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ココノツ



 流石にそこまで時間は掛からないと思うよと返し、エルジュと別れて宿屋へ戻ってきた。

 食堂の椅子にぐったりと腰掛ける。


 ……何か、今日は色んな人に会った気がするな……。


 毎日色んな人には会っているが、何か朝から情報量が濃い一日だった。



「……だいじょう、ぶ……?」


「だいじょぶー」



 水を出してくれたディーネにそう返す。



「何か、あった……?」


「いや、今朝のやり取りでご存知の通り、仲間が増えたから」


「……ん。奴隷、増えてた……ね」


「そして私はこの町を出る気が無いから、いっその事この町にお家を確保しても良いんじゃないか、って思ってきてるのね。いつまでも一室占拠してるのもなんだし」


「別に……私、達……気にしない……」


「そーそ、部屋足りねえならそういうの得意って客とかに宿代無料の代わりに部屋足してもらうだけだし」


「ホンゴ結構凄い事言うね」



 当然のように話に入ってくるのは良いけれど、それ中々の技術なのでは。



「え、増築って事だよね?」


「まー広義的に言えばそうなるか?」


「……多分……」


「広義的に言わない場合は?」


「外から見ても変化は無いが中に入ると空間が拡張されているので外から見た図とは明らかに一致しない内部になる」


「言われてみれば客室がある廊下の長さと外から見た大きさがおかしい!」


「いや今更かよ」



 失笑された。

 ただ笑われるよりも心にくる。



「室内の洗面所とか、アレはアイテム袋の応用なわけだ。で、それは廊下とかにも適用出来るって話な。

 悪用は駄目だけどこれは悪用じゃねーし、三次元的に増築するとなると掛かる時間や必要な土地や周辺環境とかも関わってくっから、外装も一緒に変えたいとか根本的に使用されてる材料を変えたいとかでも無い場合は大体空間拡張タイプになんの」


「急に難しい話するじゃん」


「…………普通に新しい部屋を増築しようとしても周辺の建物との距離的にそんなスペース無いし、縦に伸ばすと周辺の日当たり環境とかも大きく変化するから、それをやりたくて増築したいんだって場合じゃないなら外装そのまま中身だけ広くするってのの方が問題少ねーって話な」


「や、うん、理解が全く出来ないってわけじゃなかったんだけどめっちゃわかりやすいですありがとう」


「おう、どいたま」



 実際未来の猫型ロボットのポケットとかがあるし、お座敷の釣り堀とか、ああいう平面的でありながら空間が広がってるタイプの道具は多かったので、何となく意味はわかる。

 意味はわかるけど補足説明のお陰でより一層わかりやすかったのでありがたい。


 ……いや、これ人間はそのくらい噛み砕かないと理解出来ない可能性が高いと判断された可能性が……?


 人間というより私個人の理解力がそのくらいと思われたのかもしれない。

 でも実際わからん時はマジでわからんので甘んじて恩恵に預かろう。

 わかりやすい説明がありがたいのは事実である。



「確かにそういうタイプなんであれば一室を私達が占拠してても問題無いかもしれないけど、流石にこのままずっと占拠し続けるっていうのはちょっと」


「長命種族なんかだとひと月借りるテンションで一年借りる事もあるし、長期滞在だからって五十年くらい借りるヤツも居るけどな」


「居るんだ」


「たった五十年くらいだから家買うのも何だしかといって色んなところを転々とするのも面倒だ、ってな。そういうのは割と居る。その期間中に色々実験やらやるヤツは尚更な」


「…………っていうか外と中で時空が捻じれてるなら窓から入ってくる光とか窓開けた時のアレコレとかどうなってんの?」


「俺は原理しらねえけどどうにかなってるらしい。まあ問題ねえなら良いだろ」


「良いんだ……」



 実際それで問題無いから良いんだろうけど、深堀りしたら深淵を覗き見そうなところだ。



「しかし成る程、この町に居を構えるつもりならば良い事ですな」



 ふんふん、と男性が頷く。



「もし彼女に告げずこの町を去っていれば、次の約束が反故にされたようなもの。彼女が勝手に言い出した事らしいので彼女自身は仕方がないと諦めるでしょうが、現状を維持、あるいは悪化させるのも拙者達の本意ではありませんので」


「へえー…………いや、誰?」



 いつの間にか隣にはクダと同じような耳と尻尾を持つ男性が座っていた。

 しかしクダとは違い人間寄りの顔をしているし、見える尻尾は数えれば九つある。


 ……九尾の狐?


 何より驚きなのは、ホンゴとディーネも驚いたように目をパチクリさせている事。

 人外達はかなり察しが良いので人間が気付かない事でも普通に気付いていたりするが、この様子からすると彼らも気付いていなかったらしい。



「ク、カカ、誰、誰とは酷いお方だ」



 日本風というよりも中国風の長い袖で口元を隠すが、隠しきれていない。

 人と違って獣らしくその口角が耳までつり上がっている。

 ミシリと裂けるように開いた口からは、実に鋭い牙が覗いていた。



「拙者は確かに初対面ではありますが、つい先程から貴女の隣に居たというのに」


「……ホンゴ達は」


「気付いてたらもっと違うリアクションしてるっての」


「…………ん。……首領(ドン)が気付いてない、事に……驚いてみせたり……」



 気付いてない事に逆に驚かれる系のリアクションは仕込み染みたものらしいと知ったが今はどうでも良い。

 ホブゴブリンとウンディーネの生態に詳しいわけでは無いけれど、人よりずっと優れているだろう彼らにすらマジで気付かれなかったという事は、



「化かし?」


「おや、見破られましたか」



 クカカ、と男は酷く細い狐目をより一層細めて笑う。



「では自己紹介を致しましょうか。拙者は魔王直属四天王を務める、ココノツと申します。あっ、当然ながら偽名というか呼びやすい名というだけなので呼びやすいように呼んでいただければ」


「いやそう言われると本名気になるんだけど」


「それが数十年だか数百年前だかに極東で好き勝手にやらかし過ぎまして。長命種族なぞも居るだろう事を思うと、あと千年程は違う名を使っている方が楽に活動出来るのですよ」


「何したかわかんないけどひたすらに怖い」


「誉め言葉ですな」



 袖で口元を隠してケラケラ笑っているが、これヤバいタイプの九尾さんなのではないだろうか。

 伝承とかでよくある、傾国とかしちゃうタイプの。



「主様の懸念は合ってるから、誘惑には気を付けてね。コイツ極東の三分の一を一回火の海にした事あるよ」


「物理的な炎上をさせた方!?」


「物理的な炎上もさせられましたとも。まさかあそこで自爆を選ばれるとは……お陰で回復の為に大陸側の生き物をどれだけ食う事になったやら」



 よよよ、と泣き真似をしているが言っている事が大分外道では。

 生き物、という事は一般的な動物だけではなく、人間や人外も食ってそうだし。



「まあそうして食い荒らしていたら魔王様に見つかり、捕まり、勝手に食い荒らすなと叱られ、強そうだし死にそうにないから丁度良い、と四天王に放り込まれたのですが」


「四天王の選び方雑じゃない?」


「それだけの実力があれば良い、という事なのでしょう。なにせ彼女はその時裏切られたばかりで、当時居た四天王という名の魔物達を統治する立場の……というより、魔力の流れを整えるに足る実力者たちを失ったばかりでしたから」



 いやまったく、とココノツは笑う。



「頭を潰せば勝手に解散すると思っている人類は実に浅はかな。確かに解散はするでしょうが、手綱が無くなり自由になるだけの事。

 その挙句に魔王様からの感情が流れ込んだ上、その時の魔王様は人類を救う価値無しと判断し、魔物達との繋がりを断ってしまった。結果、魔王からの干渉をほぼ受けなくなってしまった上に人を積極的に襲う魔物が発生という始末です」


「おおう……」



 ……何か歴史の授業を受けた気分だけど、これって人間が聞いて良いヤツなのかな……。


 かつての人間達が同族相手に自分達の不始末という真実を必死に隠して魔王を悪と定めた際の、知っちゃいけない真実部分のような気が。



「あ、今の話は人外であれば大抵知っている数百年前の真実ですが、今の時代の人間に語ったところで償えるわけでも無し、と基本的に秘密にされている話です。ただ魔王様が気に入った方のようですので、今の内に媚びを売り尻尾を振っておこうかと思いまして」


「媚びを売るならそこバラしちゃいかんところでは」


「人間は真実を暴く為にと燃やしに来るではありませぬか。それが人でも害悪でも、疑えば火炙りとは……害悪は拙者のように燃やされてもわりと生きているので、正体を暴く為だけに自分達で同族の死体の山を築く様は実に滑稽で涙を禁じえませんでしたとも」


「それ絶対に嘲笑による笑い過ぎで出た涙だよね」


「おやよくおわかりで」



 クカ、とココノツはご機嫌そうに笑う。



「…………そういうところが我々に気に入られるところなのですよ、革命家殿」


「どういうとこ?」


「己が関係なければ、いえ、関係があったとしても過去を過去として流し、今目の前に居る相手を見るところでしょうな。だから魔王様もあれ程にご機嫌で帰ってきたのでしょう。

 新しく呼ばれた勇者を見に行き、やはり人間達が信じている悪の魔王を吹き込まれていて、自身を討伐しようとしていると知ったのに」



 そんな事は取るに足らないオマケのように笑っていたのです、とココノツは袖から出した手指の先、鋭い爪をカチカチ鳴り合わせて語る。

 まるで手持無沙汰とでも言うように。



「新しい四天王を選ぶ時には、焼かれても死にそうにない者を選んだ程にショックを受けていらっしゃった。

 だからこそ勇者が呼ばれる時は、例えかつて彼女を裏切ったこの国以外であったとしても魔王様は視察に向かわれます。魔王様が魔王様であると知っている人外に紛れながら」



 なのに、



「今回の魔王様は笑っておられました。実に楽しそうにしながら、人里に紛れる時のサイズに合わせた服を拵えさせて。

 今まではどうせほんの瞬きの間だけしか人里に行かないのだからと、そう言って適当な布切れを巻いていただけだというのに!」



 クカカ、とココノツは愉快そうに笑う。



「ええ、ですから拙者が様子見に来たのです。魔王様が抱くかつての裏切りに傷付いた心がようやく癒されようとしているのですから。万が一にもその相手が裏切るような事があるならば、先に始末してしまおうと思いまして」


「もしかしなくとも私めっちゃ危ないヤツの隣に居るね?」


「大前提として極東の三分の一を火の海にした存在であるとわかった時点で距離を取るべきだったと思いますが。そこの水の精霊の後ろに逃げるとか。狐は化かしと炎の術が得意ですので」



 細められた狐目なので目の動きでの感情変化がわかり辛いが、それでも今のめっちゃ呆れたような視線はわかった。

 大丈夫かこの危機察知能力が無い生存本能が死んだ生物は、という声色してた。


 ……いやでもそうだよね。


 人外の中でもかなり強いっぽいけれど、こちらは最弱ポジの人間なんだから逃げておけば良かったかもしれない。

 わあ尻尾ボリュームすっごぉいもっふもふだあとか余裕ぶっこいてる場合じゃなかったわ。



「……というか何で始末前提?」


「まず魔王様はかつての裏切りに傷付いておいでなのです。本人は気にしていないように振舞いますが、繋がりが絶たれても根本で繋がっている魔物が今でも人間を積極的に襲うのがその証拠。

 魔王様が魔物の本流のようなものですから、彼女の嘘偽りない感情に影響されるのです。空が泣いて雨が降れば川が氾濫して人を飲み込むように、空が笑って程よく晴れていれば人が生きていけるように」


「成る程」



 語り部染みた喋り方だが、言ってる事はわかりやすい。



「で、次に魔王様が裏切られたと感じたら今度は人間への愛を失うでしょう。今の彼女は愛憎でぐらぐら揺れていますが、二度目はいけません。そしてそうなるとマジで世界が滅びかねないのでこっちも危険です。可愛い人間を必要以上に減らされても困りますし」


「人間めっちゃ殺したっぽいのに可愛い扱いなんだ」


「可愛い見目でも腹が減れば殺しますよ。大丈夫、それまでは可愛がります。可愛い間は」



 うーんニワトリに対してヒヨコの時は可愛かったけど大きくなったら可愛くないから絞めて食べよう! って言う人みたいな発想だ。

 そりゃウサギとかだってどれだけ可愛がっていようと、飢え死にするくらいなら食べるだろうけどさ。


 ……ミレツとニキス相手にそれは無理かな……。


 というか私こそが一番に食べられる立場のような気もする。

 人間だし。

 いやでも草食系多いからそうでもないんだろうか。わからん。そも考えるようなこっちゃないしなあ。



「なので二度目、魔王様が服を仕立て終わって会いに来た時、もし貴女が旅立っていたりとかするようなら始末しておこうかと思いまして」


「そこがわからん」


「だって会いに行ったら既に旅立ってたとか、会う約束したのに来なかったようなものではありませんか。しかしその裏切りを知れば悲しむでしょうから、事故で死んでいて再会は無理だった、という事にしてしまうのが手っ取り早い。知らない方が良い事もあるのです」


「人外は嘘吐かないって聞いたんだけどな……」


「傷つけない為の嘘は吐きますよ。まあその辺の真実は気付いてしまうのでどの道嘘を吐くメリットは無いのですが、拙者は九尾の化け狐。化かす事は得意でしてね」



 成る程。



「…………四天王に放り込まれたとか言いながら、ザラームの事をめっちゃ心配してたっぽいって事はよくわかった。とりあえず私がここに拠点を構えようとしている以上、私に害が無いって事も」


「おや、思ったより鋭い。重要な部分だけを要約出来るとは流石革命家殿。人間と思って侮っていましたが、他者を率いる特性故か自力で考えるおつむがあるようで」


「うーんとっても嫌味」


「拙者、人の味方や人に使役されるタイプの狐ではありませんので。人の敵である方の狐です。畑を荒らしたりする害獣方面の狐に期待しないでいただきたい」


「でもこういうタイプのこの態度は人が好きだからっていうね」



 クダの言葉に初めてココノツがピシリと固まった。

 凝固、という表現がしっくりくる程の固まり具合だ。



「害獣が人に懐いたり好意を抱いたりすると、距離が近くなるんだ。まあ害獣だから人を侮るっていうか、人に怯えなくなるって感じになるんだけど。

 だから舐め腐ったような言動になりがちとはいえ、人間を可愛がりたいっていう気持ちは本物だよ。野生の動物に触るとノミとか寄生虫とかの被害に遭うように、何らかの面倒ごとが発生する事は多いけどねー」


「わあい……」



 喜び辛い好意のタイプか。

 まあストーカーさん達の好意も普通に考えれば喜べない類のものだろうけれど、私からすれば助かるものだったわけだし、そう深く考えなくても良いだろう。多分。



「……まさか人に使役される、それも限りなく人工物に近い呪いに、目の前でそれらを暴露されるとは」



 袖で口元を隠しながら、ココノツは嫌そうに眉を顰めた。

 何だろう、何となくのイメージだけれど公家の人とかが顔を顰めるシーンみたい。

 ココノツの顔の雰囲気だろうか。



「さては既に幾つかの家を潰している歴戦の管狐ですな?」


「流石にそっち程のヤバいのじゃないよ。主様は今までの主と違って優しいし、ご飯食べさせてくれるし、呪えとも奪えとも言わないからね。お陰でクダも式神寄りで人間の役に立とうと思える綺麗なクダだし!」


「成る程、確かに管狐は己の欲の為に使えば家を食い潰す存在。己の欲ではなく、他の誰かを思い、他の誰かを守り助ける為に革命を為すとされる革命家殿との相性は良いでしょう。必要とあらばそれを欲するでしょうが、欲に溺れるようでは革命など為せるはずもありませんから」



 お家買おうと思ってるって話からどういう会話なんだコレは。



「……というか、そうなると他の革命家……っていうか奴隷使いの人は結構アレな感じっぽいけど、そういう人達のメンタルとかはどうなの?」



 シュライエンは大分メンタルがヤバそうだったが、彼だって革命家の才があったのだろう。

 だから奴隷使いに適性があるとされたんだろうし。



「一人で革命をやったところで理想を語るだけのおままごとになってしまう、という話ですよ。率いる誰かが居らず、守りたい相手も居ない。

 味方無く、ただ敵が居るだけの世界では、革命など起こせません。そして革命家は一人では生きていけない性質が多い為、精神が軋むのです」


「あー」



 確かに私も一人で生きていけるか心配だという自覚があるのでめっちゃわかる。

 誰かに抱っことおんぶをしてもらって生きているのが私だ。

 いや、ダメ人間にならない程度には自分で歩くつもりだけど。



「しかしまあ、貴女が裏切り者でなくて幸いでした。美味しそうな人間が食べられないのは残念ですが、可愛らしい人間を殺さずに済んだのですから」


「易々と主様を殺させる気は無いけど、実力差的に考えると抗っても普通に無理だろうしね。っていうか抗った方が他への被害凄くなりそう」


「ええ、そうならなかった事に感謝ですね。天とかに」



 何か時々雑だなこの人。人じゃなくて狐だけど。



「ではまた来るであろう魔王様と仲良くしてやってくださいませ。きっと彼女なりにオシャレをしてくるでしょうから」


「言われなくとも、話すくらいはすると思うよ」


「ええ、ええ、そうしてください」



 ああそうだ、とココノツは横目でこちらを見て笑みを浮かべる。

 牙が覗く、ギィという音が聞こえそうな笑みだ。



「鑑定で見えるステータスですが、見せたくない部分は魔法で隠す事も可能ですよ。見ても気にしないとか、害が無いとか、そういう相手にだけジョブが見えるように設定した方が良いかと。奴隷使いに対しての偏見がある人間相手の場合、そこがオープンになっているのは枷にしかなりませんし」



 ……ふむ?



「とっても初耳で寝耳にウォーターって感じなんだけど、クダ、それ教えてくれたりした?」


「多分教えてないと思う! 人外って基本的にその辺オープンだから隠せるって事自体忘れてた!」


「うーん良い笑顔!」



 可愛かったので頬を指先でつんつんするだけで許そう。

 良い、可愛いはこの世で不変の正義だ。



「ちなみにホンゴ達は」


「俺達も隠す必要ねーし、知っててオープン設定にしてるもんだと」


「……あと、大丈夫……な、相手、には……見える設定……とかもある、から……」


「そうそう、俺らがセーフ判定出されてるから見えるんだとも思ってた。一般的な人間だとあんまり見られたくねえのか身内にも隠すヤツ多いけど、首領(ドン)なら判定緩くても不思議じゃねえし」


「わあい喜びにくい信頼だー」



 とりあえずすぐさまその辺の設定をする必要性があるっていうのはよくわかった。



「ありがとうココノツ、今凄く大事な情報を貰ったよ。いやもう本当ありがとう。大感謝」


「クカカッ」



 カカ、とココノツが楽しそうに笑う。

 口元を隠す笑みではなく、酒の席で笑うような顔で。



「いえいえ、面白い会話を聞けたので構いませんとも。まったく、おかしなところが抜けている革命家殿ですね」



 指を曲げて鋭く尖った爪を内側に向けながら、指の甲で頬を撫ぜられる。

 今朝、ドラーゴがしたのと同じ、こちらを傷つけないようにという触れ方だ。



「拙者も革命家殿が気に入ったので革命家殿が死ぬまでにまた会いに来るやもしれませぬが、その時はどうぞよろしく」



 人外らしいスパン長そうな事を言い、ぼふんという音と共にココノツの体が煙へと変じた。

 驚いたり煙に咽たりする間も無く、煙は霧のように溶けて消える。



「…………何とも狐っぽいパフォーマンスだあ……」


「あー、クダあんまりああいうのやんないもんね」



 クダああいう化かし方じゃないしー、と谷間に挟まる七十五分の一クダは笑った。



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