10 もつ煮込み
月日は流れて、チョビは10歳になりました。
人間の年齢にすると56歳くらいです。
もう中年ですね。
そんなある日の夜のことです。
優斗と私は良く行きつけの「焼きとん屋」さんに行っていました。
その焼きとん屋さんはホルモンの専門のお店でした。
そこのお店はとても「もつ煮込み」が美味しいのです。
もつ煮込みの中身は、もつとこんにゃくだけでした。
他の野菜などは入っていなかったのです。
良く他の飲み屋さんでもつ煮込みを頼むと、人参や大根などでカサ増しして出してくるお店があります。
でも、そのお店はカサ増しなどせず、純粋にもつ煮込みを提供してくれるお店でした。
私はそのお店のもつ煮込みが大好きでした。
いつも優斗とそのお店に行くと、帰り際に「お土産」と言ってはそのもつ煮込みをお土産で買って帰ってきたのです。
その日もいつのようにお土産でもつ煮込みを買って帰ってきていました。
電子レンジでレンチンして食べようと思っていたのです。
私も優斗も強か酔っぱらっていました。
それで、気が緩んでいたのでしょう。
チョビのことを忘れていました。
もつ煮込みを袋から出して、ちょっと大きな器に移しました。
そして、レンチンしてテーブルに置いておいたのです。
そこから優斗と二人、キッチンでタバコを吸いながら長話をしていました。
今日のお客さんとの話しなどをしていました。
常連さんと話をするのがとても楽しいのです。
そんな会話をした後でした。
「じゃ、もつ煮込みでまた飲みなおそうか」
そう二人で話して部屋のテーブルに行った時でした。
何だかもつ煮込みがおかしいです。
それにチョビがテーブルの下で隠れています。
どうしたのかと思いました。
もつ煮込みを何気にまた見たのです。
そうしたらなんと、もつ煮込みが入った器の中身の半分以上が無くなっていたのです。
「えー?どーゆーこと?」と、私は思いました。
チョビをまた見てみました。
「もう、お腹いっぱいだよ~!食べられないよ~!」
と、言っている様でした。
そうです。
チョビがそのもつ煮込みを食べたのです。
リビングにはコタツのテーブルが置いてありました。
そのコタツのテーブルに足をかけて、チョビはテーブルの端に置いてあるもつ煮込みが入った入れ物に顔が届いたのです。
そこで食べたらしいのです。
もつ煮込みは二人分買ってありました。
その1.5人分をチョビは食べたのでした。
チョビのお腹を見るとパンパンに膨らんでいました。
「やられた~!」
と、私は声を出して言いました。
優斗も同じように叫んでいました。
「1.5人分食べるなんて、なんてことしたんだよ~!」
と、優斗はチョビに言っていました。
でもチョビはお腹がいっぱいになっていてとても満足気でした。
私と優斗は仕方ないので残りの0.5人分のもつ煮込みをレンチンして食べることにしました。
チョビの盗み食いには困ったものです。
この事件があってからチョビは「もつ犬」と呼ばれるようになりました。
チョビは翌朝の朝ごはんが抜きになったのは言うまでもありませんでした。




