生に固執した男
あなたはこう思ったことはないだろうか?
長生きしたい
これは死に抗おうとした男性のお話。
彼は実験体だった。
人はどれくらい長く生きていられるのか。
そういう実験だ。
事の始まりはおよそ500年前。
万能細胞が本当の意味での万能となった頃。
彼は丁度、万能細胞の研究所の前で車に轢かれる。
その時そこの研究員が彼を引きずって研究所に連れ込む。
もう心臓の鼓動が聞こえない彼を。
その研究員は彼を研究に組み込む。
決して逃れないように。
心の音が聞こえなくなったはずの彼は目覚める。
研究員が彼に万能細胞を適合させたのだ。
本当の意味での万能細胞の完成。
死した人を蘇らせる。
完全に目覚めるまえに彼を外に放り出す。
そうして彼は研究所の監視下に置かれる。
気づかないうちに。
そうして月日は流れる。
100年程したら、研究所から彼に万能細胞を組み込むために観察者を出す。
また、万能細胞を組み込む。
この繰り返し。
こうして今、彼は齢500程。
まだまだ生き続ける。
しかし、観察者がミスを犯した。
彼はその事により、真実を知った。
彼は絶望しなかった。
むしろ歓迎した。
永遠の時を得たと喜んだ。
しかし、その喜びは長くなかった。
真実を知ったあと、彼は研究所に向かった。
かつての記憶が欲しかったから。
研究員は承諾した。
記憶を得たモルモットはどうなるか知りたかったから。
記憶を得た彼は狂気した。
狂ったのだ。
500年分の記憶が一気に戻る。
本当の真実を知った。
研究所など無かった。
研究員などいない。
観察者も存在しない。
そこには、狂った悪魔が、いた。
ヒトの欲をとことんまで叶えようとする悪魔が、いた。
彼は叫び続ける。
かつて、彼は長生きしたいと強く思い続けていた。
ただ、そう思っていた。
車に撥ねられる事でさらに強く思っただけだった。
そこで聴いた甘い誘いに乗ってしまった。
『なんでも叶えます』という看板が飾ってある店から聴こえてくる誘いに乗った。
そうして、悪魔と契約を結んでしまった。
あと1500年は生き続けないといけない。
そういう実験だ。
彼は狂い続ける。
もはや、今はただ死にたいと思うようになってしまう。
何度死んでも何度も蘇る。
狂った悪魔はモルモットを不思議そうに観察する。
狂う。狂う。狂う。狂う。狂う。狂う。狂う。狂う。狂う。狂う。
死にたい。死にたい。死にたい。死にたい。死にたい。死にたい。死にたい。死にたい。死にたい。死にたい。
それでも、狂った悪魔は万能細胞を組み込み続ける。
完




