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マネージャー  作者: 夕顔
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勉強合宿

 スポーツも盛んだが、我が高校は進学校である。


 夏休みになると希望者講習が始まる。

 さらにその中でも希望する者は、夏休み前半に行われる「勉強合宿」というものに参加する。

 修学旅行が無いのでこれをイベントと捉えウキウキと参加すると痛い目にあう。


 朝七時から夜十一時まで、食事と入浴以外は短い休憩のみでひたすら勉強に勤しむのだ。

 外部から有名塾の講師などを複数呼ぶため、合宿費用も決して安くない。


 唯一の楽しみと言えばこのホテルは古いのだが温泉がついていて露天風呂が使える事だ。


 推薦組や余裕のある者は参加しないのだが、大体七割位の生徒が合宿へ行く。

 クラスのお祭り女子もその位の割合で参加した。




 高校の最寄の駅から一時間弱のところにあるホテルにつくと部屋に荷物を置いて大広間で昼食をとると、休む間もなく備え付けのホールで授業が始まる。

 そこで行われる授業は学校の授業とは大分質が違うもので当然難しい。




 こうして学校唯一の宿泊イベントに参加したいという事でウキウキとしていた者達は初日から頭を抱える事になる。




 実はお祭り女子は皆そこそこ勉強が出来る。

 なのでこのイベントはとても楽しく有意義なもので、部屋に戻ってからも授業のノートを広げて盛り上がる。




 夕食と入浴のために夕方六時から少し長い休憩があるのだが、露天風呂は大盛況だったようだ。

 私達はお祭り組の中でも一位二位を争う秀才の久美から部屋で授業の解説をしてもらう事で大いに盛り上がり、露天風呂まで足を延ばす時間が無かったため乗り遅れてしまった。




 しかしこれは幸いしたようだ。


 その後の授業再開直前に、同じく合宿に参加していた澤村君が唯に


 「露天風呂入ったか?」


 と心配そうに訊ねてきた時に聞いたのだが、男性用の露天風呂から覗いていた人達がいたそうだ。 




 とんでもない話だ。




 次の日には「○○は巨乳」とか「△△は毛深い」などと噂になった女子が数名いて気の毒極まりなかった。

 噂された女子の中には当然ショックを受けて泣いた者もいる。




 不快感を持った。立派な痴漢行為だ。


 好きでもない男子に見られたうえに噂になるなど、誰が望むものか。

 しかも覗いたのは一人二人ではないようだ。


 露天風呂を挟む垣根が低く、岩場に登ると上から覗けるようだ。

 しかもその場所は木の影にもなるために見つかりにくいという話だった。


 男子は交代でかなりの人数が岩場に登って覗いたそうだ。




 唯と知美は無言でその話を聞いていた。

 驚いているようだ。




 ここで既に化学反応がおこっていたのだが、あまりにショックだった私は気付いていない。




 翌日以降の入浴時間、女子は誰も露天風呂を使用しなくなった。


 当たり前である。 




 私達は二日目の入浴時間に屋内温泉に浸かりながら窓の外の露店風呂を眺め、昨日の事について愚痴を言い合った。

 これ程立派な露天風呂があるにも関わらず使用できないなど残念で仕方ない。

 覗いた男子達に皆相当な憤りを感じていた。


 しかしよく見てみると岩場はなだらかで登りやすく垣根も低い。

 古いホテルとはいえこれが男性用の方と同じというならば考えるべきではないか。

 これでは「さあ覗いてください」と言っているような状態だ。




 すると露天風呂へ向かう女子の影が二つ外を歩いているのが見える。




 唯と知美だ。




 屋内の温泉に浸かっている私達は嫌な予感を覚えながら顔を合わせた。

 何故か皆言葉が出ない。




 彼女達はTシャツに短パンを着用している。

 入浴するつもりではなさそうだ。




 露天風呂につくと右往左往しながら何かを探している。

 その後二人は会話を交わしてから一人が垣根の近くにある岩場を登り始めた。




 何をしているんだ何を。




 そして垣根の上から顔を出し、男性用の露天風呂を覗きこんだ。




 私達は無言になってしまった。

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