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「そうか、お父様の亡き弟の忘れ形見を養女にしたという設定だったな。1年生に入学ということは、僕の義妹と言うことになるのか」
リードルが私をジーっと見た。
「そうね。お義母様は義妹ね」
エリエッタが頷いた。
「え?私、エリエッタとは同学年だけれど、私が妹なの?……私の方が年上……」
「お義母様は年上には見えないでしょう」
エリエッタが私を頭半分上から見下ろす。
いや、見える見えないじゃなくて、実年齢37歳、20歳若返るのだとしたら17歳。リードルと同じ年なのだから……年上……。
「そ、れ、に!私、実は妹が欲しかったの!学校に通っている間だけでも妹ができるだなんて、最高だわ!」
エリエッタがにまぁと笑って私を抱きしめる。
そっか。エリエッタは妹が欲しかったのね……。私は産んであげられなかったから……。
「分かったわ、”エリエッタお義姉様”。私が妹とう設定ね。”リードルお義兄様”もそういうことで、間違えないようにね」
「おにいさ……ま?……いや、それもなかなか……うん、いや……」
リードルが顔を逸らしました。
あら?義母にお義兄様なんて呼ばれるの気持ち悪いかしらね?……うーん。なるべく呼ぶ場面が無いように努力しましょう。
まぁ、エリエッタと違って学年が2つ上だし、リードルと学園で顔を合わせることも少ないでしょう。
案の定、リードルは生徒会役員として新入生を迎える準備を整えるために家を早くに出た。
目的地は同じ学園でも、この調子なら行き帰りも時間帯さえバラバラになりそうですよ。
――なんて思っていたりもしましたね……。
「ああ、無事に学園についてよかった。入学式が行われるのは講堂だよ!おいで」
学園に入り受付を済ませたころに、颯爽とリードルが現れました。
「お兄様、生徒会の仕事があるんじゃありませんの?私たちは大丈夫です」
エリエッタがシッシと追い払うようなしぐさをリードルに向ける。
「いや、僕は辺境伯当主だからね。父親代わりとして今年入学する妹たちに付き添うのは当たり前だろう?」
リードルの言葉に、とっさに声を上げる。
「義母である私がいるのですから、リードルは父親代わりを務めなくてもいいのよ?」
「はは?」
私の言葉に受付をしていた生徒が私の顔をガン見した。
しまった!
ここでは義母じゃない!義妹の設定でした!
「可愛いだろ、僕の妹。母親代わりになろうと背伸びしているんだよ」
リードルが受付の生徒に誤魔化すと、受付の女生徒が大きく頷いた。
「はい。リードル様の妹はとても可愛らしいですね」
ぽっと頬を染める女生徒。赤みがかった茶色の髪の少し目の吊り上がったそばかす顔の子だ。
むふん。頬を染めるということは、この子はリードルに気がある?
うちの子カッコイイから。モテてるわ。と、嬉しくなってニヨニヨしていると、背後から声がかかった。




