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マシックガールズ  作者: まーだ
第四章 メルメティック・シンドローム
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第52話 刃

☆登場人物☆


『トワライト』

エリア1の最高権力者。

魔法少女軍を動かせる唯一の存在。


『シルビア』

銀髪で赤い瞳、マフラーをしている。

魔法少女軍の最高戦力。

なぜトワに協力するかは不明。

夜の森、鉄の塊が車輪を回転させ、獣道を踏み荒らす。


戦闘車が二台。巨大な主砲を備えた戦車が一台。

その他、兵隊を詰めた車両が複数台続いた。


戦闘車から白髪の老人が姿を現す。

彼の名前はトワライト。エリア1の最高権力者だ。


トワが片手を挙げると黒い装甲を纏った兵隊たちが続々と現れた。

魔法少女部隊。トワの秘密部隊であると同時に最高戦力である。


「施設内にいる人間は皆殺しにせよ!」


トワがそう命令すると隊列を組んでいた魔法少女たちは一斉に散会した。


それを確認するとトワは戦闘車から大型のアサルトライフルを取り出した。

トワに付き添っていた兵士が尋ねる。


「隊長、出るのですか?」


「ああ、やつとの因縁は私自ら断ち切らねばならない……」


「ですが……あまりに危険です!」


「大丈夫だ、私には最強の刃がある。」


トワがそう言うと一人の少女がトワの隣に舞い降りた。

夜の森に吹く風にマフラーがたなびく。少女の名前はシルビア。

彼女こそがトワが絶対の信頼を寄せる最強の魔法少女である。


---------------


約40年前、エリア1にて。


トワは優秀な研究者であった。

成績は常にトップ、仲間からの信頼も厚い。

彼の開発する新薬はいずれ世界を救うとまで言われていた。

何もかも成功した人生だった。


しかし、トワにとって最大の悲劇が起きた。

世紀の天才、天道カルマの登場である。

カルマはトワより1歳年下なのにもかかわらず、全てにおいてトワの一つ上を行っていた。

信頼していた友人もカルマについていくようになり、トワは孤立していった。

彼が19歳で開発した特効薬はその当時流行っていたウイルスを瞬く間に消滅させた。

人々はカルマを称賛した。

対して、トワに対する興味は次第に薄れていった。


とある日。


「クソ……」


トワはレンガ積みの塀を思い切り殴った。

右手からじわりと手があふれ出す。


トワはこの日、研究所を辞職した。

カルマがいる以上、トワは並以上の仕事を求められなかった。

自分の存在意義を見出せなくなったのだ。


自暴自棄になったトワは酒を飲みながらふらふらと歩いていた。

トワは不注意で前を歩いていた二人組の男にぶつかった。


そのまま二人の横を通り過ぎようとしたトワは、片方の男に呼び止められた。


「おい、兄ちゃん?ぶつかったなら謝りな?」


トワは立ち止まり、二人の方を振り返る。

二人は強面だったが、別に怒っている様子もなく、トワを馬鹿にしている様子もなかった。

今謝れば、確実に許してくれるような状況だった。


「うるせぇよ……ゴミが……」


しかし、トワは謝らなかった。

これ以上、誰かに屈服したくなかった。

もはやこの後自分がどうなるかなどどうでもよかったのだ。


当然、二人の男は怒り出した。

トワは暗い路地に連れていかれ、ボコボコになるまで暴行を受けた。



気絶していたトワはゴミの山のベッドの上で目覚めた。

ビルとビルの間から夜空が見える。


「ひどい有様ね。」


そんなトワに話しかける一人の少女がいた。

少女は中学生から高校生とも思える容姿をしていたが、その言動はやや大人びていた。


「見世物じゃねぇぞ……ガキ……」


トワはゆっくりと体を起こそうとしたが、思うように体が動かず、再びゴミの山に倒れた。

そんな自分が情けなく、トワは少女の前で泣き出した。


「クソ……クソ……!!あいつさえ……あいつさえ居なければ……俺は……!!」


「殺してあげようか?」


少女はトワにそう告げた。


「今、何て……?」


衝撃の一言にトワは聞き返した。

マフラーで口元が見えなかったが、トワには少女が笑っているように見えた。


少女は背負っていた袋から長い鞘を取り出した。

さらに、鞘からは銀色に輝く刀が現れた。


「私の名前はシルビア。魔法少女だ。」


「魔法……少女?」


少女が刀を持っている。明らかに異常な光景。

しかし、彼女が魔法少女だというにはあまりに証拠が足らなさ過ぎた。

それでも、トワはシルビアを信じた。信じるしかなかった。

これはトワに降りた最後のチャンスだと。そう思うしかなかった。


「シルビア……殺してくれ、天道カルマの『家族』を……!」


「家族……?」


「俺から全てを奪ったように奴から全てを奪ってくれ……!そして、絶望の底に突き落としてくれ……!」


その時のトワはどれほど邪悪な顔をしていただろう。

シルビアはトワに嫌悪の表情を見せていた。


「了解した。」


それでもシルビアはそう答えると、人ならざる跳躍を見せてその場から飛び去った。

トワは初めて見た魔法少女の人外な力の前に驚いたが、すぐさま安堵した。

シルビアの言っていたことが真実だということだ。

きっと、カルマの家族を殺してくれるだろう。そう確信できた。


「ふふ……ははは……はははははははははは!!!」


カルマは満天の星空に向かって狂ったように笑った。



一週間後、トワにとって嬉しいニュースが入り込んできた。

カルマの家族が殺されたというニュースだ。


普通、こういった情報は被害者の名前は伏せられるものだ。

しかし、世界中から注目されていたカルマの家族となれば、どの局もプライバシーを無視して実名報道をしていた。


当てつけかのようにカルマの心情を聞き出すインタビュアー。

トワはテレビ画面越しにその姿を見て、ほくそ笑んだ。


カーテンが風に靡かれると同時に、トワの隣にシルビアが姿を現した。


「俺を殺しに来たか?」


トワはシルビアにそう聞いた。

自分の思い通りに殺人ができて、相応のリスクがないはずがない。

地獄のような苦しみを味わいながら殺されるのだろう。トワはそう思っていた。

だが、それでもトワは満足だった。


シルビアは頭にはてなの文字を浮かべ聞き返した。


「あなたは私を死神か何かだと勘違いしていないか?これは言わば恩返しだ。」


トワはシルビアの顔を見てしばらく考えた。

いつ恩を売ったのか、トワはどうしてもシルビアのことを思い出せなかった。


「本当に魔法少女だったんだな。」


「まあね。」


トワはふと重要なことに気づいた。

シルビアが魔法少女だということだ。

あまりに事が上手く行き過ぎて忘れていた。


魔法少女は圧倒的な力を持っている。

これを利用することができればとトワは考えた。

トワはダメ元でシルビアに聞いた。


「もう少しだけ、俺に協力してくれないか?」


「ええ、もちろん。」


シルビアはトワの予想を裏切り、快諾した。


数日後、トワはカルマが失踪したという連絡を受けた。

好待遇で職場に復帰してほしいという内容だった。

トワはもはやカルマなど眼中に無かった。


トワが目指す目標、それは


「さて、始めるとするか、世界征服。」



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