだ。
これは手で投げるのに限った話じゃない。ゴムを使って飛ばすパチンコを使うくらいなら、これまた適当な石ころを使えばよかったはずだ。
どうしてこの小さな金属の球じゃなきゃいけなかったのか。
ふと、ガウス加速器の実験を思い出した。
磁石に鉄球を一列にくっつけたものに、反対側から鉄球を転がしてやると元々くっついていた鉄球の一つが凄い速さで飛んでいく装置だ。
磁石の作り出すポテンシャルエネルギーの差が運動エネルギーに変換されて動く。
直観に反する動きをするので子供に見せると受ける実験の一つとして有名だったりする。
……だからなんだ。
確かにあり得ないことは無いが、わざわざそんな理科の実験じゃあるまいし。
考えが行き詰まり、時間だけが過ぎていく。
「これが……何かアリバイを作るための装置だと仮定して……」
焦る気持ちを落ち着けるように、思考を口に出す。
が、その後が続かない。
「そう考えたいのは分かるのですが……時限装置のようなものをつくるのは難しいかと思います」
先輩の言葉に反論する気力も残っていない。
「最も大きな問題は装置です。遠隔で操作のできる装置なら、よほど小さく見逃されやすいものでもない限りそれを発見されずに回収するというのは難しいかと思います。また、荷物を探られる可能性を考えると、不自然なものほど危険性が高いと言えるでしょう」
ごもっともだ。高度な機械であるほど見つかる可能性が高くなる。
となるとやはり犯人はその手でガラスを割ったのか?
しかしそうなるとアリバイに阻まれることになる。
「それに、関根君はどうにかしてガラスを遠くにいながら割ることを考えているようですが、一つ忘れているようです。窓の外には窓の外にはナイフと手袋が落ちていました。窓は建付けが悪く開けることが出来ないのですから、それは窓を割った後に捨てたということに他ならないのではなりません」
それは……確かに。
何らかの装置でガラスを割ったとしても、その後に凶器を外へ捨てることが出来なければ意味がない。
しかしそこにも何か抜け穴がある……はずだ。
「建付けが悪く窓が開かないという事でしたけど、もしかしたら事件当時はまだ自由に窓が開けられたかもしれないですよね。犯人は普通に窓を開けて凶器と手袋を捨て、その後で何らかの方法で窓を開けられなくした……とか」
「なるほど。可能性はあります。これは質問をすればはっきりすることでしょう。この窓を調べて、何か細工の跡が見つかりますか?」
教授は少し考える素振りを見せてからゆっくりと首を振った。
無いか。
他には……
「どうにかしてあらかじめその場所に凶器と手袋を置いておくことが出来るかもしれないです。例えば……外から画家の部屋の窓の前まで行くとか」
「外は雨です。そんなことをしたら当然体は濡れ、靴は泥を踏みます。そういったことがあった事かどうかはすぐにわかるのではないですか?」
「つまり?」
教授は先輩に質問を促す。
「ロビーにいた人間は、誰か外へ出る人の姿を見ましたか?靴が濡れている人は居ませんでしたか?」
ふむ、と教授は顔に手を添える。
「そうだな。居ない事もない」
教授の返答に、先輩は動揺した様子だった。
「いやなに、これが真実に直結しているという保証はないがね。一応事実を伝えるだけだ。ロビーで飲んでいた四人の話は何度もしたと思うが……そのうちの一人、事業家が一度外へ一服しに行っている」
「へ?」
と思わず間抜けな声が漏れた。
「だって外は雨なんじゃ……」
「確かに雨は降っていた。何度も触れられていたように、事件当時は相当な土砂降りだった。しかしその夜の間ずっとそうだったわけではない。現に、実業家が外へ一服しに行った十一時少し前はまだ雨がそこまで強くは無かった。丁度十一時くらいを境に雨が強くなったので、避難するように中へと入ってきている」
「強くなかったってことは……少しは降ってたんですか?」
「そうだな。一階には屋根のついたテラスがあるといっただろう?そこへ行けば普通にしのげるほどの雨だったようだ」
なるほどな。多少雨に濡れることを許容してテラスで一服したわけか。
「そう……ですね。そうなると、完全にその説を否定することは出来ないようです。また、何か時間差を用いた仕掛けが発見された時には実業家が黒くなって来そうですね」
そうなるな。無条件で白だった実業家が一気に怪しく見えてきた。
……いや、それは違うな。
「画家の妻の証言で、十一時頃にお伺いを立てた時にはまだ生きていることが判明しているわけですから……その時に凶器を始末することは不可能ということになると思います」
そうかと先輩が小さく呟く。
せっかく犯人候補が一人出来たというのにあっさりと否定されてしまい、なんだか不機嫌そうだ。というより、なんだか動揺しているようにも見える。
そうなると次に訊くべきは……
「ロビーにいた人たちについてなんですけど」
僕は口を開く。今は一つでも多くの情報を得たい。
「流石に、その夜ずっとロビーにいたわけじゃないですよね。途中でトイレとかは……」
「もちろん行っている。探偵だって二度は要を足しに席を外したのではないかな」
頻尿探偵だ。
酒を飲むとトイレが近くなるというのは本当らしい。
「その間に十分以上席を離れた人はいないんですか」
「実業家と画家の息子のどちらもそれに該当する。が、不自然かと言われると微妙なところだな。どちらも単にお手洗いに行っていただけのようだ」
完全にアリバイがあるわけでは無い、と言ったところだろうか。
またしても曖昧な情報だ。
大切ではあるが、真相解明には直結しない。
もう時間が無いというのに今わかっていることと言えば……
いや、何も分かっていないのだ。
情報は全員の無罪を示しており、何かを覆さない限りは真相にたどり着けない。
その場にいなくとも窓を割ることのできる何かしらの仕掛け……その正体も分からない。
そもそもそんなものが存在するのかどうかも不明だ。
凶器の包丁から殺人が計画的ではない可能性が高いということが分かっている上に、先輩の説によるとそんなものは存在しえない。
これ以上何をすればいいというのだろう。
解明すべき事がまだまだ残っているというのに、どうすれば答えにたどり着くかが全く分からない。
「どうした?もう時間が来てしまったぞ」
教授の言葉で我に返った。
慌てて時計を見ると、十九時四十一分。
……終わった。
まだピザは届いていないが、次の瞬間に内線が鳴らないとも限らない。
こんな中途半端なところで……
真実に近づくどころか、全く歯が立たなかった。
無慈悲にも秒針は動き続ける。
「しかしあれだな。四十分以内に届けますと書いてあったのに遅いな。これではせっかくのピザが冷めてしまう」
教授は手元のピザの代金を確認しながら言う。
あえて僕の敗北には触れる事無く、ピザの心配をしているようだった。
負けた……
今となっては、チキンが食べられない事よりもこの問題が解けなかったことが悔しい。
まぁ……でも仕方ないか。
こんな複雑な問題が、たった四十分で解けるわけがないのだ。
恐らく教授もこの時間中に解けると思って出していないだろう。
しかし悔しいものは悔しい。せっかくここまで頑張ったのに。
……待てよ?
たった今、教授が言った言葉に引っかかりを覚えた。
自分の中の何かが、違和感を訴えている。
「……今、なんて言いました?」
思わず僕は教授に訊き返していた。